(画像)ID1974/Shutterstock
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プリゴジン氏は“公開処刑”された!? 立ち上がるワグネル…プーチンを襲う報復の連鎖

8月23日、ロシアの民間軍事会社『ワグネル』の創設者、プリゴジン氏の乗った自家用ジェット機がモスクワ郊外で墜落し、乗員乗客10人が死亡した。欧米の情報当局者によれば、これまで数多くの政敵を闇に葬ってきたロシアのプーチン大統領が、プリゴジン氏を「公開処刑」した可能性が高いという。


プーチン氏は翌24日夜、墜落事故に初めて言及した際、プリゴジン氏について「彼は才能あるビジネスマンだったが、重大な過ちを犯した。家族に哀悼の意を表したい」と述べた。墜落を「悲劇」と表現するなどまるで他人事だが、プーチン氏の関与については限りなく「クロ」に近い。


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プリゴジン氏は6月下旬に反乱を宣言。ワグネルの部隊がロシア南部の軍司令部を占拠し、モスクワに向けて進軍した後に、反乱は中止された。それから2カ月後、映画『ゴッドファーザー』のマフィアのように、プーチン氏が復讐劇を成し遂げたとみるのが自然だ。


米当局は、モスクワからプリゴジン氏の故郷であるサンクトペテルブルクに向かう機内に、爆発物が仕掛けられていたと分析している。プリゴジン氏だけでなく、ロシア軍出身でワグネル共同創設者のウトキン氏らも同乗しており、ワグネル幹部を一掃するには絶好のタイミングだった。


プーチン氏は当初、プリゴジン氏に「無罪放免」を約束して自由に行動させていたが、不穏な前兆もあった。事故の前日、ロシア空軍のスロビキン総司令官が解任されていたのだ。同氏はプリゴジン氏と親密で、6月の反乱について事前に計画を把握していながら、これを見過ごしていた疑いを持たれていた。


一時は「ポスト・プーチン」として、政治的にも確固たる地位を確立しつつあったプリゴジン氏だが、どこで失敗したのか。


「そもそも6月に反乱を起こした際、クレムリン(大統領府)まで200キロ以内に迫っておきながら、途中で撤退したことが致命的だった。一気にモスクワに乗り込んで、宿敵のショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長の首を取るか少なくとも退任させておけば、プーチン氏も手を出せなかったはずだ。身の安全を保障すると懐柔され、それにあっさり従ったことで、プリゴジン氏が最終的に暗殺される運命は決まったと言える」(軍事ジャーナリスト)

やはり裏切り者には…

2000年5月の大統領就任以来、裏切り者は許さないのがプーチン氏の鉄の掟で、国内外の政敵が相次いで粛清対象になってきた。

06年にはロシア連邦保安局(FSB)の元スパイでプーチン政権を批判していたリトビネンコ氏が、放射性物質の『ポロニウム』によって亡命先の英ロンドンで毒殺された。


同年には反政権派のジャーナリスト、ポリトコフスカヤ氏がモスクワの自宅アパートで射殺され、15年にはプーチン政権によるクリミア併合を批判していたネムツォフ氏が、モスクワ中心部で射殺された。同氏はエリツィン政権で第1副首相を務め、その後は野党指導者として活動していた。


20年には同じく野党指導者のナワリヌイ氏が、モスクワに向かう旅客機内で、猛毒の神経剤により暗殺未遂の被害を受けている。こう振り返ってみると、プリゴジン氏だけが許されるというのは、むしろ不自然でさえある。


「ワグネルには5万人ともいわれる兵士と最新鋭の武器がある。そして最も大きいのがアフリカ利権で、ワグネルは中央アフリカやマリ、スーダンなど各国に進出しており、軍事支援の見返りに金やダイヤモンドなどの採掘権を押さえている。全容は不明だが、中央アフリカだけで年間10億ドル(約1400億円)の利益を上げているとみられ、これをプーチン政権が引き継ぎ、ウクライナでの戦費に充てようという魂胆だ」(安全保障アナリスト)


鉄の掟は今回も健在だったが、これでプーチン政権が盤石になったわけではない。むしろその逆で、新たな混乱の幕開けという見方が圧倒的だ。


ワグネルに近いメディアはSNSを通じて、プリゴジン氏の墜落死は「ロシアの裏切り者」のせいだと非難した。これがプーチン氏を指しているのは明らかで、怒りを隠せないことがうかがえる。


ロシアのメディアによれば、ワグネルにはあらかじめ有事の「行動計画」が存在しており、プリゴジン氏ら幹部が死亡した場合には、自動的に報復措置を発動するという。


「反プーチン派はロシア軍だけでなく、プーチン政権の中枢にも数多く存在すると指摘されている。彼らはプリゴジン氏やウトキン氏、スロビキン氏への報復を見て、身の危険を感じているはずだ。このまま座して死を待つより、打倒プーチンに活路を見いだそうとする可能性もある」(同)


ウクライナ側で戦うロシアの反体制派武装集団『ロシア義勇軍団』のカプースチン司令官は、SNSにビデオメッセージを投稿し、ワグネルの残党らに「ロシアの番犬として働くか、あるいは報復するのかを真剣に選ぶときが来た。処刑者に復讐するにはウクライナ側に寝返る必要がある」と呼びかけた。


報復の連鎖が始まるのか。