蝶野正洋 (C)週刊実話Web 
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蝶野正洋『黒の履歴書』〜大阪人のオーバーすぎる建前

阪神タイガースが18年ぶりにリーグ優勝を果たした。大阪の繁華街には、大勢のファンが詰めかけ、お祭り騒ぎが繰り広げられたようだ。


最近は、サッカーや国際的なスポーツイベントで、日本が勝つと若者が街に繰り出して大騒ぎするというのが定番になっているけど、その原点はやっぱり阪神ファンにあったんだな、と再認識したよ。


今回は騒動を起こさないように警察による厳戒態勢が敷かれていて、戎橋のあたりは封鎖されていたようだけど、その隙を突いて沿道から道頓堀に飛び込んだファンがいたようだね。ひと昔前だったら、マスコミもその様子をしつこいくらいに報道していたと思うけど、今回はあまり煽らないように控えめにしていた。それでも飛び込むヤツは、飛び込むんだけどね。


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だったらもう、道頓堀に飛び込み可能なエリアを作ればいいんじゃないか。希望者は「自己責任です」と一筆書いて、1回いくらで料金払えば飛び込みOK。いっそ、お金儲けにするくらいが大阪のイメージだよ。


個人的には、大阪人の気質はアメリカ人の感覚に近いと思う。アメリカ人はフレンドリーで、初対面でも「今度ウチに遊びに来い」とか言ってくる。


大阪の人も「ごちそうするから、いつでも遊びに来てな」みたいなことをよく言うんだけど、実際に行くと「本当に来たんや」みたいな顔をされる(笑)。


本音と建前があるというのは分かるけど、その建前がちょっとオーバーなんだよね。

憎めない感じも大阪人ならでは

関東とか東北の人間は、そこまで大風呂敷を広げない。だけど、言ったことは守るというか、筋を通すという意識がある。

それで思い出したけど、俺が昔、猪木さんの付き人をしていた頃、懇意にしていた個人タクシーの運転手さんがいた。大阪で巡業のあるときは、猪木さんを迎えに来て、会場でもホテルでも、どこへでも連れて行ってくれた。


それだけならいいんだけど、その運転手さんがなぜか試合会場の控室にまで我が物顔で入ってきて、どこかの親分さんみたいな貫禄で居座るんだよ。それで若手の選手をつかまえて、「お前ら、いつでも好きなモン食べさせてやるから」とか、声をかける。


俺はそれを素直に受け取って、後輩を何人か連れて会いに行ったら、ちょっと引きつってたね(笑)。それでも安いレストランのランチくらいはごちそうしてくれた。その憎めない感じも大阪人だなと思ったけどね。


2025年に開催予定の大阪万博が、計画通りに進んでいないということが取り沙汰されているけど、これはやっぱり地元の人たちが、この万博をまだ「祭り」と思ってないってことだと思う。これが自分たちのイベントだと思えば、ものすごいパワーを発揮するのが大阪人の気質だよ。


この阪神優勝の勢いを、大阪万博の盛り上がりにも繋げたい。そのためには、改めて関西の顔になるような人物が先頭に立って、引っ張っていく必要があるだろうね。


それは政治家ではないだろうし、岡田監督も見た目が「アレ」だから難しい。みんなが一致団結してお祭り騒ぎできるような、そんなムードを作り上げられる大阪人に出てきてほしいね。
蝶野正洋 1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。