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コロナ禍で最高売上! アイリスオーヤマ“急成長”の秘密~企業経済深層レポート

多くの企業が「新型コロナ不況」に苦しむ中、生活用品、家電の製造、販売を手掛けるアイリスオーヤマ(宮城県仙台市)が絶好調だ。同社が公表した2020年度決算速報によれば、グループ29社全体の売上高は過去最高の6900億円、前年比38%増という驚異的な数値をたたき出した。

全国紙経済部記者が、その好調ぶりを解説する。

「20年度決算はアイリスオーヤマ単体での売上高も過去最高となり、2185億円となる見込みです。これも対前年比36%増で、経常利益は2.2倍の270億円。しかも、特筆すべきは同グループの伸び方で、売上高が2000億円に達したと騒がれた10年度から、10年余りで約7000億円とは驚きです」

驚異的な成長の分析を進める前に、そもそもアイリスオーヤマとはどんな企業なのか見ておきたい。

同社は1958年に大阪で創業した小さなプラスチック成型品会社、大山ブロー工業所が前身だ。創業者の大山森佑氏が病魔に倒れると、息子で現会長の大山健太郎氏が19歳で代表に就任。その後、当時は木製だった農業用育苗箱をプラスチックにした商品がヒットし、宮城県仙台市にも製造拠点を設けた。

しかし、73年に発生したオイルショックで大打撃を受け、倒産寸前にまで追い込まれる。ここで同社は踏ん張り、園芸用のプランターやプラスチック鉢のヒットで業績を回復。その後、クリア収納ケースの大ヒットで今日の基盤を築き、91年に現社名へと改称した。

「会社の目的は永遠に存続すること」

「オイルショックでリストラを断行した教訓から、アイリスオーヤマは『会社の目的は永遠に存続すること。いかなる時代環境でも利益を出せる仕組みを確立すること』を企業理念に掲げています」(前出の記者)

これを受けて経営コンサルタントが、アイリスオーヤマが飛躍した要因を解説する。

「同社が急成長を続けている理由は、長年にわたり大山健太郎会長が培ってきた〝オーヤマ商売鉄則〟にある。その手法は大きく分けて3つあり、現社長で息子の大山晃弘氏も忠実に実践している。これらがうまく作用し合って、近年の成長に結びついていると考えられます」

では、3つの手法とは何か。同コンサルタントによれば、商売鉄則その1は「消費者目線」の商品づくりだという。

「きっかけは大ヒットしたクリア収納ケースです。休日の寒い日に釣りに行こうとした大山会長が、セーターを探そうとしたが見つけられなかった。その時、収納ケースが透明なら見つけやすいと、消費者目線でひらめいたそうです」(同)

優秀な中高年技術者を積極的に採用

商売鉄則その2は「スピードと低価格」だ。

「毎週月曜日には『新商品開発会議』が行われ、会長、社長ら出席のもと終日続く。内容は1人10分程度のプレゼンで、そこで認められれば即、商品化に向けチームが組まれる。まさに即断即決です」(同)

重要視されるのはSRG商品。Sはシンプル(簡単)、Rはリーズナブル(低価格)、Gはグッド(いいね)の3点要素だ。いくら優れた商品でも、必要以上に高額なら採用されないなど、商品開発のハードルは高い。

続いて商売鉄則その3は「人材力」だ。

「プラスチック加工メーカーが、なぜ家電業界に進出できたのか。そこにも明確な戦略がある。12年ごろ、海外勢との競争に敗れたパナソニック、シャープ、ソニーが大量のリストラに乗り出した。行き場を失った優秀な中高年技術者は、数千人とも言われたが、その技術者を積極的に採用し、家電に進出する戦力にしたのです」(同)

アイリスオーヤマが開発した魚も焼ける電子レンジ、絶妙なサイズの電気圧力鍋、2つの料理を同時に作れるホットプレートなどは、低価格に見合わぬ高い機能性を備えている。ホースを布団に差し込むだけで簡単に布団乾燥ができる『カラリエ』は、シリーズ累計販売台数400万台を超える大ヒット商品だ。

10年以上前にマスクの生産ラインを増強

昨秋はAI(人工知能)が番組に合わせ、最適な画質と音質に自動調整する4K対応液晶テレビを発売した。ご飯をよそえば即座にカロリーが表示される炊飯器など、「なるほど家電」「あったらいいな商品」を生み出したのは、豊富な人材力のたまものである。

10年に売上高100億円前後だったアイリスオーヤマの家電事業は、20年には1250億円と約12倍に伸び、全体の57%にまで達している。

ホームセンター関係者が言う。

「アイリスさんは常に10年先を見ている。今回のマスクにしても、実は09年に新型インフルエンザが猛威を振るったときに生産ラインを増強しており、そのノウハウがあったからいち早く動けたのです」

ただし、利益を追求するばかりではない。東日本大震災から10年を迎えるのを機に、静岡県に飲料水生産設備を開設した。もし災害が起きたとき、首都圏に飲料水を供給するためだ。

22年にグループ売上高1兆円を目指すアイリスオーヤマ。コロナ不況と言われる中、同社の姿勢から学ぶことは多い。

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