『これで死ぬアウトドアに行く前に知っておきたい危険の事例集』山と溪谷社
『これで死ぬアウトドアに行く前に知っておきたい危険の事例集』山と溪谷社

『これで死ぬアウトドアに行く前に知っておきたい危険の事例集』著者:羽根田治~話題の1冊☆著者インタビュー

『これで死ぬアウトドアに行く前に知っておきたい危険の事例集』山と溪谷社/1430円
羽根田治(はねだ・おさむ) 1961年、さいたま市出身、栃木県那須塩原市在住。フリーライター。山岳遭難や登山技術に関する記事を、山岳雑誌や書籍などで発表する一方、沖縄、自然、人物などをテーマに執筆を続けている。
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――さまざまなアウトドアでの死に至る事例が紹介されています。外に出るのが怖いような気もしますが…。


羽根田 アウトドアでのレジャーにおいては、その楽しさばかりに目が向きがちですが、リスクのことを忘れていると些細なことで本当に呆気なく命を落としてしまいます。クライマーの菊地敏之氏は、著書の中で、「結局のところ、『危険』がもっとも危険なのは、その危険を察知できないことにある。問題なのは、なにが危険なのか分からない、危険をシミュレーションできない、危険なことを危険なことだと考えられない、ということなのだ」と述べています。フィールドに潜む危険をまず知ることが、アウトドアレジャーを楽しむ第一歩だと考えてください。


――山でクマに出会ったら、〝死んだふり〟は正しいのでしょうか?


羽根田 一般的には静かに後ずさりをしながら距離を取り、その場を離れるようにといわれています。背中を見せて逃げ出すのは、衝動的に追いかけてくる可能性があるのでNGです。死んだふりをすると、興味を持って近づいてきたクマに引きずり回される可能性もあるので、やってはいけません。


クマが襲いかかってきた場合は、地面にうつ伏せになって両手を首の後ろで組む防御姿勢を取るか、クマ除けスプレーを噴射するかして対処します。ただ、クマの性格もそれぞれ異なるため、「こうしたほうがいい」という傾向は示せますが、〝正解〟はないと思ったほうがいいでしょう。

溺れている人には陸上から

――今年も溺れている人を助けようとして犠牲になる人が後を絶ちませんね。

羽根田 たとえ泳ぎが得意な人でも、溺れそうになっている子供に水中でしがみつかれると、体の自由が奪われ一緒に溺れてしまいます。溺れている人を助けるには水には入らずに、陸上からクーラーボックスやバケツ、ロープなどを投げてください。ペットボトルは少量の水を入れておくことで、遠くに飛ばせるようになります。


――他に見落としがちな危険があれば教えて下さい。


羽根田 山で天気が崩れると、雨で道が滑りやすくなり転倒、転滑落、視界不良による道迷い、ウエアが濡れることによる低体温症などが起こりやすくなります。また、海が荒れると、波が高くなり潮流も早くなるので、流されたり溺れたりする危険が高くなります。アウトドアでの死亡事故は、悪天候のときに多発しています。天気が悪くなるとリスクは何倍にも膨れ上がることを認識し、なるべく行動は控えるようにしてください。


(聞き手/程原ケン)