『ザイム真理教それは信者8000万人の巨大カルト』三五館シンシャ／1540円

森永卓郎（もりなが・たくろう） 1957年、東京都生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。1980年に東京大学経済学部を卒業後、日本専売公社（現在のJT）に入社、「管理調整本部主計課」に配属となる。同部署で体感した大蔵省の実態を原点に、『ザイム真理教』が生まれた。

――「ザイム真理教」にはどんな意味があるのですか？

森永　先進国の中で、日本だけがこの30年間経済成長していません。その最大の理由は、財務省が税・社会保険料負担を増やし続けてきたからです。実際、消費税負担を考慮した世帯主の手取り収入は、減少しています。手取り収入が減れば、当然、消費が低迷し、経済は成長しません。財務省が増税政策を止めないのは、『ザイム真理教』というカルト教団になってしまったためです。その源流は1980年代にさかのぼります。石油ショックによる不況で、政府は大量の国債発行をしました。ザイム真理教は、借金返済のために経済を無視した増税を行い、それを正当化するために、政治家、マスメディア、そして国民に対しても、洗脳を行うようになったのです。

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――日本はそんなに借金を抱えているのですか？

森永　財務省の主張は、「日本はいま世界最大水準の借金を抱えて首が回らなくなっている。この状態を放置すると、日本経済は破滅してしまう。それを防ぐためには増税を続ける以外の道はない」というものです。これは、カルト教団の言う「あなた、悪霊がついていますよ。このまま放置すると、孫の代までたたられますよ。防ぐための方法は一つしかありません。この100万円の壺を買いなさい」という理論と一緒です。

国民負担率が100％になっても止まらない!?

しかし、日本が大きな借金を抱えているというのは事実と異なります。日本政府は、20年度末で1661兆円の負債を抱えていますが、同時に資産を1121兆円持っており、債務は540兆円にすぎません。さらに日銀が保有する国債は、実質的に返済が不要なので、その分を除くと日本の純債務は8兆円しかないのです。

――安倍晋三元総理のように、財務省と闘う姿勢を見せる政治家は他にいないのでしょうか？

森永　近年の政治家でザイム真理教に洗脳されなかった唯一の政治家が、安倍元総理でした。しかし、ザイム真理教は、政治家が言うことを聞かなければ政界から葬ろうとします。結局、安倍元総理も、ザイム真理教が仕掛けた森友学園の問題で、総理の座から引きずり降ろされました。

――このままザイム真理教の布教が進むと、日本はどうなるのでしょうか？

森永　国民負担率が無限に上がっていきます。それは負担率が100％になっても止まりません。カルト教団は家屋敷を売らせてまで献金させるからです。日本は重税国家を通り越して、ザイム真理教による専制国家（支配者層が独断的に政治を行う体制）になっていくでしょう。

（聞き手／程原ケン）