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事故物件サイト運営人・大島てるインタビュー~「事故物件」が事故を呼ぶ本当にあった「遺恨の連鎖」~

大島てる
大島てる (C)週刊実話Web

自分が持つ不動産の瑕疵(欠点という意味の法律用語)は誰もが知りたい情報だ。しかし、オーナーも不動産屋も進んで表に出したがらない「事故物件」の情報は、かつては非常に入手しづらかった。そんな事故物件の情報を提供するホームページを世界で初めて作成したのが「大島てる」だ。書籍や映画の世界で事故物件ブームを巻き起こした張本人に話を聞いた。


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――もはや知らない人はいないほど有名な事故物件公示サイト「大島てる」ですが、今さらながら奇妙なネーミングに思えます。その由来を教えてください。

大島 そもそもは私の祖母の名前なんです。そのまま、不動産の管理や投資を行う会社の名前になりまして、サイトでもそれを受け継いだのです。

――一般に知られるようになった当初、かなりインパクトのあるテーマを扱っていると思いましたが、どうしてこのようなサイトを始めたのでしょうか?

大島 サイトを始めた当時は、私自身が不動産業に関わっていました。主に家主として不動産投資を行っていたのですが、不動産は安い買い物ではありません。大金を投じて買うわけですから、瑕疵というものが気になります。物理的な瑕疵は業者が調べられますが、いわゆる事故物件のような心理的瑕疵は、見つけるのが難しい。そこで調査することになるのですが、その情報をサイトで公開したわけです。私自身が知りたい情報でもありましたが、誰もが家に住むのですから、すべての人にとって役に立つ、公共性、公益性があると思ったからです。

――サイトはいつから始めたのでしょうか?

大島 2005年9月です。ただ、しばらくは1日のアクセス数が数件程度の、誰も見ていないようなサイトでした。2009年9月に竹熊健太郎さんのブログで紹介されて、そこからヤフーニュースに載りまして、一気にサーバーが落ちるほどアクセスが増えていきました。

――話題になるまで4年もかかったのですね。現在、ユーザーからの投稿によって成り立っているかと思うのですが、当初からこのようなサイトにしようと考えていたのでしょうか?

大島 いえ、当初は自社で得た情報を掲載していました。しかし、自分たちだけで情報を集めるのは、量としても正確さにおいても限界があるため、2011年6月にユーザーからの投稿に切り替えました。

部分的なリフォームを疑う

――しかし、誰もが投稿できるとなると、虚偽の情報も多く投稿されてしまうのではないでしょうか?

大島 確かにその懸念はあります。そのため、物件をクリックした際に「投稿内容の訂正要望についてもこちらにご記入ください」と、分かりやすい形でメッセージを送れるように提示しております。オーナーや不動産屋にとって都合が良い情報であれば、虚偽のものでも通報しない可能性はありますが、悪い情報であれば、まず放置せずに通報してくるはずです。おかげさまでサイト自体も有名になり、情報の精査という意味では、自浄作用が働いているものと思っています。もちろん、投稿にだけ頼っていたら正確さに欠けるので、スタッフや私も時間のある限り、現地に赴いて調査するなどしています。

――では、一般の借り手や買い手が、事故物件を見分ける方法などあるのでしょうか?

大島 必ずそうだという話ではありませんが、部分的なリフォームが行われていた場合、疑ってみるべきでしょう。例えば、マンションの1室だけ大きなリノベーションが行われていた場合、該当の物件で火事があった可能性があります。1室の中で1間だけ、明らかに他の間とは違ってピカピカにリフォームされていた場合、以前の住人がその部屋で亡くなったために行ったのかもしれません。また、部屋の畳の1畳だけ新品に張り替えられている場合などは、その場所で遺体が腐敗したため、張り替えたのかもしれません。あとは、アパート全体の外観を塗り替えていたり、マンションやアパートの名前が変わったりしている場合も、そこで大きな事件があるなどして悪い意味で話題になったために、変更した可能性があります。住所を注意深く検索すれば出てくるはずですので、調べてみたほうが良いでしょう。

――読者の中には高齢の方も少なくないのですが、自分の家や、あるいは親族などの家が事故物件にならないために、できることはあるのでしょうか?

大島 どなたか家族と一緒に住む…というのがもちろん一番なのですが、独居の場合、倒れたときにいかに発見してもらうかという態勢づくりが大事かと思います。現在だと、人感センサーで倒れたりして動けなくなった際に、通報される仕組みがあります。また、毎日のように顔を合わせる友人やご近所さんがいれば、倒れてしまっても見つけてもらえる可能性が高まります。やはり人と人とのつながりが、大事なことは間違いないでしょう。

運営責任者であり広報担当

大島てる
大島てる (C)週刊実話Web

――近年、事故物件が増えているように思えます。やはり高齢化が問題なのでしょうか?

大島 いえ、問題は高齢化ではありません。人は必ず寿命を迎えます。でも家族がいて、亡くなる前に病院に運ばれたり、亡くなったとしても看取られたりすれば、事故物件にはなりません。単身世帯が増えていることが問題なのです。

――なるほど…。ところで、お仕事で事故物件に深く関わっている中で、怖い体験などしていませんか?

大島 いろいろありますが…直近だと昨年、調査していた町田市(東京都)に、火事で住人が亡くなった物件があるのですが、調べていくと同じ家で13年前に殺人事件があったことが分かりました。奥さんが殺され、犯人は今回の火事で亡くなった住人だったそうです。私自身は霊が見えたりはしないのですが、被害者の恨みによって、引きずられてしまったのではないかと思いたくなる事案でした。

――大島さんは扱っているテーマから、オーナーや一部の不動産業者に恨まれることもあると思うのですが、メディアで積極的に発言しているのはどうしてなんでしょうか?

大島 このサイトの代表者が、顔の見えない匿名の人物だったら、信憑性がなかったと思うんです。運営責任者でありますが、広報担当だと思っていまして、ご要望があれば出て話をさせていただくのが自分の役割だと思っております。

――今後、大島てるのサイトはどうなっていくのでしょうか?

大島 どこかの段階でサイトを誰かにバトンタッチして、違うことにチャレンジしたいと思っています。実は役割を果たしたと思えることが2021年にありました。国土交通省が「心理的瑕疵に関する検討会」での議論を踏まえて、『宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン』を策定したのです。いわゆる事故物件のガイドラインです。これまで曖昧なところがあったのですが、賃貸に関しては殺人や自殺で3年間の告知義務。その他、特殊清掃がなされた場合も告知すべき、また借り手から聞かれたら答えるように明記されたのです。違反しても現状はペナルティーがないのですが、告知義務を無視していた悪徳業者たちには、確実にプレッシャーがかかるはずです。

――すごい。国を動かしたわけですね。

大島 私自身が検討会に参加していたわけではないのですが、大島てるのサイトが議論に一役買ったという話は漏れ聞いておりまして、消費者に望ましい方向に向かう一助になれたことをうれしく思っております。

(取材・構成/渡辺則明 撮影/鈴木洋志)

大島てる(本名・大島学)
1978年3月16日生まれ。東京都出身。東京大学経済学部卒業。事故物件の情報提供ウェブサイトを運営する株式会社大島てるの代表取締役。大島てる物件公示サイト

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