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超巨大『南海トラフ』地震の兆し? 深海魚の”異変”が示す「Xデー」

リュウグウノツカイなど深海魚の異変は巨大地震の兆し?
リュウグウノツカイなど深海魚の異変は巨大地震の兆し?(画像)Dotted Yeti / Shutterstock

静岡県沖の駿河湾で、体長1メートル、体重24キロを超える大型の新種深海魚が海洋研究開発機構の研究グループなどによって捕獲(2016年)され、『ヨコヅナイワシ』と名付けられた。ヨコヅナイワシは駿河湾の深海の食物連鎖の最上位に位置することから〝横綱〟と冠せられたわけだ。

駿河湾といえば、昨年12月、沼津市のマリンパークの浅瀬を泳いでいる体長50センチのリュウグウノツカイの稚魚が発見された。

「深海魚のリュウグウノツカイが浅瀬で見つかるのは非常に珍しいことです。海底で地殻変動が起きているのではないか、と疑いたくなる。新種の深海魚ヨコヅナイワシの発見といい、大地震の発生が懸念されます」(全国紙社会部記者)

駿河湾では特産であるサクラエビの漁獲も記録的な不漁が続いている。水揚げ量は直近でピークとなった1999年の2451トン以降は減少傾向が続き、2019年は175トン、2020年春漁期はわずか26トンにまで落ち込んだ。2020年秋漁期は約100トンと若干持ち直したものの、低水準は続いている。

武蔵野学院大学特任教授(地震学)の島村英紀氏が解説する。

「人間と比較すると、サクラエビなどの生物は一桁も二桁もセンサーの感度が高い。地震が発生する前には、震源周辺の地面や大気に微弱な音や電気、電磁波などが発生すると言われます。ナマズが地震発生を感知するという説は、あながち迷信ではない。ナマズは非常に目が悪く、他の生物が発する微弱な電気を感知して、エサを捕まえるという習性があります。真っ暗な深海に生息するサクラエビも同じような能力を持ち、海底で地殻変動の予兆を感じ取ることができるといわれる。こうしたことは地震学では実証されてはいませんが、駿河湾は南海トラフ巨大地震の震源の1つです。南海トラフは発生のXデーが差し迫っていますから注意した方がいいと思います」

8つの活断層帯で最高ランクS

次に発生する南海トラフ地震は、前回の昭和東南海地震(1944年12月、推定最大震度7)、昭和南海地震(1946年12月、推定最大震度6)がやや小ぶりだったことからストレスを蓄積しているため、超巨大化になることが専門家の間で予想されている。

また、南海トラフ沿いの駿河トラフでは、684年の白鳳地震以降、90年~270年の間隔で、マグニチュード8クラスの大地震と大津波が発生しており、こちらも警戒が必要だ。

「静岡大や東京大のチームが駿河湾の地質調査をしたところ、過去5000年間に南海トラフ巨大地震による津波は4回襲っているそうです。そのうち1096年の永長東海地震(M8.4前後)と1498年の明応地震(M8.6程度)では、海底で生じた地滑りによって、被害が増大した可能性がある。海底地滑りが発生することで、想定以上の被害が出ることを考慮した津波対策も必要なのです」(サイエンスライター)

Xデーが迫りつつあるのは、南海トラフだけでない。断層による直下型地震も同じである。昨年来、神奈川県、千葉県で異臭騒ぎが発生し、大地震発生が危惧されたのは記憶に新しい。

「実は、阪神・淡路大震災の震源である野島断層付近は、それまで地震の起きる直前の発生確率(30年以内)は00.2%から8%でした。これは現在の『Sランク』にあてはまります。発生の切迫度が最も高い確率3%以上の活断層はSランクとされているのです」(前出・全国紙社会部記者)

今年1月1日時点でSランクとされているのは、全国31の活断層。このうち『糸魚川―静岡構造線断層帯』と『中央構造線断層帯』のそれぞれ一部区間、『三浦半島断層群』など、合わせて8つの活断層帯で確率が8%を超えている。つまり、8つの活断層帯は阪神・淡路大震災の発生前より切迫度が高くなっているわけだ。

活断層が“剥き出し”になっている三浦半島

政府の地震調査委員会は三浦半島断層群の地震が発生すれば、横浜市内で沿岸部を中心に最大震度7の揺れが起きると予想している。しかも、横浜市内はほぼ全域で震度6弱以上の強い揺れ、臨海の金沢区内では震度7を観測する怖れがあるうえ、同時に液状化の可能性もあるという。

同断層群は、三浦半島の西北西から東南東にかけて3つの断層帯が並走している。最も危険とされる武山断層帯では、30年以内にマグニチュード6.6以上の地震発生確率が6%~11%と試算されている。これは専門家の間で高い数値とされる3%を大きく超え、全国の断層帯の中でも大規模な地震が起こりやすい地域として位置づけられてきた。

東日本大震災の影響を受けて、断層が動きやすくなったことも指摘されている。1月27日には北海道・胆振地方東部で最大震度4の地震があったばかり。東日本大震災と関連する中規模地震が度々起きる宮城県沖や、茨城・千葉県沖を始めとする日本各地で、大地震の発生リスクは高まっているのではないか。

「首都直下型地震はそろそろ起こる頃です。いつどこで発生しても不思議ではありません。首都圏には活断層が多く走っているが、三浦半島のように活断層が剥き出しになっている地域もあります」(前出・島村氏)

昨年11月には千葉・九十九里浜の海岸に大量のハマグリが打ち上げられた。リュウグウノツカイ、異臭騒ぎ、そして、新種ヨコヅナイワシ…巨大地震の前触れ「宏観異常現象」は不気味でならない。

【画像】

Dotted Yeti / Shutterstock

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