(画像)Skreidzeleu/Shutterstock
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歌番組の本番中にデートの打ち合わせ!?~第4回『放送作家の半世(反省)記』

現在、民放テレビ局で全国放送されている歌番組は、テレビ朝日系列の『ミュージックステーション』とTBS系列の『CDTV ライブ!ライブ!』の2番組のみである。


かつてはすべての民放キー局から歌番組が発信され、中でもフジテレビ系列の『夜のヒットスタジオ』とTBS系列の『ザ・ベストテン』はテレビ黄金期を彩り、昭和の芸能界、歌謡界の発展に大きく寄与した番組として歴史に名を残している。


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「昭和43年11月にスタートした『夜ヒット』は、特に新御三家(野口五郎、西城秀樹、郷ひろみ)や花の中三トリオ(森昌子、桜田淳子、山口百恵)以来のアイドルブームを支え、また、普段はテレビに出ないロックバンドやフォーク、ニューミュージックの旗手を引っ張り出して成功を収めました。一方、昭和53年1月にスタートした伝説のランキング番組『ベストテン』は、ランクインした歌手をどこにでも追いかけて行くため、国鉄時代の新幹線ホームから生中継して、発車時刻を遅らせる荒業も繰り出しました」(ベテラン放送作家)


数々の強権発動や無茶振りで視聴者の支持を集めた両番組だったが、奇しくも平成元年に『ベストテン』が、翌年の平成2年に『夜ヒット』が続けて打ち切りとなり、テレビ黄金期に君臨した歌番組が低迷の時代に突入する。


当時、私が所属していた放送作家事務所兼番組制作会社は『夜ヒット』に関わっており、そのことを利用して東京・新宿区河田町にあったフジテレビの第6スタジオに忍び込み、見学したことも何回かあった。


その際、オーケストラバンドをバックに歌う歌手の向こう側、照明が落ちて薄暗い出演者席で、当時の人気アイドルたちが頬を寄せ合い、歌も聞かずに話し込んでいた。私はその姿が気になって気になって、仕方がなかった。

電話番号を渡される場面が…

後年にジャニーズの常連出演者に尋ねると、『夜ヒット』の楽屋はマネジャーの目が光っていたため、本番中にデートの約束をしていたそうだ。それも漏れなく毎回、相手を変えていたと明かしてくれた。

そして『ベストテン』は『ベストテン』で番組打ち切り後、ランクイン歌手が座るソファ席の隙間から大量の紙くずが見つかっている。それは芸能人の電話番号が書かれたメモ書きで、何十枚も押し込まれていたという。


「実のところ『夜ヒット』に関しては、テレビの前の視聴者もアイドル同士の内緒話に気づいており、フジテレビに抗議の電話が殺到したそうです。『ベストテン』では生放送のCM中、いきなり女性アイドルの横に座った男性歌手が、お尻の辺りに手を伸ばし、電話番号のメモを渡す姿がスタジオのスタッフから丸見えでした。番組打ち切り後、セットを解体した大道具さんが大量のメモを見つけたということは、ほとんどの歌手が玉砕し、電話番号をセットの隙間に捨てられていたわけです」(同)


テレビ用語で「溜まり」と呼ばれる出演者席は、今も『Mステ』で採用されている。テレビの前で溜まりの動きに注目するのも、歌番組の楽しみの一つ。ただし、ご自身の〝推し〟が出演しているときは、細かくチェックしないほうがいいかもしれない(笑)。