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巨人専用「新ドーム」建設!? 老朽化した『東京ドーム』の未来は~企業経済深層レポート

東京ドーム
東京ドーム (C)週刊実話Web

プロ野球の読売巨人軍にとって、自前の本拠地球場を持つことは長年の悲願と言われてきた。以前は読売新聞グループ本社と「株式会社東京ドーム」に直接の資本関係はなかったが、その悲願に一歩近づく動きが明らかとなり、球界に波紋が広がっている。

球団関係者が一連の動向をこう解説する。

「1月19日、三井不動産による株式公開買い付け(TOB)が成立し、東京ドームが三井不動産の連結子会社になりました。今後、三井不動産は所定の手続きを経て東京ドームを完全子会社化した後、読売グループに20%の株式を売却する予定です」

三井不動産は将来的な再開発を視野に、東京ドーム一帯の施設を整備し、読売グループと共同で集客力を高める算段だという。

「三井不動産は都市開発に、読売グループはプロ野球に、それぞれ強みを持っている。これで巨人は東京ドームの自前化に、大きく前進することになりそうです」(同)

ところで、昨年の日本シリーズは福岡ソフトバンクホークスの4連勝で終わり、巨人は手も足も出なかった。なぜ、これほどまでに差がついたのか。

スポーツ紙デスクが裏事情を明かす。

「新型コロナ感染拡大の影響で日本シリーズの開催時期がズレ込み、先に予定されていた都市対抗野球の日程とかち合ってしまいました。巨人の選手に聞くと、東京ドームを使えなかったことで、心理的な負担が大きかったようです」

これもそれも〝借家人〟ゆえの悲劇だが、巨人は東京ドームに、年間30億円前後と言われる莫大な使用料を支払っている。しかも、開場32年目を迎えて老朽化が進んだため、100億円の大改修にも参画する予定だ。

とん挫した“築地跡地”移転計画

「昨年発表された計画では大規模な設備投資が中心で、2023年の完成を目指している。バックスクリーンの大型ビジョンを現行面積の約3.6倍に拡大すること、換気量を従来の1.5倍にすること、女子トイレの数を1.6倍に増やすことなどが盛り込まれています」(同)

こうして球場内の環境を整えることになった東京ドームだが、肝心の球場そのものの老朽化問題には、答えが出ていない。当初から東京ドームの耐用年数は約30年と言われており、すでに旧式な球場となってしまった感は否めない。

巨人からすれば、確かに高額な使用料を節約できるに越したことはないが、それ以上に自前球場にこだわる理由がある。

球界関係者が言う。

「2000年前後の巨人戦の放映権料は、視聴率20%台で1試合1億円超えと言われ、巨人の収入はチケット販売と併せウハウハだった。ところが、近年は大一番でも視聴率10%を切り、スポンサーもなかなかつかない。放映権料金もかつての5分の1以下です」

その意味でも、巨人は恒常的に儲かる経営体質にしたいのが本音。つまり、自前の本拠地球場を保有したい願望は、にわかに持ち上がったものではない。実際、巨人は過去にも新球場設立に動いた経緯がある。

東京都の関係者が明かす。

「6年ほど前、巨人が新ドームを建設すると水面下で騒がれました。その候補地は築地です。東京中央卸売市場が豊洲に移転した後、跡地には東京ドーム5個分の敷地があり、駐車スペースや他の施設を造るにも十分な広さでした」

築地は銀座から徒歩圏内にあり、観客動員にもベストの候補地だったが、最終的にはとん挫している。当時、東京都の小池百合子知事が、築地を『食のテーマパーク』にする計画をぶち上げたためだ。

東京ドーム改修でお茶を濁すわけにはいかない…

そうした経緯を経て、今回は三井不動産と共同ではあるものの、読売グループが自前球場を保有する形が整ってきた。

前出の球界関係者が、水面下での三井不動産の動きを分析する。

「昨年公表された改修計画は、三井不動産が関わる以前のもの。現在は三井不動産が中心となり、東京ドームの建て替えも含めての開発を検討しているという。だが、ドームの建設には数年かかる上、同じ場所での立て替えなら大きな不具合も出る。どんな計画になるか、今はまだ不透明です」

さらなる懸念材料は、27年をめどに東京ヤクルトスワローズの本拠地となる新神宮球場が、1000億円の巨費をかけて完成することだ。新神宮球場は今やメジャーリーグでは常識となった、さまざまな施設がそろう「ボールパーク」として生まれ変わるという。

北海道日本ハムファイターズも、北海道北広島市に約600億円を投じ、23年の開場を目指してボールパーク型の新球場を建設中だ。こうした計画を聞く限り、東京ドームが改修のみでお茶を濁すなら、新神宮球場などの後塵を拝し、国内球場運営の主導権を握られるのは必至である。

「読売グループは新球場の建設を諦めてはいません。巨人を再び球界の盟主とするため、必ず新たな動きがあるとみています」(同)

実際、築地の『食のテーマパーク』は、その後も時計の針が止まったままで、将来像をめぐる具体的な議論には至っていない。

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