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蝶野正洋『黒の履歴書』~審査員という立場になってみて分かること

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

今年の2月にプロレスを引退した武藤敬司さんが『ベスト・ファーザー イエローリボン賞』を受賞した。これは「素敵なお父さんとされる著名人」に贈られる賞で、武藤さんは記者から「自慢したいプロレス仲間は?」と聞かれ、「蝶野の家庭。あそこもインターナショナルな結婚してるからさ。だからあえて蝶野のところに自慢したいですね」とコメントしたそうだ。


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なんで俺に自慢したいのか分からないけど(笑)、武藤さんはまさにベストファーザーだし、武藤さんの家族も素敵なんだよね。

武藤さんはヒザが悪いこともあって、家ではまったく動かないらしい。居間のソファにどっかりと座って、娘さんに爪を切ってもらったり、身の回りのことは奥さんがやってくれるという王様みたいな生活を送っているという。逆に言えば、武藤さんを中心に家族みんなでケアする態勢が整っている。ベスト・ファミリー賞があるなら、武藤家に送ってほしいね。

俺は「ベストファーザー賞」はないけど、同じ日本メンズファッション協会が主催している『グッドエイジャー賞』(新しい生活感性とアクティブな熟年世代の生き方を目指す著名人に贈られる賞)を受賞したことがある。こういった賞は、主催者の宣伝や広報が目的だと思うけど、賞をもらった側も思った以上に報道されるし、さまざまなところに取り上げられるから、その影響力の大きさを感じたね。だからこそ審査したり選ぶ側も大変だと思う。

審査するのも簡単じゃない

審査員といえば、オリエンタルラジオの中田敦彦くんという芸人が、ダウンタウンの松本人志さんに対して「漫才、コント、大喜利、漫談…全部のジャンルの審査委員長が松本さんというとんでもない状況」「賞レースの審査員を何個かやめてほしい」と噛み付いて、物議を醸しているらしい。

これは一理あるとは思う。松本さんは、確かにいろいろなお笑いコンテストの審査員をやっているイメージがあるし、本人は否定するかもしれないけど、その道の権威になっていることは間違いない。

でも、それはキャリアのある人に対して当然の評価だし、業界全体がそのポジションを求めているから、もはや松本さんだけで決められることじゃないと思う。

俺も頼まれて『プロレス大賞』の特別選考委員を務めたことがある。そのときのMWP候補が2人に絞られて、どちらかを選ぶという状況になったんだけど、これは悩んだよ。純粋に、俺が個人的によいと思った選手に1票入れるのか。それとも、プロレス界全体のことを考えて、将来性があって、業界を引っ張っていけるような選手を選んだほうがいいのか。選考基準から熟考を重ねなきゃいけないから、審査するのも簡単じゃないと思ったよ。

だから、中田くんもまずはその位置まで行って、実際に審査員を務めたりしてからじゃないと、その大変さが分からないんじゃないかな。

まぁでも、この件は本気の提言をしたかったわけじゃなくて、自分のYouTubeの再生数を稼ぐための炎上商法なんだとは思う。

話題づくりという意味では同じかもしれないけど、ケンカをふっかけて自分だけ稼ごうというやり方は、賞イベントとは真逆の考え方だね。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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