島田洋七 (C)週刊実話Web
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大先輩が言う「人生とは」…~島田洋七『お笑い“がばい”交遊録』

小堺一機君が司会を務めていた『ライオンのごきげんよう』という番組があったでしょ。あの番組に何度か出演して、年間で一番面白いトークの大賞を何度かもらったんですよ。


小堺君の結婚披露宴にも呼ばれましたね。小堺君は萩本欽一さんと同じ浅井企画所属。大先輩に失礼があってはいけないから、結婚披露宴当日は早目に会場に到着したんです。席次表の6人がテーブルを囲む席に座っていると、隣に座ったのが萩本さんだったんですよ。俺は、自分の席しか確認していなかったから、隣に誰が座るのか知らなかったんです。


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大先輩の隣で緊張して、何を話せばいいか分からないでいると、「元気? 今日は忙しい中、小堺君のために来てくれてありがとうね。それにしても君は喋りが達者だね」と萩本さんから声を掛けてもらった。披露宴が始まっても、視聴率男の萩本さんに何を話せばいいか迷っていたんです。


次の瞬間、俺の口から出た言葉は「人生ってなんですか?」。そんなこと普段は聞かないですよ。萩本さんは「君もそういうこと考えちゃうんだ。人生はね、間だよ」。間と言われてもコントや漫才のことしか思い浮かばなくてね。「人生は間」という言葉が頭に残ったまま、披露宴は進行していったんです。

「僕のロブスターないよ」

披露宴だといろんな料理が運ばれてくるでしょ。パンを3つ食べて、他にもいろいろ食べていると、ロブスターが出てきて平らげた。隣の萩本さんはあまり食べていない様子で、「ロブスター食べる?」と勧められたんです。大先輩からそう言われたら断れないでしょ。お腹いっぱいだったから、間を空けて食べると、「君はよく食べるね。2人前食べているんじゃない」。萩本さんに勧められたから食べているんだけどな、と思っても口にできない。

しばらくして萩本さんが挨拶する段になった。「芸能界は、芸も真面目さも必要。でもこの世界はなかなか売れないから、自分の番組を持てるのは素晴らしいことだよね」と話していた。


萩本さんのスピーチを聞いて、美空ひばりさんに言われた言葉を思い出しましたね。


「売れてよかったね。この世界はなかなか売れないからね。売れているうちに貯金をしておきなさい。芸能界は、いつどうなるか分からないからね」


やはり、萩本さんや美空さんくらい売れた人は同じようなことを考えているんだと思いましたね。それ以来、若手には同じようなアドバイスを俺もするようになりました。


挨拶を終えた萩本さんは席に戻ると独り言を言っている。「ロブスターは誰が食べたのかな。後で食べようと思ってたのに」。俺にくれたじゃないですかともツッコめないでしょ。すると通りかかったボーイさんに「僕のロブスターないよ」。ボーイさんは「申し訳ございません。すぐにお持ちします」と即答。運ばれてきたロブスターを食べながら、「これ美味しいんだよね。君はロブスター好き?」、「好きです。もう最初に食べました」と答えましたよ。


今考えると、萩本さんもロブスターが好きだったけど、俺が美味しそうに食べていたからくれたんでしょうね。ホンマに面白い人でしたね。
島田洋七 1950年広島県生まれ。漫才コンビ『B&B』として80年代の漫才ブームの先駆者となる。著書『佐賀のがばいばあちゃん』は国内販売でシリーズ1000万部超。現在はタレントとしての活動の傍ら、講演・執筆活動にも精力的に取り組んでいる。