エンタメ

蝶野正洋『黒の履歴書』〜繰り返される日本でのテロ行為

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web 

和歌山市の漁港で、岸田総理がパイプ爆弾で襲撃された。事件の経緯や犯人の動機については報道されているけど、そもそも事件を防ぐことは出来なかったのか、という検証はあまり進んでいないような気がする。

安倍元総理の事件があってから、政治家に対する襲撃やテロ行為に対して、さまざまな対策が強化されてきたと思う。でも、まだまだ警備体制が万全ではないということが露呈してしまった。

【関連】蝶野正洋『黒の履歴書』〜喫煙の賛否両論とプロの自覚 ほか

事件が起きた漁港では、過去に総理や閣僚といった要人の警護をした実績がなかったという。当日、警護に当たっていたSPは地元の警察と組んでやっているようだから、鍛え上げられたテロ対策チームというわけでもなかったようだ。

今回の手製爆弾の威力は弱く、蹴飛ばしたくらいで対処できたけど、これがもっと強力で、海外でよくあるような自爆テロだったら防げなかったと思う。

結果的に大きな被害はなくて何よりだったけど、岸田首相が助かったのも奇跡的だし、聴衆に被害が及ばなかったことも運がよかったとしか言えない。

やはり日本の警護マニュアルが、このような事態に対応できてないんだと思う。テロや暴動をリアルに想定していない。欧米では紛争も含めて、いつ何が起こってもおかしくないという肌感覚の危機感というものを常に持っている。これは日本人にはなかなか根付かない部分なんじゃないかな。

施設でセキュリティチェックを

抜本的な対策としては、選挙期間中の演説や集会は、しっかりとした警備体制のある、決められた場所でやればいいと思う。そのための公民館や施設なんかは、すでに各市町村にたくさんあるからね。

これは日本の政治活動の伝統なのかもしれないけど、駅前で演説したり、広場に集まって集会を開くなど聴衆により近い場所で行うことが多いから、警備に限界が出てきてしまうんだよ。

俺は若い頃に、ライガーと一緒に選挙の手伝いに駆り出されて、集会で応援演説したことがある。そのときは陣営によって集会所が決められていて、指定された場所に行ったら、飲み屋街のど真ん中。集会のスタートは昼下がりだったから、まったく人影がない。そこでビールケースの上に乗って拡声器で話をしろと言われたんだけど、本当に聞いてる人が誰もいないから、おかしなことになってたね。

たぶん、市民の皆さんにここが会場だってことが伝わってないし、俺たちが来るということも知らない。陣営の広報不足が招いた事態だったんだけど、これなら駅前で演説するほうが効率がいいと思ったよ。

集会も場所によって不公平感が出てしまう。その対策としても常設の選挙用施設があれば解決する。演説も聴けるし、集会もできる。そのまま投票所を併設してもいい。屋内施設であれば、入館時にIDチェックや荷物検査を徹底すれば、セキュリティー対策にもなるしね。

このような襲撃事件が起きたときに気をつけたいのは、模倣犯が出てくること。今後は政治だけでなく、講演会やイベントなどでも襲撃する輩が出てくるかもしれない。

奇跡は何度も起きない。警備体制を見直すことも大切だけど、テロを未然に防ぐという意識を徹底してほしいね。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

あわせて読みたい