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M9.3で津波の高さは28m!? 北海道・東北の巨大連動地震で“死者10万人”予想も

A.D.S.Portrait
(画像)A.D.S.Portrait/Shutterstock

能登半島沖、千葉県東方沖と伊豆諸島、そして鹿児島県のトカラ列島――今年5月には、日本沿岸のさまざまなエリアで震度5弱以上の地震が相次いだが、月が改まり今度は〝北の大地〟が揺れだした。

6月11日午後6時55分ごろ、浦河沖で深さ136キロを震源とするM(マグニチュード)6.2の地震が発生。最大震度5弱の大きな揺れが、北海道南東部を襲った。同規模の地震が北海道で観測されたのは今年2月25日の釧路沖地震以来だが、その後も小さな余震がみられるため〝大地震の到来〟が急速に危惧され始めた。

武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏が言う。

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「今回の地震は震源が想像以上に深かった。もし、30〜40キロの浅い場所が震源だったら、震度6か7の被害が出ていたかもしれません。まさに不幸中の幸いですが、それだけに政府が予測している千島海溝地震の先駆けかもしれないとみられているのです」

島村氏が指摘する「千島海溝地震」とは、気象庁も警戒する千島海溝沿いを震源としたM9.3の超巨大地震。発生した場合は北海道えりも町や厚岸町で震度7の強い揺れが起き、道東を中心に津波が押し寄せる可能性が高いという。その際、えりも町では津波の高さは28メートルに達し死者10万人、8万4000棟もの建物が全壊すると予測されているのだ。

島村氏が続ける。

「他の地域と異なり、北海道には記録が残っていないが、沿岸部からは数百年前と思われる津波の痕跡が発見されている。そこから推測するに、過去には数十メートルもの津波が押し寄せた可能性もあるのです」

南海トラフ地震より深刻

事実、『産業技術総合研究所』が過去に沿岸部の6500年分の地層を調べたところ、大津波をもたらす巨大地震が約350年に一度起きていたことが判明したという。

また、アイヌには《大昔、大津波で野も山も大波に襲われ、樽前山(苫小牧市北西にある活火山)も頂上が少し残っただけで多くの人は死に絶えた》との言い伝えがあり、近年この伝承も注目されているのである。

「そのため、政府機関の『地震調査研究推進本部』も警鐘を鳴らしている。堆積物の調査からも過去に十勝沖と根室半島沖の地震が連動したことが判明しており、この巨大地震から400年近くが経過していることから、『M9級の地震の発生が切迫している』と発表しているのです」(科学ライター)

もっとも、恐ろしいのはこの地震の被害が北海道だけにとどまらない可能性があることだという。専門家によれば、同地震が起きた際には千島海溝に連なる日本海溝が刺激され、東北沖で大地震が連動して発生する可能性もあるからなのだ。

防災ジャーナリストの渡辺実氏が言う。

「南海トラフ地震では、南海地震と東海地震の連動が警戒されているが、千島海溝と日本海溝でも連動地震が起きる可能性は十分にある。実際、日本海溝には12年前の東日本大震災の際のプレートの割れ残りがあるとみられ、南海トラフ地震より深刻な事態を招く恐れも危惧されているのです」

“負の連鎖”はどこまで続くのか…

また、前出の科学ライターも2つの巨大地震の連動をこう解説する。

「東北沖地震の誘発を語る場合、見逃せないのが東日本大震災の〝爪痕〟です。実はM9、最大震度7を記録した同地震では、日本列島は東へ5.3メートル動いたといわれている。以後、東北ではM4以上の余震が年間200回以上、また12年間でM7以上の地震が計12回も起きている。そのため東北沖のプレートは、極端に千島海溝地震に連動しやすくなっているとみるべきなのです」

ちなみに、11年3月に起きた東日本大震災では、東北から関東沿岸部にかけて恐ろしい津波が襲来。死者・行方不明者2万2000人以上、12万棟以上の家屋が全壊したが、気になるのは懸念される次の東北沖地震が、どれほどの被害をもたらすかということだろう。

「政府は雪深い冬に発生する巨大地震を想定し、死者19万9000人、約22万棟の家屋の全壊を予想している。ただ、東日本大震災の教訓から福島第一原発には高さ11メートルの防潮堤、岩手から宮城、福島までの約600カ所にも高さ最大14メートル、総延長400キロメートルの防潮堤が建設された。そのため、2つの地震が連動して発生した場合は、むしろ無防備な北海道沿岸部の被害が大きいとの声が多いのです」(同)

前出の島村氏によれば、仮に誘発地震がほぼ同時に起きた場合は、千島海溝地震と連動し揺れるエリアも広範囲になるため、「東日本大震災時に外れそうで外れなかったプレートの留め金が、次々連鎖的に外れていくだろう」(島村氏)という。

不気味なのはその〝負の連鎖〟がどこまで続くか分からない点だが、それもあって中にはこんな見解を示す専門家も少なくない。

「もしも、日本海溝でM8、震度6以上の地震が発生し、東北沖のプレートが広範囲で破壊された場合、今度は首都直下型地震が誘発される可能性がある。関東も対岸の火事ではすまされないのです」(科学誌編集者)

そうなれば、まさに日本は〝地獄絵図〟。生き残るためにも、地震情報のチェックは必須と言えそうだ。

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