(画像)StreetVJ / Shutterstock.com
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トップアイドルが集う六本木の「隠れ家」の全貌~第3回『放送作家の半世(反省)記』

1990年代前半のバブル崩壊により日本経済は大きな打撃を受けたが、それでも都心で最も再開発が進んだ地域は芸能人、テレビマンが大好きな六本木ではないだろうか?


六本木1丁目のアークヒルズ、泉ガーデンから4丁目に隣接した元防衛庁跡地の東京ミッドタウン、元テレビ朝日跡地を中心とした6丁目の六本木ヒルズ、さらには現在も3丁目と道を隔てた麻布台1丁目では大規模プロジェクトが完成間近で、7丁目でも同様の工事が進行していると聞く。


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そんな中、80年代から六本木を知る私にとっては、芋洗坂からロアビルにかけての5丁目一帯の再開発が感慨深い。この辺りには古いビルが多く、かつては芸能人がお忍びで訪れるラウンジやバーが点在していたからだ。


中でもロアビルの裏手、長らく駐車場として活用されていた敷地の奥にあったダイニングバー『F』は、ジャニーズのトップアイドルKの根城で、午前0時以降は彼の派閥に属する芸能人やギョーカイ人以外、入り口でマダムに入店を拒否されるという鉄壁のガードを誇っていた。


私はKの派閥というわけでもなかったが、彼がパーソナリティーを務める番組を担当していた縁で、深夜の収録後、Fに誘われるようになった。きっかけはKが、当時まだ大手酒類メーカーが輸入していなかったバーボンウイスキーをお気に入りで、たまたま私も行きつけのバーで同じバーボンを飲んでいたため、話が盛り上がったことだった。

さまざまな修羅場が繰り広げられていた…

Kは気軽に「今からバーボンを飲みに行くぞ」と私を誘ってくれたが、付いて行った先に広がっていた光景は今も忘れない。外観はまさにバブルの遺産のごとく4~5メートルの高さがあるガラス張りで、天井には豪華なシャンデリア。壁際に上下2段のボックス席が並び、それぞれにテレビでおなじみの人気アイドルやタレント、俳優がくつろいでいる。下手な改編期の特番よりも派手な顔触れがそろっているではないか。

そんなメンバーがKの入店に気づき、その場で立ち上がってあいさつをする姿は、まさに壮観の一言。すると次の瞬間、スケバン系ドラマで顔を売った若手女優のSが、われわれの元に駆け寄って来た。Kは人気歌姫と半同棲をしていたが、ほとんどアル中の彼女に代わり「Kに尽くしていた」のがSだったのだ。


後に2人の関係を知った歌姫がFに乗り込んで大立ち回りを演じたり、血気盛んな2世俳優がSに横恋慕してKに喧嘩を売ったり、なかなか刺激的な出来事も多かった。しかし、K直属の後輩はシブがき隊の布川敏和しか姿を見かけたことがなく、少年隊以降の後輩はK派閥に属していなかったように思う。当時はこのFのように人気タレントを優遇し、逆に増長させてしまう店も少なくなかった。


Kは酔いが回ると、いつも特定の後輩やライバルの名前を口にして悪態をついていたが、半面、その姿からは、周りを自分の派閥で固めないと安心して悪口を言えない気の小ささ、そうでもしないと自分を鼓舞させられないトップアイドルの孤独な素顔が垣間見えた。


とはいえ、気づくと足しげくFに通い詰め、Kの話し相手になる自分がいたのだが…(苦笑)。