Ⓒ2022「658km、陽子の旅」製作委員会 
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やくみつる☆シネマ小言主義~『658km、陽子の旅』/7月28日(金)より全国順次公開

監督/熊切和嘉 出演/菊地凛子、竹原ピストル、黒沢あすか、見上愛、浜野謙太、仁村紗和、篠原篤、吉澤健、風吹ジュン、オダギリジョー 配給/カルチュア・パブリッシャーズ


東京でほぼ引きこもり生活をする孤独な中年女性が、菊地凛子扮する主人公です。


長年断絶してきた父親の訃報を受けて、実家の青森に帰省する途中、あろうことかヒッチハイクする羽目に…という着想は確かに面白い。さらに、公募受賞作の脚本を熊切監督が改定した部分。オダギリジョー扮する幻の父親を登場させて、主人公が背負う「心の闇」を暗示するアイデアも秀逸です。


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この展開からすると、星2つでもいいんですが、あえて星1つにした理由。それは、自分がどうしても感情移入できなかったからなんです。


いくら〝コミュ障〟とはいえども、42歳はもういい大人。20年以上1人暮らしをしていたようですが、何がしか社会と接点を持って生活費を稼いでいたはずです。


それにしては、ヒッチハイクをお願いする際の状況説明が下手すぎやしないか。


「同行者とはぐれ、所持金もなく、携帯は折悪く壊れて連絡が取れないんです」と、きちっと頭を下げて事情を説明しさえすれば、ここまで話がややこしくならないはず。最寄りの交番に駆け込む手もあるでしょうに。


だから、主人公に共感する前に「いい大人が、なぜそれができない」と説教したくなってしまったんです。いくらすっぴんの美人でも、こんな風にヌーッと現れたら、普通は敬遠されますよね。

実際にヒッチハイクされて…

ただ、「明日が出棺」と言っていましたので、リミットは約24時間。初冬の寒い時期に青森の実家に着くまで道中、危険と隣合わせの中でさまざまな人と出会い、彼女は大人として会話するすべを取り戻していきます。そういう意味では、わずか1日の北上の旅で大きく成長するロードムービーとも言えます。


ヒッチハイクといえば、過去に二度ばかり「乗せた経験」があります。1回は北海道でヒッチハイク旅をしていたチェコ人の兄ちゃん。2回目は山梨の山の中で足をくじいて困っていた登山客のカップル。山梨での2人にはかなり感謝され、お礼として1000円もらった覚えがあります。そのとき、ガソリンは残っていたもののほとんど持ち合わせがなかったので、そのお金でカツ丼を食べた記憶が(笑)。今でも東京の用賀インターチェンジに入る前の一般道などで、ヒッチハイクしている人を時々見かけます。なのでヒッチハイクという行為は割に身近に感じますし、乗せる側の心境も分かる。けれどやっぱり、瞬間的に人となりを見ますね。