梅雨入りとともに蒸し暑い日が続くようになると、面白くなるのがウナギ釣りです。一般的にウナギといえば例年7月下旬の〝土用の丑〟ですが、水温が温かくなり、かつ梅雨で程よく増水する頃からが、ウナギ釣りの盛期とも言えます。そんな好機を迎えたウナギを狙って岡山県岡山市にやってまいりました。
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備前と言えば、青江のウナギ。古くは〝青江のアオ〟と呼ばれ、天然ウナギの中でも群を抜いて高い評価の〝児島湾の青ウナギ〟です。豊穣の汽水域、児島湾の砂泥底でアナジャコを主食に育つことがその要因とされており、今回はその児島湾に流れ込む笹ヶ瀬川で、ウナギを狙ってみたいと思います。
初めての釣り場では状況や雰囲気がよく分からないこともあり、日没前に川筋を一回りしてリサーチ。足場のよい米倉港で竿を並べることにしましたが、日没を迎え、どうにも雰囲気がいまひとつです。これは言葉では上手く言い表せないのですが、なんというか気配が薄いといいますか…。
そこで、歩いて周辺を見て回ったところ、米倉港とつながる水路に妖しげな雰囲気を感じました。何の変哲もない住宅街の水路ながら、変化のある地形に程よい狭さなど、諸々の条件が自分の好みにマッチするといいますか、何となくよさげです。
早速、道具を回収して移動。この狭い水路にて再スタートです。安物のコンパクト竿(リールとセットで1980円)に、オモリとハリの簡単なブッ込み仕掛け。これにエサのミミズを付けて適当に投げ込んだら、竿先に発光体を付けてアタリを待つばかりです。
住宅街で青江のキン?
夜の静かな住宅街で1人、竿先の発光体を眺めるというのも趣のあるもので、しばらくのんびりとすごすうちにビビンッ! と竿先が揺れました。初めてのポイントでの最初のアタリというのは心が躍るものです。ビビビンッ! と揺れが激しくなったところで竿を手に、釣れ上がったのは20センチほどのギギでした。中部以西のウナギ釣りではお馴染みの外道です。背ビレと胸ビレの毒棘に気を付けて、ハリから外してリリース。こんな水路でもギギの魚影はそれなりに濃いようで、飽きない程度にギギが掛かります。
待つ→釣る→逃がすを続けるうちに今までのビビンッとは違い、激しく竿先が叩かれるアタリが出ました。「ようやくウナギのお出ましか?」と巻き上げると、適度な手応えと重量感です。水面でバシャバシャと暴れながら上がってきた魚にライトを当てると…またしてもギギ。ウナギを期待しただけに、ちょっとガッカリですが、ギギも30センチ近い良型になればなかなかの風貌で、金色の魚体は美しく、さしずめ〝青江のキン〟といったところでしょうか。食べては旨い魚なので、毒棘をペンチで取り除いて有り難くキープとします。
その後もポツポツとギギは釣れ続き、うち1尾は良型。今回はウナギはおあずけ、2尾のギギで素朴に晩酌か…などと考えていると、いきなり1本の竿先が絞り込まれるとともに竿先が浮き上がりました。
青江の…普通のウナギ
慌てて竿をつかむと、ギギとは明らかに違う力強い手応えが伝わります。障害物などに潜り込まれないよう、なかば強引にリールを巻き、水面での激しい抵抗も構わずに「えいやっ!」と抜き上げたのは丸々と肥えた型のよいウナギです。
色は…アオではなく普通。ま、淡水域の水路なので当たり前ですな。でも、いいんです。初めてのポイントでギギに遊んでもらったうえに、本命まで型が見られたのですから、これで満足。竿を畳むことにします。
青江のアオではありませんが、美味なる天然ウナギですから有り難くかば焼きに、そしてギギは天ぷらにして晩酌です。かば焼きは居付きのウナギらしく、野趣を感じさせる風味に程よい脂乗り。肉厚感もあって、これはこれで天然らしく旨いかば焼きです。
そして、マイナーな魚ではありますが、中国地方ではギギュウと呼ばれ、古くは食卓にも上がっていたギギ。広島県江の川流域では今も漁が行われているようで、このギギの天ぷらも上品な味わいでビールも進みます。
初めて竿を出した住宅街の水路ではありましたが、美味しい肴にもありつけて満足な夕涼みとなったのでありました。
三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。
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