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蝶野正洋『黒の履歴書』~楽しみな還暦を迎えて

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

俺は1963年9月17日生まれなので、今度の誕生日で60歳。還暦になる。あまり大きく捉えてはいなかったけど、実際に近づくにつれて「こういうことか…」と考えることも増えた。

『闘魂三銃士』の盟友、武藤敬司さんは62年12月生まれで、昨年末に現役プロレスラーとして60歳の還暦を迎え、今年の2月に引退した。


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武藤さんはケガを抱えてドクターストップが掛かっていたけどまだまだ元気で、周りからも現役を続けたらどうかと言われていたけど、潔く引退した。俺もなんとなく、その気持ちが分かる。

思った以上に、60歳という一段は大きい。これを超えると、高齢者と呼ばれる世界に属して、新たなスタートを切ることになる。

50代までは人生が地続きというか、一つ一つ年を重ねてきたという意識だったけど、60歳になった途端、後ろの扉が閉まって、もう振り返ることも出来なくなるような感覚なんだよね。

ただ、それが寂しいという感じではなく、これからどうなっていくのかという楽しみな部分もある。

先日、子供のバースデーケーキを買いに行ったんだけど、その店にゴツい体格をした、坊主頭のお兄ちゃんがいたんだよ。

俺は「いいカラダしてるから、プロレスやってみない?」と、声をかけようか、なんて考えていたら、向こうから近づいてきて「あの…すいません。もしかして蝶野さんですか?」と挨拶された。「そうだけど」と答えたら、「自分、首の怪我で引退してるんですけど、以前はプロレスやってました」と、俺が業界の先輩ということで、頭を下げにきてくれたんだよ。

これからの60代が楽しみ

でも俺は「蝶野さんですか?」と、確認するように声をかけられたことが引っかかった。

確かに、そのときの俺はプールに行った後にクルマで店に寄っただけだから、ノーマルな普段着、ボサボサの髪で、サングラスも掛けていない。人から見たら、白髪まじりの普通のオジサンだよ。これは確認するよな、と思ったね(笑)。

こういうことがあると、普段から身だしなみに気をつけようとか思うんだけど、今回はなんか俺の中でこれが自然かなと思ったんだよね。なるべくイメージを壊さないようにという感覚はあるけど、そう見えたなら仕方がない。

今年の2月、俺は武藤さんの引退試合でリングに上がった。

俺たちのストーリーを知ってるファンの人たちは「見応えがあった」「感動した」と言ってくれたけど、『闘魂三銃士』を知らない若いプロレスファンがあの試合の動画を見たら「ジジイ2人が絡んでるだけじゃないか」と思うだけかもしれない。

でも、それでもいいんだよ。

俺は俺だけど、周りからの評価が変わってくるのは仕方がない。仕事をしていても、応援してもらえるのか、「無理するなよ」って思われてしまうのか。確かにカラダはついてこない部分もあるけど、頭の中では、まだまだあれもやりたい、こんなビジネスもしてみたいと常に考えているんだけどね。

正直、50代は迷いがあったけど、60代になればいろいろ吹っ切れそうな気がして、いまはすごく楽しみなんだよ。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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