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蝶野正洋『黒の履歴書』~スポーツ業界のタトゥー&チョレイ問題

蝶野正洋『黒の履歴書』
蝶野正洋『黒の履歴書』(C)週刊実話Web

新型コロナで何もかもが滞ってしまっているけど、スポーツ界は止まらずに頑張っているな。

ただ、ルールに関してはいろんな論争が起きている。例えば、昨年の大みそかに行われたボクシングの井岡一翔選手と田中恒成選手のタイトルマッチにおいて、試合中に井岡選手の左腕や腰のあたりからタトゥーが見えていたことが物議を醸している。

JBCのルールでは「入れ墨など観客に不快の念を与える風体の者は試合に出場することができない」と決められている。井岡選手はJBCの管轄で試合をする場合、タトゥーを隠さなければいけなかった。

ただ、タトゥーそのものの是非は別問題。これは国ごとの文化や意識によるからな。このテーマになると、よく「欧米では当たり前のファッション」という話が出てくるけど、俺が若手時代にヨーロッパを遠征していた頃は、現地でもタトゥーは一般の人たちには受け入れられてない雰囲気だったし、警戒されていた。

やっぱり刑務所に入った犯罪者とか、マフィアが入れるものというイメージがあって、公的な場では隠すことがマナーだった。

言い方は悪いかもしれないけど、ある種の職業や出自を見分けるためのサインだったんだよ。でも、社会的に差別はよくないということになって、徐々に受け入れられていったんだと思う。当たり前のようにファッション化したわけじゃなくて、差別的に考えていた人たちが、ちょっとずつ意識を変えていったから現在の状況がある。

だけど、個人的には日本もそうなればいいとは思わないんだよ。日本は日本で独自のルールがあるっていうのも、島国っぽくて面白いんじゃないか?

最強のボクサーだけどタトゥーが入ってるから日本でタイトル戦ができない、とか。それがドラマになるし、ややこしくて俺は好きだね。でも、これで井岡選手が日本で試合ができなくなって、海外でしかやらないってなったら、日本にカネが落ちなくなるから、JBCも慌ててルールを変更するかもしれない。

俺も「ガッデム!」を禁止されたら調子が狂うよ

スポーツのルールでいうと、卓球の張本智和選手が、全日本選手権で「チョレイ!」という掛け声を出すことを注意されて、調子が出なくて負けてしまうということもあった。注意したのはコロナの感染防止対策という理由もあるけど、以前から賛否両論はあったみたいだ。まぁ、俺のキャラクターとは真逆の意見になるけど、試合中に大声を出すのはよくないな(笑)。

そもそも声で威嚇するっていうのはケンカの極意。街の不良同士のケンカなんてのは、最初に怒鳴りつけた時点で8割くらい勝負が決まる。いかにカマして、ビビらせるか。最初はおとなしく喋ってたのが、いきなりボリュームをガーンと上げてすごむのは、脅しのテクニックなんだよ。

プロレスでも声は重要で、俺も「ガッデム!」を禁止されたら調子が狂う。声を出せば気合いが入るし、自然と体も動くからな。

ただ、アマチュアスポーツの世界ではマナー違反。なんとか声を出さないで気持ちを上げていく方法を模索したほうがいい。

スポーツというのはルールありき。そこを無視してしまうと、競う意味がなくなってしまうからね。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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