日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web
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『トンガリササノハガイ&オバエボシガイ』岡山県岡山市北区/旭川水系産~日本全国☆釣り行脚

「貝はやめて下さい」と担当から言われ続けてはや数年。出だしがコレということは、今回は貝です。いつも書いているように、貝は採るのも食べるのも、そしてなめるのも大好きなものですから…エヘヘ。


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岡山県岡山市の笹ヶ瀬川にて、ギギやらウナギやらの夜釣りを楽しんだ前回。岡山県といえば、タナゴ釣りを嗜む釣り人からは絶大な人気を誇り、関東や遠く東北からも、遠征でタナゴ釣りに訪れる方もいるほどのタナゴの聖地です。ということは、貝の聖地でもある訳です(理由は後述)。これは、貝を嗜むワタクシとしてはやらないわけにはまいりません。


【関連】『ウナギ&ギギ』岡山県岡山市南区/笹ヶ瀬川産~日本全国☆釣り行脚 ほか

宅地開発などにより、全国的には生息域がかなり限られるとされるタナゴも、ここ岡山県では「そのへんの街中の水路にもいる」といわれるほど。ということは貝も同じく、そのへんの街中の水路にいるはずですから、適当に街中を見て回ります。それにしても街中の至る所に水路が引かれて、住宅街のあちこちで澄んだ水が流れる環境というのは素晴らしいものですね。


日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

何カ所か見て回るうちに、所々に水路へ下りられる階段が設置された手頃な水路を見つけました。ちょうど、水路の水を汲んで畑仕事をしているおばあちゃんがおり、ここでタナゴ釣りをする人を見かけるか聞いてみたところ、「ここじゃおらんなぁ」とのこと。確かに、浅い流れの中に魚の姿はありません。とはいえ、ほどよく流れのあるせせらぎは何とも気持ちが良さそうで、初夏の日差しに少し参っていたこともあって、試しに水の中に入ってみることにしました。


オバエボシガイ 日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

水路に立ち込んでみると思いのほか流れがあり、冷たく澄んだ水の気持ちよいこと。コンクリートで固められた底には小石や砂の堆積している箇所も多く、適当に砂をすくってはせせらぎで流しを繰り返すうちに、手のひらに小石のような感覚が残りました。一瞬、小石かと思いましたが、よく見るとオバエボシガイです。やはり貝はいました。

宅地の水路でオッサン興奮

1個取れれば俄然やる気が出るというもので、夢中になって砂を掻き、オバエボシガイを拾っていきます。小さな物は逃がしつつ、さらに水路を歩きながら砂を掻くうちに、ふと砂の中に何か木片のような物が刺さっているのが目に入りました。これはもしや…。

トンガリササノハガイ 日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

砂を掻く手を止め、木片とおぼしき物を摘み上げてみると、やはりトンガリササノハガイです。ここからは、遮二無二砂を掻くのではなく、水路の底をよく見ながら歩いてみることに。すると、所々に木片のような物が刺さっており、そのすべてがトンガリササノハガイではありませんか。こ、こりゃたまらん…。もちろん、取り過ぎは禁物ゆえ大きめの物を選って、砂に埋もれたトンガリササノハガイを乳首を摘む要領で引き抜いていきます。


住宅街の水路でオッサンが1人、ハァハァとヨダレを垂らしながら夢中になって貝を摘み、砂を掻き、食べるには十分な量を確保。それにしても適当に入った街中の水路でコレですから、岡山県はなんと素敵な地なのでしょうか。

絶妙な自然環境岡山県最高!!

オバエボシガイ、トンガリササノハガイなど聞き慣れないこれらは、淡水にすむイシガイ科の仲間。初めにタナゴの聖地=貝の聖地と書きましたが、タナゴ類はこれらイシガイ科の貝類に産卵をします。メスは産卵管という管を貝の出水管に差し込み産卵。オスは入水管に放精し、入水管から取り込まれた精子は貝の内部で卵と受精します。つまりタナゴの繁殖にイシガイ科の貝類は欠かせない存在なんですな。

ちなみに、この淡水の二枚貝は〝グロキディウム幼生〟と呼ばれる幼生を水中に放出し、ヨシノボリなどの魚のヒレに寄生してしばらく成長します。これらの互助関係と言いますか、自然の営みには驚かされるばかりですが、この絶妙な自然界のバランスは、絶妙なだけにちょっとした開発や汚染で容易く壊れてしまうのかもしれません。


トンガリササノハガイの酒蒸し(左下)、バターソテー(上)、オバエボシガイの味噌汁(右下) 日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

さて、ありがたく持ち帰ったトンガリササノハガイは酒蒸しとバターソテーに、オバエボシガイは味噌汁にして晩酌です。いずれもふっくらと身入りはよく、澄んだ水路という環境のせいか、癖が全くなく美味です。シジミの癖をなくして旨味を上品に残した風味、と言えば分かりやすいでしょうか。住宅街の日常にもしっかり残る、岡山県の素晴らしき自然には、大いに感謝です。
三橋雅彦(みつはしまさひこ) 子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。