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蝶野正洋『黒の履歴書』~電通自社ビル売却は東京五輪中止のサイン

蝶野正洋 
蝶野正洋『黒の履歴書』 (C)週刊実話Web

日本がコロナ禍になってから、早くも1年が経った。まだワクチンの接種もできていない状況で事態は改善していない。首都圏や関西の一部の府県で緊急事態宣言が出されたけど、あくまでも自粛要請だから変わらずにすごしている人もたくさんいる。

このあいだ街に出たときは、コンビニの前で大学生ぐらいのやつらが数人集まって、楽しそうに談笑していた。飲食店が20時に閉まって行く所がないから、コンビニ前でたむろするしかないんだろうね。

昔は24時間営業なんてほとんどなくて、深夜にやっている飲食店はスナックぐらいしかなかった。俺らが中高生のときに、ようやくファミレスやコンビニが出始めて、そこによくたまっていたのを思い出したよ。

日本ではあまり報道されていないけど、ヨーロッパでは若者たちが「コロナパーティー」を盛んにやっている。みんなでこっそり集まって、音楽かけて酒を飲むらしいが、これは見つかったら厳しく罰せられることになっている。

こういうパーティーに行く若者の一部は「コロナが怖いから行きたくない」って思ってるだろうけど、仲間に合わせて行ってしまうやつもいるだろうね。

ちょっとパターンは違うけど、持病や基礎疾患を持っている人が、いろんな事情があってそのことを職場や仲間内には言ってないということもある。そんな人が仲間の集まりに誘われたときにどうするか。これはもう、その人の生き方の問題になってくるから、誰かが強制できるものでもない。

序二段の力士が「コロナで相撲をとるのが怖い」ということで引退したけど、それに近いかもしれない。東京オリンピックが開催されるとしたら、同じようにコロナを理由に出場を辞退する選手が続出すると思う。

それを考えると、いまの状況でオリンピックを開催するのは難しい。

テレビは“グレーな視聴率”で負けたと思う

大手広告代理店の電通が自社ビルを3000億円で売却するっていう話が出たけど、これは東京オリンピック開催に赤信号が灯ったというサインだよ。電通はオリンピックに大きく絡んでいたし、中止となるとカネが回らず苦しくなることは目に見えているからな。

コロナ以前から、大手広告代理店は景気が悪かったと思う。現在の広告費は、テレビよりもインターネットのほうが伸びている。ネット広告になると、サイバーエージェントとか新手の会社のほうが得意なんだよ。

テレビでいえば、広告の値段を決める大元になるのは「視聴率」だ。ただ、視聴率を正確に調査することは不可能だし、視聴者の属性も曖昧だ。テレビ業界の〝グレーな視聴率〟で大手広告代理店は商売をしてきたが、ネットであれば登録者数や閲覧回数がしっかり数字に出る。さらに世代や性別といった属性、何に興味があるかも細かく分析できるため、ピンポイントで消費者に商品を訴求できるんだよ。そういった部分で、テレビはネットに負けているんだと思う。

来年は北京で冬季オリンピックも予定されてるけど、これも開催が危ない。それに2022年はカタールでFIFAワールドカップもある。ワールドカップはオリンピックよりも人気があるイベントだから、これがなくなったら、電通どころかさまざまな企業に影響が出るだろう。

これに備えて、いまから対策を考えておいたほうがいいかもしれない。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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