社会

過去最大級の噴火が目前!? 巨大地震に連動…迫り来る富士山大噴火Xデー

Visun Khankasem
(画像)Visun Khankasem/Shutterstock

ゴールデンウィーク終盤の5月5日、能登半島をM(マグニチュード)6.5の大きな揺れが襲った。震源地は石川県能登地方で、震源の深さは約12キロ。震度6強を記録した同県珠洲市では複数の建物やブロック塀が倒壊し、室内には家具が散乱、けが人や死者も出た。

【関連】富士山の“路面電車構想”を巡って山梨県知事と富士急行が代理戦争 ほか

政府は地震後すぐに官邸対策室を設置。余震や二次災害への警戒感を強めたが、迅速な対応を見せたのも無理はない。近年わが国は南海トラフ地震や首都直下型地震、富士山の噴火とさまざまな天災が起きる可能性が指摘されているからだ。

中でも現在最も注目されているのが富士山の噴火といわれ、学者らの間では「もはや、いつ噴火してもおかしくない状況」とみられているという。その理由は、わが国屈指のこの活火山が江戸時代中期から約300年鳴動していないことと、近年活発化する出来事が相次いでいたからなのだ。

例えば2011年3月11日に発生した東日本大震災と、その4日後に静岡県富士宮市で起きたM6.4の地震の際には、実は富士山は噴火寸前だったという。この事実はのちに防災科学技術研究所などのデータから判明したものだが、二度の地震で岩盤に噴火を引き起こしかねないほどの圧力がかかり、マグマだまりの周囲に割れ目が発生。内圧が下がり、マグマだまり内部の水分が水蒸気となって沸騰していたというのだ。

科学ライターが言う。

「水蒸気の泡が充満するとマグマが膨張、全体の密度が下がって浮力が生じ、マグマは火道(噴火口に達する道)を上昇し始める。このときは幸い噴火に至らなかったものの、目前であったことは疑いようのない事実とみられています」

震度7クラスで富士山に影響が

また、富士山は数年前にも噴火しかねない状態を迎えていたという。21年12月3日に山梨県東部と富士五湖を震度5弱の強い揺れが襲ったが、このときに多くの地震学者は「噴火が誘発されるのでは?」と、気が気でなかったそうなのだ。

科学ライターが続ける。

「というのも、同地震の約2カ月前の10月7日には都内で震度5強の地震が発生。震源が地下80キロと深かったため、水道橋や水道管の破裂、看板や屋根瓦の落下、電柱の破損程度で済んだが、震源が浅ければ甚大な被害は避けられなかった。富士山麓の地震発生時は、首都直下型地震が警戒されていた頃で、富士山の誘発噴火も危惧されていたのです」

ちなみに、現在想定されている首都直下型地震はM7.3、震度7クラスだが、実際にこの地震が発生すると約100キロ離れた富士山にも〝異変〟が起きる公算が大だという。

武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏が語る。

「約700キロ離れた東日本大震災でも異変が現れたほどですから、首都圏での大地震は噴火誘発の危険性が高い。しかも、富士山は300年以上噴火していないから、マグマだまりにどんどんマグマが供給され、噴火がスタンバイの状態です。そのため、『延暦噴火』(800〜802年)、『貞観噴火』(864〜866年)、『宝永噴火』(1707年)と富士山には3つの大きな噴火があったが、次回は最大だった『宝永噴火』に勝るとも劣らないものになると予測されているのです」

江戸中期に起きた『宝永噴火』は、噴煙が上空2万メートルに達し16日間も続いたが、実は発生したのは『宝永地震』の49日後。東海地方から九州沿岸にかけて延びる南海トラフを震源とした巨大地震に誘発されて起きたといわれている。

火山灰の引き起こす被害も…

そのため、現在も大地震との連動が危ぶまれているが、その確率は近年さらに増しているという。

「富士宮市で11年に発生した地震は、マグマだまりの少し上で起きたが、このときにマグマだまりの天井部分が割れたと考えられている。首都直下型や南海トラフ地震が起これば、内部にたまり切ったマグマがこの割れ目に流れ込み、噴火の引き金となることは否めません」(島村氏)

もっとも、気になるのは仮に富士山が噴火した場合、どれほどの被害に見舞われるかということだろう。

科学ライターが続ける。

「富士山は多様な噴火を起こすことで知られるため必ずそうなるとは言えないが、噴火時には火口から飛び出した噴石が周囲2〜3キロに降り注ぐ。今年3月に『富士山火山防災対策協議会』が発表した避難計画では、火口からあふれる溶岩流は流れるスピードが遅いため、徒歩での避難が想定されていたが、新幹線や高速道路の一部がのみ込まれる可能性も高いのです」

また、噴火の際に溶岩流以上に恐ろしいのが火砕流。数百度に熱せられた火山灰が岩塊や水蒸気と一体化して山腹を流れ下るこの現象は、時速100キロを超えることもあり、その発生と行方に麓の地域は脅かされる。32年前の雲仙・普賢岳大火砕流では43人が犠牲になった。

さらに噴火時には富士山周辺だけでなく、首都圏にも甚大な被害が予想される。

「舞い上がった火山灰は偏西風に乗り、2時間足らずで東京に達する。都内には約5センチもの火山灰が降り積もり、断水や大規模停電が発生。交通機関も麻痺することから交通事故が増加、物流輸送も止まり、数日間から数週間、首都圏が〝陸の孤島化〟する。また、火山灰は人体に有害なだけでなく、導電性があるのでさまざまな電子機器をショートさせる。神奈川や埼玉などの農作物も壊滅状態となるはずで、未曽有の混乱は避けられません」(同)

しかも富士山の噴火が単独ではなく、巨大地震との連動で起きた場合は、被害はその何倍にも膨れ上がるはず。さらに空恐ろしい事態が展開する可能性が、極めて高いのだ。

あわせて読みたい