岸田文雄 (C)週刊実話Web 
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岸田首相が秋の人事で奇策を繰り出す!? 茂木幹事長続投で支持率“低迷”脱却か

内閣支持率が下げ止まらない岸田文雄首相だが、長期政権へのウルトラCとして2025年の衆参同日選挙が浮上してきた。そのためには来年秋の自民党総選挙で勝てる態勢を整える必要がある。鍵となるのは、9月中旬に見込まれる内閣改造と党役員人事だ!


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この1カ月、永田町界隈で多くの臆測を呼んだのは、何と言っても岸田文雄首相と自民党の石破茂元幹事長との会談だった。8月4日夜、東京・赤坂の日本料理店『赤坂浅田』で、首相に近い自民党の遠藤利明総務会長が同席しての会談は3時間近くにも及んだ。


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会談終了後、待ち構えていた報道陣に石破氏は「何の話もありません。久々に(首相と会って)楽しかったね」とだけ言って車に乗り込んだが、満面の笑みがその心中を物語っていた。


注目を集めたのは、秋に人事を控えているからに他ならない。岸田政権は6月以降、一時は50%を超えた内閣支持率が急落。首相の長男や親族らが参加した首相公邸での忘年会写真の流出に端を発し、収束が見えないマイナンバー問題、公私混同と批判を集めた松川るい参院議員らの海外視察問題などが相次ぎ、支持率が下げ止まらない。


そこで政権浮揚を図るために、石破氏を閣僚などで処遇するのではないかとの見方が駆け巡ったのだ。TBSやフジテレビ、共同通信など直近の世論調査で、「ポスト岸田」として石破氏が軒並みトップになったことも、首相が石破氏を政権に取り込むとの臆測に拍車を掛けた。


2021年9月の自民党総裁選で石破氏は出馬を断念したものの、小泉進次郎元環境相と共に河野太郎デジタル相を支持。「小石河連合」としてアピールし、河野氏の善戦を支えた立役者の一人となった。


総裁選後、石破派は解体となり、非主流派となった石破氏は首相の防衛増税方針や少子化対策に伴う財源問題などについて、「ご意見番」的に舌鋒鋭く批判を続けてきた。そうした石破氏に首相が接近したのだ。


かつての石破派メンバーで、今回の会談の背景を知る中堅議員が明かす。


「会合は『首相と会食したい』という石破氏の話を聞いて、遠藤さんがセットした。人事について、首相から明確な話はなかったが、『力を貸してほしい』と言われた。普通に受け取れば『要職に起用したいので、よろしく』ということだ。石破氏からは『政策は継続性が大事だ』という趣旨の話をした。実はここにポイントがある」


継続性発言には「政権が代わっても」との前提が込められており、それゆえにこの発言は石破氏が「ポスト岸田」への意欲を示したことを意味する。つまり首相に対して、「ポスト岸田」としての処遇と足場づくりを求めたと受け止められるのだ。


「石破氏なら、さすがに財務相とはいかなくても、政権の主要政策を受け持つ経済安全保障担当相や少子化対策担当相ならあり得る。元石破派の齋藤健法相が閣内にいるので、同じく元石破派の平将明衆院議員あたりを木原誠二官房副長官の後任に据えるか、初入閣させれば120点だ」

岸田、麻生、茂木の三派は維持

中堅議員は石破氏に代わって皮算用する。岸田首相が退いて石破政権になれば、「齋藤・平」が正副官房長官として中枢ラインになり得るわけだ。


実際のところ首相は、今後の政権運営についてどのように考えているのか。7月下旬から8月初旬にかけて、首相は遠藤氏、加藤勝信厚生労働相、松野博一官房長官と国会近くの日本料理店で個別に会食した。


遠藤氏は、岸田派(宏池会)と同じ源流を持つ谷垣派出身で、首相と気脈を通じる。安倍派に隠然とした影響力を持つ森喜朗元首相にも近い。加藤氏は茂木派(平成研究会)幹部として、茂木敏充幹事長をけん制する位置にある。松野氏は安倍派内で森氏の意中に連なる「5人衆」の一人だ。


一連の会合で何が確認されたのか。首相に近い政府関係者によると大きく3点あり、「年内の衆院解散は見送る」「来年秋の自民党総裁選で再選を期す」「今秋の人事で勝つ態勢をつくる」ことだという。


そのためには、今の岸田、麻生、茂木の3派による主流派体制を維持しつつ、安倍派にも支えてもらうため、引き続き森氏を尊重することが肝要になる。こうして政権基盤を固めた上で、総裁選でライバルになり得る茂木、河野両氏の動きを封じ込める――。


永田町の住人の多くがこう考えるのと同じように、首相は先の会合で、遠藤氏や加藤氏、松野氏らと意見を交わしたようだ。


先の政府関係者によると、二つの人事案が見えてくるという。一つは政権の安定性を重視し、茂木氏に幹事長を続投させるパターンだ。茂木氏が総裁選出馬を目指すなら幹事長を辞めるのが定石だが、現時点では不利なことを自覚しており、幹事長の続投を希望している事情もある。


ただ首相にしてみれば、今と代わり映えしないため「刷新感」に乏しい。そこで考えられるのが、茂木氏を交代させる二つ目のパターンだ。幹事長には森山裕選挙対策委員長か、茂木派の小渕優子組織運動本部長が取り沙汰される。森山氏は二階俊博元幹事長に近く、非主流派の二階氏を取り込むことができれば政権の安定につながる。


小渕氏の要職起用は森氏が強く求めているものだ。小渕氏の後見役で、官房長官や自民党の参院議員会長などを務めた故・青木幹雄氏(6月11日死去)の「遺言」として、首相側に伝えてもいるという。


ただ、先の会合への出席者の一人によると、支持率が低迷する中、首相は政権の安定性を重視して茂木氏の続投に傾斜。この場合、小渕氏は政調会長代行など「党四役」に準ずるポストに起用する。河野氏については、引き続きマイナンバー問題に当たらせるとして、続投が有力だ。そして、石破氏を閣議で序列2位の副総理格で処遇する。


透けて見えるのは、小石河連合に影響力を持つ菅義偉前首相の孤立化だ。


「この態勢が組めれば、首相の政権基盤はそう簡単に揺るがない。内閣支持率が30%台をキープできれば総裁選は勝てる」(前出・政府関係者)

「衆参同日選」は圧勝の歴史

だが、態勢が整ったとしても、支持率の下落を食い止められるかは別問題だ。来年になっても一向に回復しなければ、衆院解散・総選挙に踏み切るチャンスはつかめない。総裁選で何とか再選できても、状況が改善しなければ政権運営が困難になるのは間違いない。


そこで浮上したのが、ウルトラCの「衆参同日選」だ。25年夏は参院選が予定されている一方、衆院は4年の任期満了が同年10月のため、同日選を仕掛けるにはもってこいのタイミングとなる。


自民党関係者によると、首相が遠藤氏と会食した際、年内の解散は見送った上で、どの時期なら可能かという話になり、総裁選前の解散、総裁選直後の解散、そして同日選が選択肢として出たという。


「総裁選前の解散は、支持率が高くないとリスクが大きい。直後の解散は、負けた場合のダメージが大きい。しかし、同日選なら過去2回とも自民党が圧勝したように、たとえ支持率が振るわなくても衆参の相乗効果で勝つ可能性が高くなる」(自民党関係者)


遠藤氏が熱心に同日選を勧めていることもあって、首相はかなり真面目に考え始めているという。


仮に同日選を目指した態勢づくりを考えるなら、茂木氏が続投しても構わない。茂木氏の幹事長任期は24年9月までの3年で、再任はないため、選挙を仕切るのは新しい幹事長になる。総裁選後に、それこそ小渕氏を幹事長にすれば、選挙向けにアピールできる。


問題は内閣支持率が低迷する中、総裁選を乗り越えるだけの数字を維持できるかどうかだが、首相は周囲に「支持率は一時的なものなので、気にする必要はない」と強気の姿勢を見せているという。


その自信の根拠について、宏池会のベテラン議員が話す。


「好調な経済と順調な外交だ。岸田政権は一つ一つ実績を積み上げてきた。来年はその努力が実を結ぶ」


確かに、今年4〜6月期の名目経済成長率は前期比年率12%という高い数字で、国内総生産(GDP)は名目で591兆円と過去最高を記録した。年度後半もこのペースを維持できれば、消費税と法人税を中心に税収が4〜5兆円は上振れするという。


そうすれば防衛増税や少子化対策をめぐる負担増の議論は、さらに先送りできると目算する。来春も大幅賃上げが期待できるので、実質賃金はプラスになるとの期待もある。


それでは外交はどうなのか。実は目玉にしたいものがあるという。韓国と連携した新たな基本文書の取りまとめだ。


日韓間には、1998年に取り交わした日韓共同宣言があり、日韓基本条約と共に両国関係の基礎となっている。これをバージョンアップさせ、世界規模での日韓パートナーシップを打ち出そうというわけだ。


「岸田首相と韓国の尹錫悦大統領は波長が合う。来春には『新共同宣言』を打ち出せるのではないか」(前出・ベテラン議員)


今年の内閣支持率の上昇局面を思い返すと、好調な経済を背景にした大幅賃上げの実現と、尹大統領の訪日による日韓関係の改善が寄与したのは確かだ。


「経済と外交で支持率の底割れは防げる。そこまで見越して今秋の人事はやる」


先のベテラン議員は首相の胸中を代弁する。

浮世離れしている岸田政権

果たして、岸田首相の思惑通りに人事が執り行われ、政局や内外の情勢も読みが外れることなく動いていくのだろうか。


経済が好調と言っても、結局は米国頼みだ。米国は利上げの終了局面で、不況に陥らない「軟着陸」に成功しつつあるとされるが、インフレは完全に収まらず、不確定要素は消えない。


日韓関係も不安材料に事欠かない。元慰安婦や原発処理水問題など懸案は解消しておらず、両国内には相手国へのマイナス感情がくすぶる。韓国は来春に総選挙を控えており、反日ムードが強まることも予想される。


そして、何よりも大きな不安材料は、岸田政権への信頼が低下していることだ。6月以降のダメージは思いのほか大きく、報道各社の世論調査では、不支持率が支持率を上回る状況が続いている。


菅氏に近い中堅議員は突き放す。


「首相は底割れしている。増税をはじめとする負担増路線が見え見えだ。生活は苦しくなるばかりなのに、政権はどこか浮世離れしていて、庶民感情を逆なでしている。岸田政権のままでは、もう支持は戻らない」


来たる衆院選に向けて、野党の動きも進む。立憲民主党と日本維新の会は全国で候補者擁立作業を急ぎ、態勢も6月に比べて整ってきた。


立憲幹部の一人は「維新、共産と選挙協力はできないが、棲み分けはできる。両党とも地方の2区、3区には立てない。そこでは事実上の選挙協力ができる。大都市圏なら、自民は怖くない」と自信を見せる。


岸田首相は再び政権を浮揚させ、長期政権に近づくことができるのか。それとも国民の支持離れを止められず、退陣に追い込まれていくのか。秋の人事が、まさに行方を占うことになる。