『完全シミュレーション台湾侵攻戦争』講談社
『完全シミュレーション台湾侵攻戦争』講談社

『完全シミュレーション台湾侵攻戦争』著者:山下裕貴~話題の1冊☆著者インタビュー

『完全シミュレーション台湾侵攻戦争』講談社/990円
山下裕貴(やました・ひろたか) 1956年、宮崎県生まれ。1979年、陸上自衛隊入隊。自衛隊沖縄地方協力本部長、東部方面総監部幕僚長、第三師団長、陸上幕僚副長、中部方面総監などの要職を歴任。特殊作戦群の創設にも関わる。2015年、陸将で退官。現在、千葉科学大学及び日本文理大学客員教授。
――中国が台湾を侵攻する可能性は、どのくらいあるのでしょうか?

山下 結論から言えば間違いなく台湾侵攻(武力統一)は「ある」ということです。2021年3月、米インド太平洋軍のデービッドソン司令官(当時)は米上院公聴会で「今後6年以内(2027年まで)に中国が台湾に侵攻する可能性がある」と予測しています。習近平総書記も第20回党大会(2022年10月)の政治報告で「武力行使を決して放棄しない。あらゆる選択肢を持ち続ける」と宣言しています。可能性ではなく、問題はその時期がいつなのかです。


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――実際に作戦が始まったら、どのように侵攻することが考えられますか?


山下 周到な作戦準備を行い、認知戦、情報戦により台湾国内を混乱させ、世界各国に中国の台湾武力統一の正当性を拡散し、反動勢力から台湾住民を解放するとの大義名分の下に侵攻作戦が開始されます。海上封鎖で全面降伏を求めますが、台湾は屈しないでしょう。台湾軍の地上兵力は約9万人、攻撃側は防御側の3倍以上の兵力が必要であり、中国軍侵攻部隊は約40万人(中国軍の総地上兵力は約97万人)ほどだと思われます。上陸準備打撃(精密誘導兵器や航空攻撃など)を行い、防御組織を破壊した後に台湾本島西部海岸に第一次侵攻部隊が上陸してくると思われます。

日本も台湾有事に巻き込まれる

――米国はどの程度介入すると思いますか? また、日本が交戦する可能性はあるのでしょうか?

山下 米国は台湾関係法を根拠に、中台の緊張状態から政治的・外交的に介入するでしょう。そして中国軍の武力侵攻が開始されたなら、米国は中国との全面戦争を回避(中国側も同じ)しつつ、台湾海峡を中心とした戦域において海空軍を主体として作戦すると思われます。日本も地理的に台湾に近く、望むと望まざるとにかかわらず台湾有事に巻き込まれることになります。特に米国の行動に関連して、重要影響事態(後方支援)から存立危機事態(米艦防護)へと事態が推移し、自衛隊が中国軍と直接交戦することが予想されます。


――戦争の結末をどのように予想しますか?


山下 西側研究機関の台湾有事シミュレーションでは、中国の台湾侵攻はどのようなケースでも失敗すると結論を出しています。果たしてそうでしょうか。中国もまたあらゆるケースの図上演習を行い、かつ周到な準備を実施し勝利を確信して侵攻を開始します。台湾本島を境に西部を中国が占領し、東部を台湾が維持する東西分割で停戦する可能性もあるでしょう。


(聞き手/程原ケン)