Ⓒ2023「それいけ!ゲートボールさくら組」製作委員会
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やくみつる☆シネマ小言主義~『それいけ!ゲートボールさくら組』/5月12日(金)全国ロードショー

監督・脚本・編集/野田孝則 出演/藤竜也、石倉三郎、大門正明、森次晃嗣、小倉一郎、田中美里、本田望結 特別出演:毒蝮三太夫 友情出演:三遊亭円楽、山口果林 配給/東京テアトル


おそらく映画評論家の方々の評価や賞レースには、箸にも棒にも掛かりそうにない本作。いいんです、これで。自分は堂々と、星3つをつけました。確かに、予想外な点がただの一つもないベタベタな展開。しかし、清々しいほど素直な気持ちになれました。


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元ラグビー部員のオヤジたちが久々に集結して、かつて自分たちを叱咤激励してくれた女子マネジャーの危機を救うという話。同級生や配偶者の死、認知症、デイホーム選び、突然の下血など、シニアの〝あるある〟をちりばめたストーリーの主役は、御年81歳の名優・藤竜也。ゲートボールチームの主将という、似合うとは言い難い役なのに、四の五の言わず引き受けてくれています。


しかし、ここで一つ疑問が。性差や外見での差別禁止、小学校での「あだ名禁止」など、コンプライアンスが厳しい今もなお、なぜオヤジだけが揶揄の対象になり続けているのかと。ハゲだの、臭いだの、腹が出ているだの、相変わらずイジられまくっていますよね。


しかし、「頑張って生きているだけで上等じゃないか」と肯定されている気分になる本作は、悲しくも肩身の狭い世のオヤジたちの〝駆け込み寺〟的映画になるんじゃないでしょうか。しかも、分かる人だけに分かる、絶妙な小ネタをちょいちょい挟んでいるんです。

ユーモア溢れる出演者満載

生前、ゲートボール愛好家として知られた故・三遊亭円楽師匠が試合の解説者として出ていたり、ウルトラセブンのモロボシ・ダンを演じた森次晃嗣が「デュワッ」と言いながら赤縁の老眼鏡をかけたり。デイホームを温泉施設に作り変えるべく派遣されたボーリング工事会社の担当者が、金八先生の「腐ったみかんの方程式」の回でブレークした直江喜一。彼の名刺が「中山律夫」となっていたり。これ、往年のプロボウラー「中山律子」さんのもじりというアホらしさです。

思わず唸ったのは、大会の試合で当たった女性ばかりのチーム「美肌部」のキャプテンに奥迫協子さんを配したこと。この方は、大阪御堂筋線沿い、淀川のたもとにあったエステ化粧品の大看板で地元では有名な人。本作でもテラテラ光った顔が妙に印象に残ります。「ノーファンデーション出演」と記されたエンドロールを初めて見ました。


遺影だけの毒蝮三太夫など、微妙な遊び心がたっぷり。そんなことなら自分も、と密かに…。実は、3月24日に公開した『三茶のポルターガイスト』に私めも出演しております。映画関係者の皆様、機会がありましたらお声がけください(笑)。
やくみつる 漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。