(画像)vodograj/Shutterstock
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露プーチン大統領“万事休す”!? 国内にクーデター、国外には身柄拘束の危機…

ロシアのプーチン大統領が窮地に陥っている。軍の内部に複数の裏切り者が存在するほか、軍と諜報機関との対立構造が浮き彫りとなった。弱体化した政権を立て直すとともに、対外的にも存在感を示す必要があるが、外遊先で逮捕・拘束される可能性も急浮上してきた。国内外で罠と策謀が待ち受けている。


プーチン氏にとって、ロシアの民間軍事会社『ワグネル』が6月24日に反乱を起こした代償は、あまりに大きかった。反乱の首謀者を「裏切り者」と批判したが、ワグネル創設者のプリゴジン氏に対して、逮捕や処刑など厳しい処分を下せず、いまだ完全決着にはほど遠い状況だ。


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不透明な点も多くある。反乱収束から5日後の6月29日、プーチン氏はモスクワの大統領府にプリゴジン氏とワグネルの幹部35人を招き、3時間近くにわたって極秘会談を開いていた。そして、この席でもプーチン氏は反乱をとがめるどころか、プリゴジン氏とワグネルがウクライナの前線で活躍したことを褒め称えたという。さらにプーチン氏は、ワグネル側に今後の任務について選択肢も示したようだ。


結局、ワグネルに資金面からメスを入れるのがやっとで、プリゴジン氏を自由の身にしてしまった。これまで絶対的な独裁者だと思われていたプーチン氏が、意外なほどの弱腰ぶりを露呈した理由は、プリゴジン氏を処罰した場合、第2の反乱が起こる懸念があったためとみられる。

捜査を急いでもイタチごっこ…

それだけ軍内部には「プリゴジン派」が浸透しているわけだが、彼らを一掃しようとする動きもある。ウクライナ侵攻の総司令官を務めたこともあるスロヴィキン将軍が、反乱を事前に知っていたとして拘束されたほか、約15人の将校が停職または退役となり、13人が尋問のために拘束されたという。

スロヴィキン氏や高級将校は、ワグネルのモスクワ進軍が始まった数時間後に拘束された。以降、同氏は公の場に姿を見せていない。拘束や取り調べを行ったのは、諜報機関のFSB(ロシア連邦保安庁)である。


「プリゴジン派の粛清を急ぐFSBと、軍側の対立も深刻化している。そもそもウクライナ侵攻前に、楽観的な情報をプーチン氏に吹き込んだのがFSBだった。その情報を鵜呑みにした同氏が、短期間でウクライナを全面降伏させられると考え、侵攻を決断した経緯がある。実際にはウクライナの猛反撃を受けて甚大な損失が出ており、軍側はFSBに恨み骨髄だ」(軍事ジャーナリスト)


FSBが捜査を急いでもイタチごっこで、ウクライナ侵攻の長期化に伴い、軍内部には不満分子が急増している。


ウクライナ南部でロシア軍部隊を率いていたイワン・ポポフ少将は、前線の兵士が疲弊していることなど問題点を上層部に直訴したところ、解任された。

入国した場合は拘束する

ポポフ氏は当初、ゲラシモフ参謀総長に問題を訴えたが耳を貸してもらえず、プーチン氏に直接抗議する意思を示したところ、その任を解かれ前線に送られたという。ポポフ氏が現在どこにいるのかは不明だ。

「制服組トップであるゲラシモフ氏の解任は、プリゴジン氏も再三にわたり訴えていた。ショイグ国防相への批判も強い。政権に対する軍内部の不満はくすぶっており、新たなクーデターの火種は残っている」(同)


西側諸国から経済制裁を受ける中、プーチン氏は対外関係でも威信を取り戻す必要がある。


ウクライナ侵攻後、プーチン氏の外遊は旧ソ連諸国など〝安全圏〟にとどまっているが、焦点となるのが8月下旬に南アフリカで開かれるブラジル、ロシア、インド、中国、南アの新興5カ国(BRICS)の首脳会議だ。


7月9日、南アのラマポーザ大統領は、コロナ禍が明けたこともあり対面開催の意向を示した。しかし、プーチン氏には今年3月、ウクライナ侵攻でロシア軍が占領地から不法に子供たちを連れ去ったことをめぐり、国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪容疑で逮捕状が出ている。


ロシアはICCに加盟しておらず、国内にいる限りプーチン氏を逮捕することはほぼ不可能だが、南アはICC加盟国だ。プーチン氏が入国した場合、拘束する義務がある。


「南アでは、プーチン氏を逮捕しないように法改正する案や、オンライン参加、もしくは代理を送る案、また、ICCに加盟していない中国などで代替開催する案も検討されているが、いずれも同氏が逃げたという印象が強くなる。ロシアとしては、プーチン氏が堂々と南アに乗り込んで会議に出席し、無事に帰国することが理想で、身柄の安全を保障するよう南ア側に圧力をかけているが、逮捕状が出ている限り、執行されるリスクは残る。同氏がロシアを離れた隙に、クーデターが発生することも考えられる」(大手紙外信デスク)


ICCは2019年11月、コンゴの元反政府武装勢力トップに、民間人の大量殺害やレイプ、性奴隷化などの罪で禁錮30年を言い渡した例もある。


プーチン氏が内憂外患で追い込まれている。