インタビュー・小田井涼平〜歌謡コーラスグループ『純烈』脱退とこれから〜
健康センターやスーパー銭湯など、時代を先取りした異色の営業活動で全国的な人気を誇った歌謡コーラスグループの『純烈』。小田井さんは昨年いっぱいで脱退したものの、その中でもトップクラスの人気を誇っていた。脱退の際、本誌で連載を持つ妻のLiLiCoさんからうれしい一言を掛けられたというが…。
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――小田井さんは、社会人として働きながら、モデルデビューされたそうですね。もともと芸能のお仕事に興味があったのですか?
小田井涼平(以下、小田井)「いえ、それが全然なかったんです(笑)。芸能人になりたいとか、ミーハーな気持ちはありませんでした」
――何かきっかけがあったんでしょうか?
小田井「もともと僕は関西出身なんですが、新卒入社後の赴任先が仙台だったんですよ。当然、現地に知り合いはいないので、まずは友達を探そうと。それで、どうせならイケてる友人を作りたかったのと、学生時代に『背が高いからモデルになれるよ』と言われたのを思い出して、モデル事務所に応募したんですよね」
――友達作りのためだったんですね。実際にモデルをやってみてどうでした?
小田井「自分としてはアルバイト感覚でしたし、これで食べていきたいとも思わなくて…。でも、社会人経験があることで重宝がられて、どんどん依頼が来ました。結局、友達作りどころじゃなくなっちゃって(笑)」
――その後、本業を辞めて、モデルを選んだ理由とは?
小田井「僕はずっと関西へ帰りたかったんですが、異動希望が5年経っても叶わず、辞めなアカンか…と。当時28歳だったのですが、30歳までは少し自由に過ごそうかと思い、モデルの仕事ならできるし、それで一度、東京に出たんです」
仮面ライダーで俳優デビュー
――東京では、藤村俊二さんの付き人をされてたとか。小田井「はい。ただ、実際にやらせてもらったのは上京直後の2日間だけで。短い間でしたが、いろいろと勉強させていただきました」
――当時の藤村さんの印象はいかがでしたか?
小田井「アグレッシブな方でしたね。ちょうど三谷幸喜さんの舞台に出演中で忙しそうだったんですが、夜にはご自身が経営していた青山のバー『オヒョイズ』に行って、お客さんのテーブル一つ一つを丁寧に回ってました。僕も一緒にウエイターをやらせてもらって」
――人柄が感じられますね。当時、藤村さんから何かアドバイスはありましたか?
小田井「いまだに忘れられないのは『男は40歳までは、どんどんお金を使った方がいい。ただ、40歳になったら、家族やその後を考えて貯金しなさい』という言葉。その頃、仕事を辞めて後ろめたい気持ちがあったので、『今はこのままの自分でいいんだ』と背中を押された気がしましたね」
――その後、藤村さんに会う機会はありましたか?
小田井「俳優を始めた頃に、『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)で偶然共演したんです。僕は結局、藤村さんの付き人にはならなかったので、最初怒られると思い、緊張していました(笑)。でも実際は『君は自分で自分の道を選んで、結果こうやって共演できている。それで正解だったんだよ』と、僕の活躍を喜んでくれました」
――嬉しいですね。ちなみに当時は『仮面ライダー龍騎』(テレビ朝日系)で俳優デビューした頃ですね。なぜモデルから俳優に?
小田井「今でこそ『仮面ライダー』は、売れっ子俳優の登竜門ですが、当時は昔の名残で、いわゆる〝ジャリ番〟といわれていたんです。要は子供向けだから、大手の俳優さんは手を出さなかった。それで、僕のモデル事務所にもたまたまオーディションの話が来て」
――それで、いきなり俳優をやるとなったんですか。
小田井「実はライダー役が決まる1週間前、親に『来月には実家へ戻るわ』と話していたんです。だから『1年間ライダーやるから帰られへんわ』って伝えたら、オカンも『はあ!?』って(笑)」
――あはは! それは驚きますよね。でもすごいです。
小田井「毎週30分の番組に年間でレギュラー出演ですからね。で、1年間やってみて『このまま辞めるのはもったいないかもしれんなあ…』と考えて、俳優を続けることにしたんです」
ハプニングだらけの地方営業
――その後、ドラマや舞台で活躍される小田井さんですが、2007年に『純烈』に加入されますね。小田井「最初は断ったんですけどね(笑)。でもその後に、新宿のコマ劇前で北島三郎さんの座長公演のポスターが目に留まったんです。歌謡ショーと芝居がセットの公演ですね。そこで『将来的に座長公演ができるなら、芝居の経験も生きるし、やってみよう』と。まあ、座長公演するには、紅白に出場するほどの人気が必要だと後々気付くんですが(笑)」
――純烈といえば、健康ランドやスーパー銭湯での巡業が有名ですが、結成当初から地方営業を?
小田井「いえ、最初は首都圏が中心でした。その中で、最初にレギュラー公演が始まったのが、今はもうなくなってしまった『ハリウッド』というキャバレーです」
――〝キャバレー王〟福富太郎氏が率いていた伝説のキャバレーチェーンですね。
小田井「あるとき、福富さんがテリー伊藤さんと知り合いで、公演に連れて来てくれたんです。すると、テリーさんが『君たち面白いから今度僕のラジオに出てよ!』とニッポン放送の番組に呼んでくださって」
――それはすごいですね。
小田井「気に入ってくれたようで、その後『スッキリ』(日本テレビ系)にも出演させていただきました。そこから番組を見た各地の健康ランドから声がかかり、地方営業が始まったんですよ」
――テリーさんがきっかけだったんですね。各地を回る中で、ハプニングなどはなかったですか?
小田井「いや〜、ハプニングだらけでしたね。よくあったのは、おばさま方のポロリ。お風呂上がりに浴衣姿で盛り上がってるもんだから、ヒートアップしすぎて胸が丸見えだったり」
――あははは! 目のやり場に困りそうです。
小田井「逆に、ステージを下りて客席を回ってるときに、股間を握られたこともあったなあ(笑)。いろいろ事件が多い現場でしたよ」
――そして、各地で公演を重ねて、ついに18年には、念願の『NHK紅白歌合戦』に出場されました。そのときのお気持ちは?
小田井「自分たちが信じてきた道が報われた気がしましたね。実は、僕らが回っていたような健康ランドやキャバレーって、メジャー歌手が歌う場所じゃないとずっと否定されてきたんですよ。だけど、そこからでも這い上がれるんだと証明できた。実際に今は、健康ランドで公演する若手の子たちが増えているんですよ」
スキャンダルで卒業延期に
――それは素晴らしい功績です。ちなみに、小田井さんご自身は、その頃から純烈卒業を考えていたとか。小田井「初紅白から1年は継続して、その後卒業を考えていました。ですがメンバーのスキャンダルがあって、僕の卒業は延期。そのときはみんな、2回目の紅白は諦めていました…。ですが、行く先々でファンの方が励ましの言葉をくれて。それで、今年も出場を目指すべきだと再出発しました」
――その結果、2年連続での紅白出場を決めましたね。
小田井「あの年のステージは『DA PUMP』とのコラボだったんですが、彼らが全員黄色の衣装を着てくれたんです。実はスキャンダルで脱退したメンバーのカラーが黄色で…。もう泣きそうになりましたね」
――なるほど。そんな裏事情があったんですね…。
小田井「毎年紅白では、NHK側も僕たちのスタイルや方針に合わせた演出をしてくれていたんですよ。それがありがたくてね」
――そして、昨年の紅白で小田井さんは純烈を卒業。ラストステージでした。
小田井「僕の卒業というよりは『ダチョウ倶楽部』と有吉(弘行)さんとのコラボステージだったので、(上島)竜兵さんのことをメインでやりたかったんです。結果的に、明るくお祭り的な演出になったのが良かった。僕的にもしんみりとしたくなかったのでね」
――最後のステージを終えた後はどうでしたか?
小田井「終わってリーダーの酒井(一圭)と2人で話したときに『ほんまに卒業すんねや』と実感しました。それで家に帰ると、LiLiCoが『ここからは私が守るから』と言ってくれて。それが嬉しかったですね」
――素敵です。純烈での活動、本当にお疲れさまでした。最後に小田井さんの今後の目標を教えてください。
小田井「今までは純烈として、全国たくさんの場所を巡ってきました。今度は僕個人がレポーターとなって、ロケに出掛けて、各地の人と触れ合いたいと思っているんです。将来的には地方に移住して、それをライフワークにしたいですね」
――応援しています!
(文/kitsune 企画・撮影/丸山剛史)
おだい・りょうへい 1971年、大阪生まれ、兵庫出身。大学卒業後、サラリーマンの傍ら、モデル活動を開始。その後、退職して東京を拠点に芸能活動を始める。その後は俳優として活躍する一方、歌謡コーラスグループ『純烈』のメンバーとなり人気を得る。2017年に本誌でも連載するLiLiCoと結婚。昨年、純烈を脱退し、現在は個人で芸能活動を続けている。
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