社会

岸田首相“6月解散”にブレーキ!「維新」大躍進は2009年“政権交代”と酷似?

岸田文雄
岸田文雄 (C)週刊実話Web

「今は衆院解散・総選挙については考えていない」

5月4日、アフリカ歴訪中の岸田文雄首相はモザンビークで記者団から解散について問われると、いつもより強い調子で冒頭のようにキッパリと否定した。

「各メディアの4月の世論調査では支持率が軒並みアップしたことから、5月19日から21日まで開催されるG7広島サミット後の6月解散、総選挙という予測が圧倒的だった。しかし、今回の強い解散否定に『首相が解散・総選挙に急ブレーキをかけた』という観測が一気に拡散しているのです」(官邸担当記者)

【関連】「岸田政権」支持率回復でも“早期解散”に踏み切れないワケ…“核と金融”ダブル危機か ほか

なぜ、岸田首相は解散・総選挙風に待ったをかける動きに出たのか。

「一つは4月下旬に行われた衆参5補選の結果に岸田首相自身が衝撃を受けたからだ」(自民党長老)

衆参5補欠選挙は、自民党が最低ラインとした3勝2敗をクリアし4勝1敗だった。また、5補選は岸田政権への中間評価に位置づけられただけに、このまま解散・総選挙に突っ走ってもいいはずだ。

「勝つには勝ったが、楽に勝てたのは衆院山口4区の安倍晋三元首相の地盤だけ。唯一敗れた衆院和歌山1区に至っては選挙応援に入った岸田首相に対し爆発物が投げ込まれる事件が勃発した。それにもひるまず首相は再度、和歌山入り。和歌山といえば、自民党重鎮の二階俊博元幹事長と世耕弘成参院幹事長のお膝元。党執行部のショックは計り知れない」(同)

全国的に浸透している維新の存在感

さらに、自民党が勝利した選挙区でも手放しに喜べない結果となった。衆院千葉5区は〝政治とカネ〟問題で辞職した薗浦健太郎氏が前回約11万票を獲得した。今回、初当選を果たした自民党の英利アルフィヤ氏の得票数は薗浦氏の半分の5万票台だった。

「それでも辛勝できたのは野党の足並みが揃わず、7人が乱立したため。仮に野党が一本化していたら野党の総獲得票数は約11万票。自民党の英利氏にダブルスコアで勝っていた計算になる。また、参院大分補選も大接戦で最後は自民党候補が341票の僅差で逃げ切った。5補選は自民党の〝4勝1敗〟といっても、山口4区以外は薄氷の勝利だった」(自民党中堅議員)

解散風を一気に萎えさせた背景には、統一地方選や国政補選での日本維新の会の大躍進もある。維新の馬場伸幸代表は地方議員600人以上当選を目標に掲げた。最終的には統一選前の約1.5倍に当たる774人の首長・地方議員を確保。国政補選でも前述した保守王国の和歌山で議席を獲得している。

「和歌山1区補選で敗れた自民党候補は路チューで女性スキャンダルを起こした候補だっただけに〝タマが悪すぎた〟と言う声はある。だが、今回の統一地方選で維新は本拠地・大阪で圧倒的強さを発揮したうえ、自民党の高市早苗経済安全保障担当大臣のお膝元である奈良県知事選でも高市氏らが担いだ候補を破った。そして、和歌山でも…。維新の存在感は全国に浸透している証しだ」(自民党幹部)

2009年の前夜と酷似

維新の躍進は首都・東京を含めた関東圏でも目を見張るものがある。例えば、東京特別区の21区議選で、維新は公認候補49人のうち47人が当選。前回の11人から飛躍的に議席を伸ばしているのだ。

「自民党は21区議選に計297人の公認候補を立てたが、70人以上が落選し、前回より議席を23減らした。一方、維新は当選者を増やすと共に中央区、新宿区、台東区、目黒区、世田谷区など8区でトップ当選者を出した。無党派層の多い東京都市部でも維新に追い風が吹きつつある。自民党の伊吹文明元衆議院議長は維新の躍進を『2009年に自民党が民主党政権に取って代わられた前夜と酷似する』と警鐘を鳴らしたほど」(自民党都連関係者)

岸田首相が解散に慎重な姿勢を見せているのは、連立パートナーである公明党の内情もある。

「昨年の参院選で公明党は比例得票数が約618万票と、一昨年の総選挙より100万票近くも減らした。危機感を強めた公明党は今回の統一地方選に懸けていた。しかし、結果は1555人が立候補し12人が落選した。一見少ないようだが、この数字は98年に今の公明党になってからは過去最悪の結果だという。しかも、落選者を多く出したのは愛知や大阪、東京など大都市圏が中心。特に、東京・練馬区議選では4人も落選者を出した。公明党の集票力の衰えは、支持母体である創価学会会員の高齢化などが要因の一つに挙げられる」(公明党ウオッチャー)

自民党の現職国会議員の80人近くは公明党=創価学会の選挙協力で対立候補に競り勝ってきたとみられている。創価学会の選挙運動衰退に拍車が掛かれば、自民党の大幅議席減は必至。

「岸田首相にすれば、広島サミット直後の解散は博打的要素が強すぎるため、慎重にならざるを得ない。来年、解散なら自民党総裁選の年と重なる。かといって、上昇してきた内閣支持率がそこまで持つ保証はどこにもない。支持率が低迷していたら総裁選に手を挙げられないだろう。岸田首相が次に狙う解散のタイミングは9月召集予定の臨時国会になる」(前出・自民党長老)

まさに政界の一寸先は闇。

あわせて読みたい