ロシアのプーチン大統領が最大のピンチを迎えている。欧米の兵器供与を受けたウクライナが反攻作戦を本格化し、ロシア国内では反プーチン派が暗躍し始めた。もしロシアが敗戦した場合、大統領の座を追われるのはもちろん、戦争犯罪人として裁かれるのは間違いない。絶対に負けられないプーチン大統領が、禁断の核兵器使用に踏み切る可能性が高まっている。
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5月30日、ロシアの首都モスクワ郊外に飛来した8機のドローン(無人機)により、プーチン大統領の公邸付近が攻撃された。翌31日には、黒海に面する南部クラスノダール地方の製油所がドローン攻撃を受けた。同地方のリゾート地ソチには大統領の別荘がある。暗殺を避けるためにあらゆる手を尽くしているプーチン大統領だが、確実に命の危険が迫っている。
ロシアのプーチン政権を敵視する武装集団は『自由ロシア軍』や『ロシア義勇軍団』と名乗り、ウクライナからロシア西部ベルゴロド州などへの越境作戦を断続的に展開している。
ウクライナのゼレンスキー大統領は6月10日、「反転攻勢と防衛行動がウクライナで起きている」と述べた。ウクライナ軍がロシア軍への大規模反攻に本格着手したことを認めた発言だが、「どの段階にあるか詳細は話さない」とも語った。
兵力不足に苦しんできたウクライナ軍だが、世界最強といわれるドイツ製の戦車『レオパルト2』やイギリスから供与された長距離巡航ミサイル『ストームシャドウ』、米国製の地対空ミサイル『パトリオット』などがようやく配備された。米国製の戦闘機『F16』の供与も始まるとみられ、一気に兵器が充実してくる。
おそらく銃殺刑に
一方のロシア側は、民間軍事会社『ワグネル』創設者のプリゴジン氏が、ウクライナ東部の激戦地バフムトから撤退した。
「ワグネルが離脱したもののロシア軍は兵員補充で約30万人を招集しており、数の面ではウクライナ軍を上回る。しかし、西側諸国の制裁を受けて、最新兵器に不可欠な精密部品が調達できていない。中国やイランに支援を仰いでいるが、欧米が供与する兵器に比べ見劣りするのは事実だ」(軍事ジャーナリスト)
さらに深刻なのがロシア軍の内部分裂で、プリゴジン氏は宿敵のショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長を名指しで批判し、「2人が銃殺刑に処される日は近いだろう」とまで語っている。
こうした中、6月6日にはウクライナ南部ヘルソン州のカホフカ水力発電所ダムが決壊し、下流地域に大洪水が発生した。多くの死傷者や環境への被害が出たうえ、ロシアが占拠するザポロジエ原発はダムの貯水池から取水しているため、水の流出が長期化すればメルトダウンも懸念される。
ロシアとウクライナは、双方が「相手の攻撃」と非難合戦を繰り広げているが、ロシアにはウクライナの反攻作戦を妨害するという動機がある。いずれにせよ爆破による決壊なら、ダムが紛争時の保護対象になると定めたジュネーブ条約に違反する。「戦争犯罪」の容疑者として国際刑事裁判所から逮捕状が出ているプーチン大統領に、新たな罪状が加わることになるだろう。
外交面でもロシアは失策続きだ。そもそもウクライナ侵攻には、西側諸国による軍事同盟のNATO(北大西洋条約機構)が東方に拡大するのを防ぐという狙いがあった。しかし、侵攻の結果、フィンランドが中立路線を放棄してNATOに加盟し、スウェーデンも承認待ち。さらにはNATOの東京事務所設置案まで出ており、ロシア包囲網が形成されてしまった。
核兵器に頼るプーチン
中国の存在もロシアにとっては実に厄介だ。味方のような顔をしているが、G7広島サミットに対抗して5月に西安市で『中国・中央アジアサミット』を開催し、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの5カ国首脳を招待した。いずれも旧ソ連を構成していた国々で、中国が露骨に属国化を進めている。
ロシア国内外が「プーチン後」を見据える中、当人は5期目を目指し、来年3月の次期大統領選に出馬する意欲を見せている。
「プーチン陣営は、秋に出馬表明する方向で準備を進めている。最低でも現在、ウクライナで実効支配している地域を確保したまま選挙戦に臨みたいが、最もまずいのは戦争で勝てずに弱い姿を見せることだ。そのときは出馬が難しくなるどころか、ウクライナ侵攻の全責任を押し付けられ、国際刑事裁判所に突き出されることも考えられる。戦況がいよいよ不利になった場合、プーチン大統領は手段を選ばないだろう」(大手紙外信デスク)
もちろん、プーチン大統領が頼るのは核兵器。すでにウクライナに接するベラルーシへの配備を進めている。プリゴジン氏は「プーチン、ショイグ、ゲラシモフが、ベルゴロド州に核爆弾を落とすのではないか」と警告を発している。
「ベルゴロド州は反プーチンのロシア人義勇兵が蜂起している地域で、ロシア領内であるため核攻撃を阻止することが難しい。ロシア本土への侵攻を遮断する狙いで、勝てないと判断したプーチン氏が戦術核を使う可能性は一段と高まっている。国際社会の非難にさらされても、敗戦を受け入れて失脚するよりはよほどましだと考えるだろう」(前出・軍事ジャーナリスト)
窮地の独裁者は「核なき世界」とは逆方向に進もうとしているようだ。
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