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「5月だけで震度4超が17回」大地震への不吉な予兆?関東に波及する”負の連鎖”とは

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全国的に大きな地震の発生が増えている――ここ最近、そう感じている人は多いのではないだろうか。確かにこの5月は、国内で震度4以上の地震が合わせて17回に上り、5弱以上も6回に及んだ。これは、あの熊本地震M(マグニチュード)6.5、震度7が起きた2016年4月以来の多さなのである。

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防災ジャーナリストの渡辺実氏が語る。

「恐ろしい話ですが、強い地震がこれほど多いと、将来的な発生が確実視されている首都直下型、南海トラフ地震など、巨大地震に向けて地下が着々と準備を進めているんだと、ひしひしと感じます」

5月に発生した強い地震を振り返ると、石川県能登半島の珠洲市では5日に震度6強(M6.5)の揺れを観測。同日には震度5強(M5.9)の地震も起きている。また、5月11日には千葉県南部を震源とする地震が起こり、木更津市で最大震度5強(M5.2)の揺れを観測した。地震活動が活発な状況は下旬になっても続き、26日には千葉県東方沖を震源とする地震が発生。銚子市などでは震度5弱(M6.2)の揺れが観測された。

科学ライターが言う。

「いずれも、フィリピン海プレートが関連している地震です。一方、13日には鹿児島県のトカラ列島近海で震度5弱(M5.1)の地震が発生。22日には伊豆諸島の新島・神津島付近で震度5弱(M5.3)の揺れを観測しました」

ちなみに、こうした地震の中でもとりわけ専門家らが注目しているのが、トカラ列島の地震だという。なぜなら、ここで地震が頻発すると大地震が起きるという「トカラの法則」が存在するからなのだ。

南海トラフ地震を誘発する恐れ

科学誌の編集者が言う。

「屋久島と奄美大島間にあるトカラ列島は、東側でフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に潜り込み、そのひずみを解消するため以前から微小な群発地震が多かった。科学的根拠は薄いとされるものの、ここで大きな揺れを感じる地震が増えると、国内で大地震が起きる傾向が高いといわれているのです」

実際、11年3月に起きた東日本大震災(M9、最大震度7)のときには同年1月13日〜3月7日の間に27回、16年4月の熊本地震の際には、同4月1日〜8日の間に9回もトカラ列島で地震が起きていたという。

「また、00年に起きた鳥取県西部地震(M7.3、最大震度6強)、03年の十勝沖地震(M7.1、同6弱)、熊本地震と同じ16年発生の茨城県北部地震(M6.3、同6弱)の際もトカラ列島では地震が頻発していた。そのため、今回も近いうちにM7級の地震が起きることが懸念されているのです」(同)

中でも危惧されているのは、南海トラフ地震だという。太平洋沿岸に延びる南海トラフを震源とするこの大地震は、トカラ列島の地震と同じく、フィリピン海プレートの影響で発生することが分かっているからだ。

「しかも、南海トラフ地震は今後30年以内の発生率が70〜80%といわれ、もはやいつ起きてもおかしくない状況。1944年の昭和東南海地震(M7.9)、1946年の昭和南海地震(M8)の発生から約80年が経過していることから、専門家らも警戒を強めているのです」(前出・科学ライター)

もっとも、気がかりなのはトカラ列島や各地で頻発する地震がフィリピン海プレートを刺激し、南海トラフ地震を誘発した場合、どんな被害が想定されるのかということだろう。

南海トラフ全域で地震が発生した場合、東海から近畿、四国、九州までの地域が被災することは確実だが、中でも甚大な被害を受けるのは、静岡県だといわれている。2013年に内閣府が発表した被害想定によれば、同県の死者数は10万9000人。地震で想定される全死者数32万人のおよそ3分の1を占めているのだ。

首都直下型地震も近い…

武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏がこう話す。

「フィリピン海プレートの影響で南海トラフ地震が起きた場合、富士山噴火の引き金となる可能性もある。そのうえ、静岡県には海側に浜岡原発がある。何事もなければいいが、巨大地震によって原発が損傷する可能性も否めないのです」

懸念される材料はこれだけではない。富士山の南東を流れる富士川の河口付近には「富士川河口断層帯」と呼ばれる活断層帯が延びている。この断層は、南海トラフにつながる駿河トラフで発生する海溝型地震に連動することが多いが、その地震の発生率は30年以内に10〜18%――しかもM8クラスの巨大地震が想定されているという。

つまり、南海トラフ地震に誘発されて駿河トラフを震源とする地震が起きれば、この活断層が揺れる可能性は大。富士山噴火の恐れがさらに高まり、その〝負の連鎖〟は関東圏へと波及していく公算も高いのだ。

島村氏が続ける。

「この5月には首都圏でも震度5弱以上の大きな揺れが2つも起きた。いつになるかは分からないが、首都直下地震が近いのは間違いない。場合によっては南海トラフ地震と連動する可能性や、それを引き金に起きる可能性もあるのです」

また、前出の渡辺氏は「地震学者から聞いた話では、阪神・淡路大震災の起こる前も兵庫県内では微小な地震が多発していた」と言うが、わが国が巨大地震の発生に近づきつつあることは動かし難い事実。防災の備えを怠らないことが肝要なのだ。

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