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コント赤信号のリーダー・渡辺正行と焼き鳥屋へ~島田洋七『お笑い“がばい”交遊録』

島田洋七
島田洋七 (C)週刊実話Web

3人組のコントグループ『コント赤信号』は、『花王名人劇場』に出演し、漫才ブームの最後の方から徐々に売れ始めましたね。俺とは年の差があるから、全員ではないですけど、リーダーの渡辺正行とは何度か飲みに行きましたよ。


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6~7年前、東京・恵比寿を通りかかると、ナベが立っているのを見かけたんです。後ろから「ナベ」、「渡辺」と何度呼びかけても一向に振り向かない。前に回って「おい、俺や」、「びっくりした。洋七師匠」、「何度も声を掛けたんよ」、「ガラガラのドスが利いた声なので裏社会の方かと思って知らん顔していました。すみません」、「俺の声だってわかるやろ」。

そこから一緒に飲みに行くことになったんです。当時、恵比寿で一番流行っていた焼き鳥屋へ入ると、「師匠、顔がバレているのに、こんなにお客さんがたくさんのお店によく入りますね」、「最初だけやって、気になるのは」。芸能人は顔がわれているから個室を好む人が多いんです。でも、そうなると芸能界以外の雰囲気がわからないから、俺はごく普通に生活していますよ。特に講演会中心の活動に切り替えてからは、そういう場所で見聞きしたことがネタにもなりますしね。

ナベと飲み食いしていると、「写真1枚いいですか?」とお客さんに頼まれ、応じました。すると、お礼にと、焼き鳥を5本持って来てくれたんです。「ニコッと笑って、カチャッと撮って焼き鳥5本やで」。ナベにそう向けると隣のお客さんが笑っていましたね。

同じことを店内に響き渡るような大きな声で話し、「他に写真撮りたい人?」と呼びかけたら、他のお客さんも大爆笑していました。そして、カップルが「焼き鳥5本で写真お願いします」と近づいて来た。「冗談やって。俺らも頼んでいるし、これで十分よ」。でも、写真は撮りましたよ。

羨ましがられる芸人の上下関係

芸能人は「ファンです。握手してください」と皆さんに声を掛けられることがしばしばある。でも、「握手してください」と来る人が本当に俺のファンなら『佐賀のがばいばあちゃん』も1000万部ではなく、1億部くらい売れているはずなのにね(笑)。

ナベからはその本についても言われましたね。「芸能人は出版社から依頼があって本を出すのに、洋七師匠は自費出版ですよね。あまり聞かないですよ」と不思議がるから「なんでも自分でやる」と話しましたよ。

会社員という隣のお客さんは、俺とナベの関係を見ていて「羨ましい」と言うんです。最近は若い子を飲みに誘っても断られるそうで、しかも、芸人は上下関係が厳しいから、俺が食べたり、飲んだりしないとナベも手を付けないんです。それにすべて敬語で話すからでしょうね。

ナベは「今まで声を掛けられるから、人の多い店にも行かなかったけど、これからは行くようにします」、「そうやろ。明日使えなくてもここで見聞きしたことがいつかネタになるやんか。だからお笑い芸人は普通に生活したほうが良いのよ」。

帰り際、ナベが「それにしても洋七師匠やたけしさんの話をいろいろと噂に聞きますけど、不良すぎますよ。遊びすぎですよ(笑)」、「ほっとけ(笑)」。それで店を後にしました。

島田洋七
1950年広島県生まれ。漫才コンビ『B&B』として80年代の漫才ブームの先駆者となる。著書『佐賀のがばいばあちゃん』は国内販売でシリーズ1000万部超。現在はタレントとしての活動の傍ら、講演・執筆活動にも精力的に取り組んでいる。

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