南海トラフ地震は、静岡県から九州沖にかけて発生することが予測されている、M(マグニチュード)8〜9級の海溝型地震。発生間隔は90~150年程度とされているが、その未曽有の巨大地震をめぐり、ある書籍が注目を浴びている。
それが8月に出版された『南海トラフ地震の真実』(小沢慧一著・東京新聞)。東京新聞で連載された調査報道記事が書籍化されたものだが、その内容が驚くべきものなのだ。
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「政府発表では、今後30年以内に同地震が起こる確率は70~80%。ところがそれは都合よく水増しされた数字で、実はやり方次第では20%~との試算もあった。その低い値が消し去られた防災行政の内幕が告発されているのです」(社会部記者)
同書の基となった連載記事は、20年に『科学ジャーナリスト賞』を受賞。「信憑性は折り紙付き」と話題を呼んでいるが、低い数値が消された裏には、政府機関の地震本部内で開かれた会議で、科学とはかけ離れた〝人間臭い議論〟が展開したからなのだとか。
「会議では当初、両論表記が優勢だったが、『確率が下がると税金を投入して対策を練る必要がなくなる』『何かを動かすときにはまずお金を取らないと動かない』などの声が委員らから上がり、一気に低確率を公表しないほうに舵が切られた。要は、予算獲得を前に低い値が闇に葬られてしまったのです」(同)
確率ではなく意識が大事
もっとも、声を上げた委員らの考えも分からなくもない。国民は数値が高ければ警戒や備えをするものの、低ければ途端に無関心になってしまう可能性が高いからだ。いったい、我々は今後こうした事態をどう乗り切っていけばよいのか。
武蔵野学院大特任教授の島村英紀氏が言う。
「そもそも発生率を数字で表すのが間違いで、私は80%にも20%の表記にも反対です。南海トラフ地震は知りうる限り13回起きている。現在、プレートが歪んでいるのも事実で、この地震発生が近づいているのも間違いない。国民は数値に惑わされず、自分が地震多発国に住んでいる意識をもっと持つべきです」
その意識が、命を守る最善策と言えそうだ。
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