岡山県はタナゴの聖地。そしてタナゴの聖地ということは貝の聖地（理由は前回書いております。見逃された方はWeb版をぜひ）、ということで街中の用水路で淡水貝に夢中となった前回。ここ岡山はタナゴのみならず、淡水魚の宝庫と言える地ですから、釣りもまた楽しみです。普通であれば早速タナゴ釣りに、となるのでしょうが、残念ながらタナゴ釣りのような、繊細な道具やテクニックをワタクシが持ち合わせているわけがありません。ついでにひねくれ者ゆえ、今回はムギツクやカマツカといった、比較的マニアックな淡水魚を狙ってみたいと思います。せっかくの岡山ですから…。

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とはいえ、ムギツクやカマツカがどこで釣れるのかは全く見当もつかず、とりあえず地図を眺めて車を走らせます。生息場所は川の中流域。ムギツクはわりと岩交じりの箇所、カマツカは砂底に生息ということをヒントに目を付けたのは足守川です。地図から察するに、山あいを流れる里川がイメージされ、何となくよさげな予感を胸に車を進めます。

足守駅を過ぎてしばらく走ると、道の両側には歴史を感じさせる蔵造りの家が立ち並びます。旅先では、こういった趣きのある町並みを眺めるのもまた一興。さらに車を進めるうちに再び川沿いの道となり、所々で竿を出してみますが、一向に魚の気配はありません。

そうして上流を目指すうちに、山あいの雰囲気となってまいりました。車を降りて川を見てみると、丁度足元のカーブに流れが当たり深い淵となっております。〝ここで釣れなければもう魚はいない〟とすら思えるようなポイントですが、ただ一つ気になるのは水の色です。先ほどからどこも川相はよいのですが泥濁りと言いますか、それも短期的な泥濁りではないような微妙な色です。それでも、とりあえずやってみなけりゃ分からないと、安物の渓流竿に簡単なミャク釣り仕掛けをセット。エサのミミズを流れの当たる足元に入れます。思った以上に水深があり、「これは期待できるかも」と思った瞬間にグリッとアタリが伝わりました。

これだけ探り通して、もしかしたら魚がいないのかも、と不安を感じていた中でのアタリはドキドキするものです。そして、続く明確なグリグリッで合わせますがハリ掛かりはせず、半分になったミミズが返ってきました。結構しっかり待ったんだけどなぁ…。

そこでエサをサシ（ウジ虫）に変えて再び投入。オモリを底に付けると、程なくグリグリッ。軽く手首を返すと小気味よい手応えでハリ掛かりです。何が釣れたのかワクワクしながら竿を上げると、キラリと躍り出たのはカワムツ…。全国的に、どこでも普通に見かける魚です。そして、次の投入でも再びカワムツ。ようやく手応えが味わえて嬉しい半面、ちょっと珍しい魚を期待していただけに拍子抜けの感は否めません。

狙いは不発もつい夢中に

とはいっても「ここでいなければ…」というポイントでちゃんと反応があったこと、そして釣れるカワムツはいずれも肥えていて手応えもそれなりに楽しめることから、ついつい夢中になってしまい、ひとしきりカワムツと戯れます。

ある程度満たされると人間、欲が出てくるもので、ひょっとしたら足元の深みにムギツクや、あるいは向こう岸の砂底にカマツカでも潜んではいないだろうか、などと仕掛けを入れてみますが反応はナシ。結局、アタリがあるのは足元の流れが当たって深くなっている範囲のみ。そして釣れるのはカワムツのみという結果となりました。せっかくの足守、行き道に見た町並み保存地区や足守川橋梁など、ちょっと観光がてらに立ち寄りたい所もあることから竿を畳み、これも行き道で見かけてちょっと気になっていた素朴なうどん屋さんで、軽く昼飯を兼ねて休憩と相成りました。

さて、カワムツは焼き魚にしてビールのお供とします。素朴な川魚ながらに肥えて肉付きは良好。軽く一杯やるつまみには丁度よいあんばいで、なかなか狙いどおりにはいかずとも、鄙びた里川での釣りもまたいいものでした。

三橋雅彦（みつはしまさひこ） 子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。