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蝶野正洋『黒の履歴書』~アパレル業界のコロナダメージ…とは

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

俺が代表を務めているアパレルブランド『アリストトリスト』は今、東京・銀座にショールームを設けているんだけど、この店舗での販売を終了することにした。併せて次シーズンの新作に関しても、ちょっとストップしようと思っている。

その理由を明かすと、ひとことで言えばコロナのダメージなんだよね。


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コロナ禍となった2020年から21年、22年くらいの頃の売り上げが落ちていたということもあるんだけど、それはオンラインショップなどを活性化することで乗り切ってきた。

深刻なのは、生産が滞るようになってしまったこと。日本のアパレル産業全体が地盤沈下しているんだよ。

『アリストトリスト』は、30~50着ほどの小ロットの商品がほとんど。それにクオリティーを確保する意味もあって、メイド・イン・ジャパンでやっているので、国内の規模の小さな縫製工場に生産をお願いしている。

そうした工場の中には、コロナで稼働が止まってしまい、職人さんたちを一時解雇して乗り切ったという所が結構ある。それで、コロナが落ち着いてきたので閉めていた工場を再開しようとしているんだけど、一度離れてしまった職人さんが戻ってこない状態が続いて、完全な人手不足に陥っている。

ウチがスーツやジャケットの縫製をお願いしていた工場は、働いているのが70歳くらいのおじいちゃん1人になってしまって、注文が受けられなくて廃業したというケースもある。

一度再調整しよう…と

それ以前から、人手不足、後継者不足でギリギリでやっていたところが、コロナでギブアップしてしまったということだよね。

なんとか再開できた工場でも、ウチと同じように困ってるブランドからの依頼が殺到しているようで、生産が追い付かずパンク寸前。細かなミスも増えるし、注文をさばけなくて納品が遅れたりするような事態が続出している。

この状況だと、今までの価格、クオリティーを保ちつつ、納期までに商品をそろえるということが難しくなってしまった。

そうなると、商品計画はもちろん、会社としての達成目標も変えていかなきゃいけない。さまざまな状況を見ながら、ここで一度ビジネスのスケールを含めて再調整しようということになったんだよね。

『アリストトリスト』は、2000年に立ち上げて、最初は代々木上原にショップを展開した。それから恵比寿、下北沢、表参道と移って、銀座にたどり着いたんだけど、その間ずっと支えてくれているお客さんも多くて、いわば20年以上の付き合いになる。

先日、ショールームでイベントをやったんだけど、俺もお客さんも、それだけ年を取ったというのは感じたね。ウチは建築関係とか、トラックの運転手をやっているような現場系のお客さんも多いんだけど、みんな50歳を過ぎると体を壊していたりする。そろそろガタが来るタイミングなのかもしれないけど(笑)。

『アリストトリスト』としては、これからもお客さんと一緒に歴史を重ねていきたい。

このイベントは、あと2回予定していて、次は7月29日(土)に開催する。貴重な機会になるかもしれないから、ぜひ参加してほしいね。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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