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『イトヒキハゼ』京都府宮津市/宮津港産~日本全国☆釣り行脚

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

〽夏も近づく八十八夜〜

茶摘みの歌で歌われる八十八夜も過ぎ、少しずつ夏の兆しを感じるようになってまいりました。「キス釣りは八十八夜から」という言葉がありまして、これから夏にかけては、産卵に向け、浅場に入ってくるシロギス狙いが面白い時期になります。

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今回、「あんた、いつも小汚いドブばっかり行ってちゃダメよ。たまにはきれいな景色でも見ないと。ただでさえ小汚いんだから」と、誘いをいただいた仲間とともに、美しい景色を見がてら、好期を迎えるシロギスなんぞをのんびりと狙ってみたいと思います。

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

やって来たのは京都府宮津市。まずは釣りをする前に、仲間のご友人の案内で、日本三景の〝天橋立〟へ。初めての土地では、現地の方にご案内いただくというのは心強い限りです。「天気もいいですし、リフトで上に行ってみましょう」とのことでリフトに乗ると、初夏の爽やかな風がなんとも気持ちよく、周囲の山々の新緑の眩しいこと…。釣りなんて半ばどうでもよくなってしまいます。

しばし快適なリフトに揺られるうちに山頂のビューランドに到着。振り向けば天橋立の眺めは思った以上に素晴らしく、晴天の眼下に広がる景観を眺めれば、もう釣りなんて完全にどうでもよくなってしまいます。

ひとしきり素晴らしい景観を堪能し、「あとはなんか旨いもんでも食って帰ろうか」と言うワタクシに、「せっかくですから、旨いもんを食べながら竿を出しましょう」と、ご友人からの素敵な提案で案内されたのは、天橋立からほど近い宮津港です。「まだちょっと早いですが、夏にはキスも入ってきますから」とのことで、足場のよい岸壁から仲間と2人で、安物のコンパクト竿にてチョイ投げ開始です。

本命釣れず…作戦変更!?

イトヒキハゼ
イトヒキハゼ 日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

市販のキス仕掛けにエサのジャリメを付けて軽く港内にキャスト。竿を地面に置いて待っていると、早くもブルンッとアタリが出ます。幸先のよい展開に、ご機嫌で巻き上げた仕掛けに掛かっていたのはシロギス…ではなくイトヒキハゼでした。やや水深のある漁港などでは、お馴染みのキス釣りの外道です。まあ、そう上手くはいかんわな、とリリースをして再び仕掛けを投げ入れますが、程なくのアタリで釣れたのは、またもイトヒキハゼ。

日本全国☆釣り行脚
イトヒキハゼ 日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

まだ少し時期が早いのか、その後もシロギスは釣れず、竿先を震わすのはイトヒキハゼばかりです。こうなったら作戦は一つ。晩酌の肴の天ぷら種として考えればどちらも一緒(暴論)ですから、シロギス狙いではなくイトヒキハゼ狙いにしてしまえばよいのです。

入れ食いとまではいかなくても、ポツポツとアタリの出るイトヒキハゼ。テッポウエビと共生し、穴に暮らすハゼゆえ、時折ズポッと穴から引き出す感触も独特で、狙ってみればこれはこれで面白い釣りと言えるかもしれません。

日本全国☆釣り行脚
日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

ひとしきり楽しむうちに「差し入れを…」との声に振り向けば、ご友人の手には旨そうな焼きそばが…。ここ宮津ではご当地グルメとして〝カレー焼きそば〟が人気とのことで、3人で竿を眺めながらしばし昼飯タイム。岸壁で海を見ながらいただくカレー焼きそばは、ソース焼きそばとカレーのいいとこ取りといった感じで美味。そして、この長閑な時間がまたなんともいいものです。結局、その後も途切れずにポツポツとイトヒキハゼが釣れ、晩酌の肴には十分な量を確保できたことで、竿を納めることとなりました。

天ぷら旨しパックンチョ

さて、可愛らしい見た目ながらにすぐ噛みつくことで〝テカミ〟あるいは〝パックンチョ〟などと呼ばれるイトヒキハゼ。攻撃的な性質で、ハリから外そうとすると大きな口で噛みついてくるので、初めて手にするときには少しビックリするかもしれません。

そんなパックンチョを天ぷらにするべく背開きにすると、マハゼなどとは違って独特の金属臭といいますか、鉛臭さを感じます。サワラやカレイ類、オオスジイシモチなど、この手の臭いがする魚は総じて旨いことが多いもの。一般的に食用にされることはないイトヒキハゼも、ひょっとすると期待できるかもしれません。

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イトヒキハゼの天ぷら 日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

揚げ終えてアツアツを一口。サクッと香ばしい天ぷらは白身魚の旨味が強く、やはり美味。そして冷酒をチビリ。美しい天橋立の素晴らしき景観を思い返しつつ、たまにはこんな観光主体の〝ついでの釣り〟も楽しいものだなぁ、などと思うのでありました。

三橋雅彦(みつはしまさひこ)
子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。

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