先日、「長野県の木曽谷でアマゴの見た目に異変が広がり、話題になっている」というニュースを目にしました。もちろん、ワタクシもこの件は数年前より耳にしており、朱点が派手でケバいことから〝花魁アマゴ〟などとも呼ばれている、養殖のサトウマス系と思われるこのアマゴを、いつかは釣ってみたいと考えておりました。

さらにニュースを読み進めると「あまりの派手さに〝病気ではないか〟との問い合わせもあり、漁協ではかつての姿に戻そうと対策に乗り出している」とあります。もちろん病気などではなく、これは木曽川漁協が放流用に仕入れる養魚場で、このような魚が作られているということです。

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そしてニュースの最後には、「従来の朱点が小さいアマゴの卵を仕入れるよう漁協から養魚場に提案。次第にかつての姿に戻るのではないかと話している」と締めくくられていました。こりゃ大変。もうすぐ禁漁だし、「また来年にでも…」な〜んてやっていたらケバアマゴがいなくなってしまうかもしれません。

上松に入り小川沿いの道をしばらく走ると、道路沿いによさげな雰囲気の場所を発見。車を降りて川をのぞけば、落ち込みから渕にかけて程よい水深があり、いかにもよさげです。さらに目を凝らすと流れの中に数尾の魚影が見て取れます。「あらやだ、いるじゃないの…」はやる気持ちを抑えつつ、安物の渓流竿を用意。オモリを付けたミャク釣り仕掛けを結び、エサのミミズをハリに付けて落ち込みにソッと仕掛けを沈めます。

すぐにアタリが来るかと思われたものの、意に反して全く反応はありません。ならばと渕上やそれに続くトロ場に、一通り仕掛けを入れてみますが一向にアタリは無し。そこで試しに、見えている魚の近くにミミズを投げ込んでみると、スーッと近づいて来てパクリ。そうか、底ではなくて水面から中層あたりを流せばいいのですね。こんなこともあろうかと玉ウキも持ってきているのですよと、釣ったも同然で玉ウキ仕掛けを流しますが…反応ナシ。これは思った以上に手強いですな。

考えてみれば渓流釣りの盛んな信州木曽谷。手練れの皆さまが入れ替わり入る釣り場です。当然魚もスレる訳ですから、ワタクシのような腕ではなかなかに厳しいものがあるのかもしれません。とはいえ魚影が見えている以上、もうそれがケバアマゴであろうがなかろうが、なんとしても釣り上げたい！　少ない脳みそを振り絞って出した結論は…仕掛けに余計な物を一切付けず糸とハリのみ。完全フカセで勝負です。

軽すぎて飛ばない仕掛けをなんとかフッ飛ばし、流れに乗せること数回目で対岸寄りのよい流れに乗りました。と、コツッとアタリのような感触が。半信半疑でそのまま流していくと、ガツガツッと明確なアタリです。反射的に手首を返すとハリに掛かったようで、鋭い突っ込みが伝わります。丁寧に寄せて、バレるなよと念じながら抜き上げ。無事確保したのは…やった！　ケバアマゴです。

さて、このケバアマゴを煮魚にしてみたところ、出来上がってみると、ケバいオレンジ斑はそのまま残り、なんともエキセントリックな煮付けになりました。とはいえ、お味の方は成魚放流物だからなのか脂乗りも感じられて非常に美味です。

考えてみれば、放流がある河川は〝渓流というフィールドを活かした釣り堀〟と言えなくもないような。ならばこんなのもアリかも。なーんて言うと、ちゃんとした渓流釣り師の方々から怒られてしまいそうなので、今回はこのへんで…。

三橋雅彦（みつはしまさひこ） 子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。