蝶野正洋 (C)週刊実話Web
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蝶野正洋『黒の履歴書』~子供たちをネット犯罪から守るには

東京・銀座の高級時計店で起きた強盗事件が波紋を広げている。白昼堂々、仮面をつけた4人組の男が大通り沿いの店舗に押し入り、店員を刃物で脅した上、ショーケースを割って時計を強奪。店の前に止めていたワンボックスカーに飛び乗って逃走するという大胆な犯行で、居合わせた通行人が、その様子を撮影した動画も出回った。


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そのまま3キロほど逃走して住宅街に迷い込み、クルマを乗り捨てて逃げたところを、住居侵入の疑いで逮捕された。犯人は16歳~19歳の少年で、高校生も含まれていたという。


荒っぽいけど計画性のない稚拙な犯行だった。この少年たちはネットを介して集められたようで、高校生を除く3人は地元・横浜の仲間だったそうだ。バックに指示役の人間がいた可能性もあると思う。


指示役がいた場合、どんな関係性なのかは分からないけど、とにかく少年たちは「やれ」と言われたら、やってしまう。昔は脅されたり、暴力で支配して言うことをきかせるパターンが多かったけど、この少年たちはそんな深い関わりもない上役の指示通りに動いていたように見える。逆に言えば、この指示役の命令だけが動機だし、支えになっていたんじゃないかな。


少年たちも、楽して稼ぎたいという動機はあったと思う。それでネットの闇バイトみたいなところで引っかかってしまったんだろうけど、まさか強盗をやろうとまでは思ってなかったはず。でも、誰かに指示されると目的を得た気になって、深く考えずにやってしまうというのが人間の恐ろしいところだよ。

親の知らないところで…

さらにこの種の事件のポイントは、何も知らない子供たちがネットを介して危ない人間と簡単に繋がってしまうということだよね。

昔はヤバい連中というのは、見た目も分かりやすかったし、しかも特定のエリアにたむろしていた。だから、そこに物理的に近づかなければ、巻き込まれることもなかった。


周りの大人たちも危険度を認識して共有できていたから、子供に「あの連中と関わっちゃダメだぞ」とか、「あの地域には行くな」などと注意ができた。


でも、スマホで相手が見えないとなると、これがなかなか防げない。家に閉じ込めておいたって、気づいたら危ない連中と関わっていて、染まってしまう。これは怖いよね。


本来、危ない人かどうかというのも、会わなきゃ分からない部分はある。俺も若い頃は不良と呼ばれている人と向き合ってみて、「これは本物のワルだな」とか、「こいつの上にはまだボスがいるな」と肌感覚で理解していった。そういう経験が大人になってからもいろいろ役に立つんだけど、いまはそういう機会もあまりないだろうね。


いまはボッタクリも、ほとんどがマッチングアプリ経由になっているそうだ。マッチングして会ったら、私の知ってる店に行こうと誘われて、高額請求されてしまうというケース。街にいる客引きだったら近づかないけど、アプリで出会った女性のことは初対面でも信じてしまう。これもスマホの弊害だよ。


誰もがネット依存になって、知ってる人、知らない人の境界線が曖昧になってしまっていることに、もっと注意したほうがいいね。
蝶野正洋 1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。