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ワイドショーが日本を滅ぼす!「コロナ恐怖」扇動の”罪”を識者が斬る

ワイドショーの発信を真に受けて…
ワイドショーの発信を真に受けて…(画像)Krakenimages.com / Shutterstock

2月2日、政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて発令していた緊急事態宣言の延長を決めた。栃木県を除く10都府県は3月7日まで、1カ月延びることになる。

そもそも政府が年明けに緊急事態宣言を再発令した理由は、主に2つある。感染者が急増してきたことと、医療崩壊するのではないかとの危機感からだ。

ドラマ『全裸監督』のモデルとなった村西とおる監督は、「宣言を出す必要はなかった」と言い切る。

「例えば、感染者や犠牲者が、日本の100倍以上の国なら仕方ないですよ。でも、日本はどうですか。まだまだ少ないのだから、日本に生まれてよかったねと、感謝しなければならないのです。10代の死者はいない。気をつけるべきは30代以上で基礎疾患のある人、60代以上のおじさま、おばさまだけ。死なない病気は怖くないの。前回の宣言だってどんな効果があったのか検証されていない。インフルエンザのときは宣言も自粛要請もなかったでしょ」

日本の新型コロナの累計感染者数は37万人超、死者数は5000人超となった(1月27日現在)。冬になって感染者が急増しているのは事実だが、それは全世界的な傾向だ。そして、感染者が増えてきたとはいえ、村西監督が指摘するように、日本におけるコロナ死者は、いまだ欧米に比べて圧倒的に少ない。

人口100万人あたりの死者数(札幌医大フロンティア研ゲノム医科学調べ、1月27日現在)は、イギリス1503人、アメリカ1296人、イタリア1437人、フランス1142人、ドイツ650人、ブラジル1035人、メキシコ1191人、日本42人、韓国27人となっている。イギリスやイタリアは日本の35倍超の致死率だ。

自粛に伴う“副作用”の話

精神科医の和田秀樹氏も宣言再発令は疑問だという。

「例年のインフルエンザの感染者数や死亡者数は、現状のコロナのそれと規模感が近い。また、インフル関連死は例年1万人、通常の肺炎死も毎年約10万人となっている。緊急事態宣言の再発令は、思考のフレームワークが感染者数を重視しているからです。例えば、シンガポールの場合、感染者数は多いけど死者数がすごく少ない。PCR検査を増やせば患者数は多くなるし、今は唾液を送れば診断してくれる医療機関が増えてきた。感染者数の枠組みで物事を考えることをやめ、重症者や死者数をベースに考えるべきです」

さらに和田医師は、緊急事態宣言がもたらす多くのマイナス面を強調する。

「高齢者は外出が減って足腰が弱くなるし、認知機能が落ちる人がたくさんいる。人としゃべることが減り、うつ病は悪化する。脳内で働く神経伝達物質の一つ、セロトニンが減るからです。セロトニンは感情や気分のコントロール、精神の安定に深く関わっている。セロトニン不足になると、心のバランスを保つことが難しくなり、ストレス障害、睡眠障害などの原因になる。そして、生活苦による自殺者も増えている。自粛に伴う副作用の話をせず、『亡くなった人は気の毒』で済ませている。例えば、ワクチンを打って万が一亡くなれば、それなりの補償が受けられるけど、自粛の副作用で亡くなっても何の補償もない」

緊急事態宣言は、特定の業種に大きな悪影響を与えることも特徴だ。

それは、サービス業である。『新型コロナ―専門家を問い質す』(光文社/共著:小林よしのり)の著作がある作家の泉美木蘭氏はこう話す。

「宣言は飲食店が自粛のターゲットになっており、失業、廃業、倒産してくれと死刑宣告しているようなものです。しかし、NHKの報道番組によれば、東京都の感染経路は『分からない(不明)』が7割。家庭内感染と院内感染が残り3割のほとんどで、飲食店はわずかでした」

生活苦による自殺者の増加

新型コロナの犠牲者は病気にかかって亡くなる人だけではない。緊急事態宣言や一連の自粛要請によって失業した人、残業代が減って生活が苦しくなった人、親の収入が減って学業を断念した若者、就職できない大学生などさまざまだ。感染はしなくても、彼ら、彼女らもまた確実に新型コロナの被害者である。そして、最悪の被害者は生活苦による自殺者とその家族だ。

「失業率が1%上がると、2300人から2400人の自殺者が出ると長年のデータで出ている。ワクチンや治療薬ができれば多くの人が救われるけど、経済はそんなに簡単に回復しない。失業率が下がって一昨年並みに戻るには4~5年かかる。その間、数万人の自殺者が出るのではないでしょうか」(村西監督)

日本医師会が昨年12月16日の記者会見に用意したリリースには、「失業率が1%増えると自殺者総数が1000~2000人増えるとも考えられ、コロナ感染そのものによる死亡者数より数では大きくなることが想定される」と明記されている。具体的な数字には諸説あるものの、失業率が増えることで自殺者が増えるという因果関係は、今や常識だ。

昨年の自殺者数は、6月までは前年同期に比べ減少傾向だったが、7月以降は増加に転じ、7月が1840人、8月は1889人、9月が1828人と3カ月連続で1800人を超え、前年を大幅に上回った。

そして、昨年10月の全国の自殺者数は、前年同月比で600人以上多い2158人だった。エコノミストの島澤諭氏の推計によれば、この2158人のうち、新型コロナ禍で倒産や失職などを直接の原因とする自殺者が289人、新型コロナ禍で精神的に追い込まれたり、同居人から暴力を受けたりなど間接的な原因とする自殺者が196人、合計485人だそうだ。

「例えば、死者数1000人の病気があったとして、その治療薬の副作用で3000人が死んだとすれば、それがいかに馬鹿馬鹿しく、理不尽なことか分かるだろう。なお、生活苦の自殺を抑えるために、国からの各種給付金も多少は効果があるものの、家に閉じこもることでセロトニンが減っている場合は、なかなかそれで安心できないという問題がある」(和田医師)

ワイドショーの発信を真に受けて…

昨年4月に緊急事態宣言が発令されたとき、ジャーナリストの青木理氏は「野党やメディアが『早くやれ!』となったのは健全じゃない」とテレビで発言していた。しかし、今回の再発令も新型コロナを実態以上に怖がる人が増えてしまったためであり、原因の一つにはワイドショーによる連日の煽りがある。

村西監督と泉美氏が、その代表に挙げるのが『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)のコメンテーター・玉川徹氏だ。

「玉川氏は、警鐘を鳴らすためにあえて過剰に不安を煽ってきたという趣旨のことを発言していた。彼の発言を真に受けて、どれだけの人が大変な目に遭っていると思っているのか」(村西監督)

「女性の自殺が増えているという話が出たときに、彼は『(自殺の原因は)健康問題がトップであり、経済苦ではなく体の問題だ』と言いました。しかし、健康問題というのは心の健康のことで、うつ病やアルコール依存症など、精神疾患のことなんです。明らかにコロナ自粛で、サービス業の非正規の女性たちは失業して困窮している。食いつなぐために、昼間の仕事がしたいという相談件数が増えているが、なかなか見つからない。そうした現実は番組に都合が悪いので、健康の問題だとすり替えているわけです」(泉美氏)

“無為無策”日本医師会の罪

泉美氏によると『報道ステーション』(テレビ朝日系)で、日本赤十字医療センターの出雲雄大医師が「新型コロナの指定感染症を見直し、入院は重症者だけにして無症状や軽症者は自宅療養にすべき」と提言したところ、病院側はそれ以後、取材を受けないようにと同医師に圧力をかけてきたという。

「現場の医師が思っていることを封じるような動きが出てくるというのは、病院に抗議の電話をするような視聴者がいたのではないでしょうか。そういう空気をテレビがつくっている」(泉美氏)

和田医師は、コロナ騒動前は『TVタックル』(テレビ朝日系)ほか多数のテレビ出演があった。しかし、最近はめっきり出演がなくなった。

「これまでは、経済誌に寄稿するとテレビから何らかの反応があったのだけれど、今は全然お声がかからない。自粛の危険性やコロナは怖くないと書いているから、そんな人間を出したら何を言われるか分からないと、向こうは思っているのかもしれないけど」(和田医師)

緊急事態宣言再発令の根拠となっている「医療体制の逼迫」だが、現状、指定感染症第2類相当とされている新型コロナには、致死率5割超のエボラ出血熱並みの対応を求められる。しかし、前出の出雲医師が提言するように、インフルエンザと同等の5類扱いにすれば、一般の病院でも診察できるようになり、病床の逼迫など瞬く間に解消する。それにもかかわらず、医療崩壊を叫び続けてきたのが日本医師会だ。

“医療崩壊危機”の実情

「冬になれば感染者が増えるのは分かっていたのだから、対策を打つことができたはずだ。昨年3月からの10カ月間、いったい何をやっていたんだ。ベッド数の3%しか使われていないのに、医療崩壊の危機だと叫んでいる」(村西監督)

「(医師会とは)緊急事態のときは民間病院も力を合わせ、役割分担で患者を受け入れようと話し合いをしておくべき立場の人たちのはず。そういう責務を果たさずに『われわれ医師は大変だから同情して。国民は自粛して、失業して』と言っている。消防士が『これ以上、火事を起こしたら火を消さないぞ』と言っているようなものです」(泉美氏)

厚労省の調査では、公立病院の約6割がコロナ患者を受け入れているのに対し、民間病院では2割程度にとどまっている。しかし、日本では全病院の7割が民間病院だ。1月18日に召集された通常国会で政府・自民党は、感染症法を改正し、患者の病床確保に向け、国や知事が病院などに患者受け入れを「勧告」できる規定を加えるとし、勧告に従わなければ医療機関名を公表できるようにするという。

一方、新型コロナ対策の特別措置法改正案では、営業時間の短縮などの命令に応じない事業者に対して、罰則(50万円を上限に過料を科す)を設けるとしている。飲食店を中心とした事業者には罰則規定を設けておきながら、病院側は病院名の公表だけ。バランスを欠いていないだろうか。

家族や従業員を守るため、あるいは経営破綻を避けるために、どうしても休業できない人もいるだろう。そうした人にまで罰則を使って強制し、生活を奪うことが許されるのだろうか。通常国会の論戦に注目したい。

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