蝶野正洋 (C)週刊実話Web
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蝶野正洋『黒の履歴書』~マスコミが報道すべきこととその責任

物騒な事件や自然災害など、さまざまなことが次々に起きていて落ち着かない。政界や芸能界でも大きな動きが続いているから、テレビのニュースや週刊誌などのメディアは、かなり目まぐるしく報道している。


そのぶん事件の続報や、より詳しい情報がなかなか出てこないのが気になる。立てこもり事件や未成年犯罪などの動機、スキャンダルの真相などを掘り下げていく前に次の事件が起きてしまうので、マスコミも追いきれないのかもしれない。


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ジャニーズの性加害問題や市川猿之助さんの事件も、周辺からの情報は集まるけど、事件の当事者や事務所などからの声はなかなか出てこない。


ただ、一連の報道の印象で言えば、いまの日本のマスコミは他がやらなかったらやらない。でも、どこかが始めたら雪崩を打つように報じる。


昔は出版社やテレビ局によって派閥があって、反目の業界に対してはバーンと叩きに行って、自分たちと関連性のあるところには口を出さない、みたいな傾向があったけど、いまはそのあたりが横一線になっていて、勝手に忖度して周りの様子を窺いながら青信号が出るまで止まってしまう。


プロレスだって、昔は同じ試合、同じ情報でも、各スポーツ誌と専門雑誌で取り上げる部分が全部違っていて、それぞれが脚色しながら競い合っていた。東スポは、さらに見出しの最後に「?」をつけて、飛ばし記事を作ったりしてね。


でも、それも途中から急に変わったという感覚がある。たぶん記者も新しい世代になって、飛ばしでスクープを出すくらいなら、確実な情報をみんなで一斉に出したほうがいいということになったんじゃないかな。でも、そういう横一線を突破しないと、何も変わらないんだよね。

昔ながらの繋がりなどを変えていく…

ちょっと話がずれるかもしれないけど、昔のプロレス興行は、いまで言う反社会的勢力とズブズブだった。

25年ぐらい前に、千葉のあたりで興行を手掛ける勢力が4~5社くらいあって、そこで、あるプロレス団体が大会を開催することになったんだけど、どこから挨拶すればいいか分からないから、とりあえず全部に招待券を配ったらしいんだよ。


そうしたらリングサイドに各派閥の代表がズラリと並んでしまい。お互いに威嚇して、会場で大喧嘩が始まってしまった。それから、もうその地域では怖くて興行を打てないってことになってたんだよ。


俺が新日本プロレスの責任者をやってるときに、危ないといわれているその地域で興行をやってみようということになった。まず警察と消防に挨拶に行って「あとどこに行けばいいですか」と聞いたら、「地回りには挨拶しなくていい」と言われた。「それで何かトラブルになったら遠慮なく警察を呼んでください」とね。


それでそのまま大会を開催したんだけど、何の問題もなかった。それ以降はどのプロレス団体も問題なく興行を打てるようになった。


昔ながらの繋がりや、しきたりというのは確かにあるけど、誰かが抜け出さないと変わらない。


ジャニーズ問題も、海外メディアが忖度なく報じたことで、その後の動きが出てきた。あとは、その流れを止めないこと。マスコミには責任を持って最後まで真相を報道してもらいたいね。
蝶野正洋 1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。