岸田文雄首相の地元・広島で行われた先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)は、ウクライナのゼレンスキー大統領も参加する中、侵略国ロシアに対しG7の結束を演出し、成功裏に終わった。「衆院解散は間違いなく行われる」と、永田町の誰しもが思っていたその矢先に発覚したのが、首相公邸での岸田首相のドラ息子らによる〝組閣ごっこ〟だった。美人妻と評判の裕子夫人が批判される事態にまで発展し、岸田一族は没落の兆しを見せ始めた。
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「さすが、外交の岸田だ!」
G7広島サミットが幕を閉じたのを受け、岸田首相周辺は手放しでそう喜んだ。4月に行われた衆参5補欠選挙は自民党の4勝1敗に終わり、それに続くサミットの成功で、首相は「向かうところ敵なし」といった状況だった。
外交の岸田。安倍政権下で外相を長く務めたがゆえに、そう呼ばれることは多い。しかし、外相時代は安倍晋三首相(当時)の影に隠れ、存在感はまるでなかった。自民党議員の多くが心の底から「外交の岸田」と思っているわけではない。
「ほめるところがあまりないため、あえてそう吹聴して、持ち上げているのが実態に近い」(政界消息筋)
そんな岸田首相も、いよいよ運に見放されたようだ。岸田一族が昨年12月に首相公邸で忘年会を開いたのは周知の通り。長男で政務秘書官(6月1日付で辞職)の翔太郎氏は、公邸の赤じゅうたんが敷かれた階段で親族と記念撮影に興じ、「我こそは将来の総理大臣」といわんばかりに、前列中央に立つハシャギぶりだった。
翔太郎氏は慶応大学法学部政治学科卒の32歳。今年4月、慶大法学部政治学科に入学した女優の芦田愛菜と同じく、気分はまだ大学生なのかもしれない。
身内ばかりだけでなく…
「親族の1人が階段で寝そべったり、首相が記者会見で使う演説台で男女がポーズを取ったりしている写真も『週刊文春』に掲載された。さらに『フライデー』では、公邸での岸田首相も入った親族集合写真…。公邸で大勢の親族を招いて〝ドンチャン騒ぎ〟した末に、写真が流出するというのは危機管理の甘さを露呈する、まさに前代未聞の事態と言っていい。翔太郎氏を即、更迭しなかったのは自分も一緒になって浮かれていたからだろう。岸田首相の裕子夫人が長男の更迭を認めなかったという情報もある」(全国紙政治部記者)
いずれにしても、「夫婦そろって親バカ」と揶揄されても致し方ない。
裕子夫人は、昭和の香りを漂わせ、少し垂れ目で「なかなかの美人」(自民党中堅議員)と永田町でもっぱらの評判である。昨年5月に米国のバイデン大統領が来日した際には着物姿でお茶を振る舞い、おもてなしをしてみせた。東京女子大学文理学部日本文学科を卒業し、英語は堪能。広島の不動産会社の社長令嬢で、品があり育ちの良さが窺える。
だが、今年4月にバイデン氏のジル夫人に招かれ単独で渡米し、ファーストレディー外交を展開したことに対しては、ネット上で「公費で米国を訪問し、権力の私物化だ」と批判された。
岸田首相が頭を悩ませているのは、身内の話だけではない。次期衆院選をにらんだ自民、公明両党の候補者調整をめぐるバトルは落としどころが見えず、公明党は一歩も引かない構えだ。
小選挙区の10増10減に伴い、東京では選挙区が5つ増えるため、公明党は比較的支持者の多い東京28区(練馬区東部)で候補者を擁立する方針だった。だが、自民党がこれを容認しなかったため、公明党側は激怒。28区の擁立を断念するとともに、東京の自民党候補者に推薦を出さないことを決定したというのが、事の顛末である。
G7はゼレンスキー効果で奏功
自民党側の交渉役は東京都連の萩生田光一会長と高島直樹幹事長。2人とも大柄で、態度も横柄であることで知られている。公明党の西田実仁選対委員長は経緯を文書でまとめており、自民党都連に対し「『不誠実な対応』はどっち?」「大きな失望を禁じ得ない」などと記している。公明党の支持母体である創価学会にしてみれば、2人はもはや〝仏敵〟だろう。
自民党内で非主流派に甘んじている菅義偉前首相は、萩生田氏と良好な関係にある上、創価学会の〝政治部長〟といわれる佐藤浩副会長とも太いパイプを持つ。
「2021年の自民党総裁選で再選出馬断念に追い込まれたことへの、岸田首相に対する恨みは忘れていないため、自公対立の仲介に入ろうとはしていない。首相が悶絶しそうになっているのを、外野からほくそ笑んで見ているのかもしれない」(政界関係者)
5月21日投開票の東京都足立区議選で、自民党は現職5人を含む7人が落選し公明党が第1党に躍り出た。勢いに乗る公明党に強気の姿勢を崩す気配はない。1999年の連立政権発足から24年。両党の関係は最大の危機を迎えている。
「G7広島サミットが幕を閉じたときには、ゼレンスキー大統領を交えての派手な政治ショーが奏功し、衆院選での楽勝ムードが漂った。だが、〝ドラ息子〟翔太郎の一件で支持率はガタ落ち。公明党にも候補者調整で不信感を抱かれ解散どころではなくなった」(同)
6月21日の通常国会会期末に向け、立憲民主党が内閣不信任決議案を出した場合、岸田首相が解散で対抗するというシナリオが少し前までは考えられていたが、その余裕は現在はない。
岸田一族の〝身から出た錆〟ゆえ、解散という伝家の宝刀が錆ついたのは自業自得としか言いようがない。
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