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田中将大「楽天復帰」で石井一久監督に課せられた“絶対優勝”ノルマ

田中将大
田中将大 (C)週刊実話Web

日米通算177勝、ニューヨークヤンキースとの7年契約が満了してFAとなっていた田中将大投手の、東北楽天ゴールデンイーグルスへの復帰が決まった。これにより、今季のパ・リーグの勢力図が大きく変わりそうだ。

「パ・リーグの優勝候補を、ソフトバンクから楽天に変更したプロ野球解説者もいます」(スポーツ紙記者)

順位予想だが、決して先走った話ではない。ヤンキースでの7年間で6年連続2ケタ勝利を挙げ、常に先発ローテーションの主軸を担った〝バリバリのメジャーリーガー〟が加わったのである。しかも、力が衰えたのではなく、契約がまとまらなかったための帰還だ。楽天が優勝候補の筆頭に挙げられるのも当然だろう。

しかし、喜んでばかりはいられない。

「ヤンキースからFAとなった田中に対し、『交渉の余地アリ』と分かった時点で、オーナー案件になったようです」(球界関係者)

今回の帰還交渉では、〝特例〟も多かった。

立花陽三球団社長が、オンラインではあるものの、田中サイドと直接話をしていた。三木谷浩史オーナーが自ら説得したのかどうかは定かではないが、総力を挙げて帰還交渉を進めていたのは間違いないようだ。

「通常、選手の補強は渉外担当者に一任されるものです。その総指揮を執るのが、ゼネラルマネジャーでもある石井一久監督で、重役クラスが出てくるなんてことはあり得ません」(同・関係者)

楽天グループがもくろむマー君効果

オーナー案件説、球団トップが自ら交渉したとなれば、その先にあるのは「優勝」の二文字だけ。田中を得て、ソフトバンクの連覇を許したとなれば、石井監督兼GMは間違いなく、クビだ。

「石井監督兼GMが田中獲得について最初にコメントしたのは1月18日。新人選手の合同自主トレを見守って、選手のキャンプでの一、二軍を振り分けるスタッフ会議を行った後です。田中とメジャー各球団との交渉はかなり長引いていましたし、この時点である程度の交渉は済んでいたのかもしれません」(地元紙記者)

石井監督兼GMは周囲に、こう漏らしていたそうだ。「考える時間を(田中に)渡せた」と――。

楽天の〝本気交渉〟が米メディアでも取り上げられるようになったのはその後だ。「考える時間」発言からも、18日前にアタックしていたと見るべきだろう。

「連日、スポーツメディアは『楽天 田中』を伝えています。本社グループへの波及効果も期待できます。三木谷氏がオーナーを務めるサッカーJ1のヴィッセル神戸に、サッカー界のスーパースター、イニエスタが入団した2018年、その経済効果は神戸周辺だけでも80億円と試算されました。田中がヤンキースに移籍した14年、『日米で347億円の経済効果』とも伝えられました」(同・記者)

実業家・三木谷氏自らが獲得に乗り出したと伝えられる理由は、このへんにもありそうだ。

東京五輪の「侍ジャパン」入りも期待

「石井監督兼GMの責任は重大です。チームには田中のほか、通算144勝の涌井秀章、同132勝の岸孝之、同85勝の則本昂大がいます。大学ナンバーワン左腕の呼び声も高い早川隆久、先発転向2年目の松井裕樹も控えており、この先発スタッフで負けるはずがありません」(ベテラン記者)

また、田中の去就問題を追っていた米国メディアも、次のように伝えていた。

「楽天帰還後は『中4日』で先発するのではないか。米再挑戦も確実なので、わざわざ日本式の『中6日』に戻すことはない」

中4日なら、13年の24勝超えも夢ではない。

「田中の帰還は、最高の戦力補強に違いありません。それでも、石井監督兼GMへの『優勝への重圧』には変わりはありませんが、忘れてはならない点もあります。田中効果を期待しているのは、楽天だけではないということ。田中には、侍ジャパン入りも期待されています。東京五輪での金メダル獲得を確実にするためです」

田中帰還の一報が伝えられた28日午後、NPB内の関係者から、そんな待望論も出ていたのだ。

「東京五輪のため」と言われたら、石井監督兼GMも異論を挟めない。しかし、指揮官としての頭痛のタネはそれだけではなさそうだ。

「田中は6年連続2ケタ勝利を収めるなど、輝かしい実績を持つ投手です。でも、メジャーでは80球から100球をメドに投げてきたので、試合中盤のスタミナが心配です。メジャーよりもひと回り小さいとされるNPB公式球への感覚が戻るまで、多少の時間は必要でしょう」(前出・関係者)

メジャーで変化球投手に変貌した田中将大

石井監督兼GMは「日本球界復帰」の経験者でもある。先発ローテの間隔、体力、ボールの感触を取り戻すため、十分にサポートしてやらなければならない。

そう考えると、田中が目覚ましい成績を残せなかった場合、たとえ優勝できたとしても、石井監督兼GMにはダメ出しがくだる。新人・早川の教育、先発投手として松井も一本立ちさせなければならない。課題は山積みなのだ。

「田中の投げる試合はテレビ中継も入るはず。概算で、仮にコロナ禍が収まり、『楽天生命パーク宮城』に3万人の観客を入れたら、1カード(3試合)で10億円以上の収益が見込めます。背番号18のユニホーム、球場内での飲食、テレビ放映料、田中の推定年俸9億円はすぐに回収できるでしょう。もっとも、田中が勝ち続けて楽天が優勝しなければ、先細りするでしょうが」(前出・記者)

カネの成る木…。立花球団社長らが交渉に乗り出した理由が分かる。

「球宴、交流戦でも、田中は引っ張りだこ。心配な点を挙げるとすれば、ここ2、3年の田中はストレートの威力ではなく、ボールを小さく動かして打ち損じを誘うスタイルに変わったこと」(米国人ライター)

田中の後を任されたリリーバーも責任重大だ。石井監督兼GMは帰還後、慎重な発言に徹してきたのは、こうした事情も影響しているのだろう。

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