(画像)hxdbzxy/ Shutterstock
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“中国版リーマンショック”が習近平を直撃!? 不動産バブルが崩壊で東アジア情勢が緊迫

中国発の世界金融危機が起こるのか。住宅バブルの崩壊をきっかけに、大手不動産会社の破産申請やデフォルト(債務不履行)危機、金融商品の支払い停止といった問題が相次いでいる。今や世界第2位の経済規模となった中国だが、「日本のバブル崩壊とアメリカのリーマンショックを合わせたような状況」が生じており、これを震源とする経済危機が世界に波及すれば、習近平政権も決して安泰ではいられない。


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中国不動産大手の『恒大集団』は8月17日、米ニューヨークの裁判所に外国企業の破産手続きを調整する連邦破産法15条の適用を申請した。昨年末時点の負債総額は約48兆円で、債務超過となっていた。


恒大集団は1996年の創業で、中国の不動産バブルに乗って高層マンション開発で急成長した。サッカー好きの人なら、同社が所有していたプロサッカークラブ『広州恒大』(現在は広州FC)を覚えているかもしれない。かつてはそれほど羽振りが良かったが、2021年ごろから資金繰りが困難となっていた。


また、中国不動産最大手の『碧桂園(カントリー・ガーデン)』も30兆円近い巨額の借金を抱えたまま、利払い不能に陥っている。マンション開発ブームに乗って急成長してきた同社だが、今年1〜6月期に1兆円を超す最終赤字になるとの業績予想を発表。8月14日に32億円相当のドル建て債券の利息を払えず、社債取引が停止された。

大手不動産会社が総倒れ

さらに、同じく不動産大手の『遠洋集団』も、今年1〜6月期の純損益が約4000億円の最終赤字になる見通しで、利払いが滞った米ドル建て債券の取引が停止された。

「民営大企業のシェアが拡大することを快く思っていない習政権は、不動産業者を見捨て続ける可能性がある。大型破綻が相次げば世界的な金融不安に発展する恐れもあるだけに、市場関係者は戦々恐々としています」(大手紙経済デスク)


中国国家統計局が発表した7月の新築住宅価格指数は、主要70都市のうち49都市で下落しており、不動産不況が深刻化している。習政権が実施した不動産への融資規制で資金の流れが急速に縮小したため、建設途中で放置されゴーストタウンのようになったマンション群が、中国全土で目立つようになった。


不動産バブルの崩壊といえば日本の90年代初頭を思い出すが、実は中国で表面化した今回の不動産不況も構図はよく似ている。


「当時の日本では住宅価格が高騰し、庶民から家を買えないという不満の声が出たことで、旧大蔵省が不動産向け融資の伸び率を金融機関の総貸し出しの伸び率以下に抑えるよう指導した。これをきっかけにバブルが崩壊し、企業や個人が借金の返済を急いで投資や消費を抑えたことで、長期不況を招くことになった。中国もマンションなど不動産バブルを抑え込む狙いで、過剰債務を抱えた開発業者向けの融資を絞り込む規制を実施したところ、落ち込みが想定以上となり、中国経済全体に大打撃を与えている」(金融アナリスト)


日本は物価や給料が下がる「デフレ」の状態に長年苦しんできたが、中国も同様で7月の消費者物価指数は前年同月比で2年5カ月ぶりに0.3%下落した。ノーベル経済学賞を受賞したことで知られるポール・クルーグマン氏は、中国経済について「日本よりももっと悪くなる」と明言している。

中国株や人民元の暴落危機

こうした不動産業界に向けて投資や融資をしてきたのが、「影の銀行」と呼ばれるノンバンクだ。国有銀行は主に国営企業向けに融資をしているが、新興の民営企業が多い不動産業界には、主にノンバンクが資金を提供してきた。

ノンバンクは高利回りを約束して、富裕層や機関投資家などから資金を調達している。不動産価格が上昇していれば、不動産会社はノンバンクに融資を返済し、ノンバンクも投資家に利払いができる。だが、不動産価格が下落に転じると、融資の返済や利払いが一気に苦しくなる。


実際に資金繰り難に陥っているのが、中国のノンバンク大手『中植企業集団』だ。約20兆円相当の資産を管理しているとみられる同社は、ほぼすべての金融商品で支払いを停止しているという。


この事態は08年に起きたリーマンショックとよく似ている。アメリカで低所得者向け住宅ローンが破綻し、関連の金融商品を大量に抱えていた投資銀行『リーマン・ブラザーズ』が倒産。それを契機として世界的な金融危機に陥った。


「中国の場合、実態が見えにくい面もあるが、資金繰りが厳しい不動産会社やノンバンクは多数存在するとみられる。大型破綻が続いて『中国版リーマンショック』のようになれば、中国株や人民元の暴落は避けられない。中国当局は何としても経済危機を封じ込めようとするだろうが、もし事態が深刻化すれば、異例の3期目に入った習政権の基盤も危うくなる」(前出・大手紙経済デスク)


リーマンショックでは日本経済も大きな打撃を受けた。中国発の経済危機も、発生したら他人事では済まされない。