『元ヤクザ、司法書士への道』集英社インターナショナル
『元ヤクザ、司法書士への道』集英社インターナショナル

『元ヤクザ、司法書士への道』著者:甲村柳市~話題の1冊☆著者インタビュー

『元ヤクザ、司法書士への道』集英社インターナショナル/1760円
甲村柳市(こうむら・りゅういち) 1972年、岡山県生まれ。高校中退。スナックで知り合ったヤクザから誘われ、山口組系暴力団『義竜会』の竹垣悟会長の盃を受ける。2010年、広島刑務所に収監中、司法書士となることを決意。2019年、司法書士試験を突破。現在、岡山市内で『司法書士法人・行政書士法人 東亜国際合同法務事務所』を開所。
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――司法書士を目指したきっかけはなんだったのですか?


甲村 自分が所属していた義竜会(山口組系)が解散して、尊敬する竹垣悟会長が引退したのがひとつの要因ですかね。すでに30代になっていたので、40歳を起点に新しい道を進もうと考えました。その中で自分ができること、やりたいことを考えている中で「司法書士」という道が自然と見えてきました。司法書士の仕事はヤクザ時代、直接見て知っていたし、法律の知識もそれなりについてきていましたから。


――現役時代は右翼団体も率いていたとか。当時は、どんなシノギをしていたのですか?


甲村 右翼団体の看板があったほうが何かとやりやすいという判断で、本当の右翼活動、政治活動はやっていません。シノギはいろんなことをしましたが、基本は闇金ですね。あとはキャバクラの経営や輸入品を仕入れてさばくということもやりました。闇金で面白かったのは、債権を持っていた会社がつぶれたときに差し押さえに行ったのですが、そこにあったのは金色のメッキをした餅型のキーホルダーというくだらないものでした。

“独居房”は最高の勉強部屋です

それを「開運餅」と称して6000円で売って、「この開運餅の御利益を試すために3万円を5日間、無利子、無担保、無保証で提供しますよ」とやったら大成功しました。要するに、利子6000円を先払いに3万円を貸すわけですが、警察は「こんな商売は前例がない」と頭を抱え、無罪放免となったことですね。痛快でした。

――刑務所内では、どんな風に勉強をしていたのですか?


甲村 当時の雑居房は6~8人が1部屋なので、そこでは勉強できる雰囲気ではありません。そこで一計を案じて、わざと工場の看守に突っかかって独居房に入り、そこで民法を1条から丸暗記しました。独居房の中で便箋に小さな字で民法を「写経」して、それを看守ののぞき窓の下に米粒で貼って覚えました。自分でも驚くほど集中して暗記できました。独居房は最高の勉強部屋です。


――現在、岡山市内で開業されています。実際に司法書士の仕事を始めてみていかがですか?


甲村 業務の多くは相続関係ですね。自分は地元の岡山に事務所を開きましたから、昔の友人(カタギ)などの紹介で仕事が入ってきます。そういう意味では人脈、信用は大事だなと思っています。もちろん、現在は自分と同じような境遇で、ヤクザから足を洗った人間の相談も受けています。 (聞き手/程原ケン)