(画像)T Kuroki / Shutterstock.com
(画像)T Kuroki / Shutterstock.com

日本維新の会が公明党に“三下り半”で関係は白紙に…「常勝関西」の落日

統一地方選挙前半戦では、日本維新の会の躍進が目立った。創価学会を支持母体とする公明党は、これまで『常勝関西』としてめっぽう選挙に強かったが、維新の馬場代表は公明党との関係を白紙に戻した。維新vs公明の構図がより鮮明となった舞台裏レポート!


【関連】立憲民主党が消滅の危機!? 衆参5補欠選挙・野党候補一本化ならず将来性なしか ほか

※※※※※※※※※※


「あれが〝三くだり半〟というものですかねえ…」


公明党の支持母体である創価学会の大阪・中堅幹部はしみじみと言う。〝三くだり半〟発信者は日本維新の会・馬場伸幸代表だ。


馬場代表は統一地方選挙前半戦の勝利を受けて「公明党との協力は、すべてリセット。今後どうなるかは全くの白紙」と発言し、「政治だから、向こうが話したいということであれば、テーブルに着く」と余裕の含みを残していた(4月9日の記者会見)。


この話には続編がある。大阪維新の会代表だった橋下徹氏がツイッターで、こんな発信(4月11日)をしたのである。
《公明党は『大阪都構想の住民投票を組織の総力をあげて可決に持ち込むので、大阪都構想(以下、都構想と略)が実現した暁には衆院関西6区を譲ってもらいたい』という提案を維新にすべき》
大阪や兵庫の地方選最前線で戦った創価学会活動家複数人に、橋下氏のツイッターの感想を聞いてみると、

「大阪市議選挙で落選者は出たが、関西の議席数で見れば決して減っていない。選挙で負けたわけでもないのに頭を下げて、貢ぎ物を持ってこいという不遜な発言だ」


「中央で自公連立、大阪では維新と協力というねじれがあるわけで、都構想のときも、大阪の公明党は反対から賛成に変わってしまい創価学会内部は大混乱しました。二度の住民投票はほんの僅差で否決されましたが、2回目は明らかに創価学会員が投票しなかったか、反対票を入れたことが敗因と維新は考えている。嫌味な蒸し返しですよ」

昨年には“リセット”発言を

創価学会総本部がある東京・信濃町中枢では行く末を憂える声も出ている。

「正直、今の勢いの維新と公明現職議員のいる大阪、兵庫衆院6選挙区でガチンコとなれば、大阪万博やIRで維新の失政でもない限り、勝利はおぼつかない」


創価学会では『常勝関西』の象徴でもある衆院小選挙区6議席が危ないというのは数字上でも言えそうだ。今回の大阪や兵庫の府県議選や市議選得票数を、ざっくり公明党衆院現職のいる6選挙区で推測してみると、たとえ自民党が選挙協力したとしても、維新候補が上回る可能性が大きい。もちろん、候補者のタマ次第の部分はあるが、


「かなり大きいのは、維新の得票数=強さは①支持層固め②無党派層の獲得③自民党支持層からの〝支持〟の3点。特に3点目が国政選挙レベルでどうなるか、どう響くかですね。2点目は傾向としてずっとあり、無党派層が風次第で動くという捉え方は古いんです」


とは知己の選挙アナリストの見立てである。


実は、維新の馬場代表は「公明党との関係はリセットする。(大阪、兵庫の公明党衆院現職がいる)6選挙区に関しては、白紙だ」と、すでに昨年9月の記者会見で発言している。


要するに今後、公明党が6選挙区で候補者を立てても、維新は協力しないという宣言で、それを前提で統一地方選に臨んだわけだ。4月9日の馬場発言は、そこを念押しして、やんわりと条件を出した格好になる。そして、橋下発信は条件に踏み込んだ内容と読める。


さる維新関係者によれば、「昨年9月の馬場発言には、さらに〝深謀遠慮〟があった。ずばり、府議会と市議会の議員定数削減です。今回は市議選が83→81、府議選は88→79へと減りました。国会は衆院小選挙区『10増10減』で、公明党が定数増の都市選挙区に独自候補を立てると決め、自民党が苦慮しているわけですが、あれが悪い見本。維新は身を切る改革が信条ですから、議員定数削減を有権者へアピールする。府議会議員はこの10年で109→79人まで減った。市議会も2人減となった。これにより府議会議員選挙で増えたのは1人区で36もある。要するに国政レベルの小選挙区ですよ。そして今回、11選挙区で15人が無投票で決まっていて、維新は11議席取っている。前回選挙の無投票は8選挙区でした。ここから何が読めるか分かるでしょう」

創価学会を育て守ってきた西口氏が逝去

大阪維新関係者の証言を重ね合わせると、こうなる。

特に府議会での定数削減は、結果的に維新と自民党の争いになるが、これまでの実績から1人区で維新は負けなし、公明党が入り込む余地はない。2人区では確実に維新が1人の当選者を獲得できる。3人区以上の定員なら公明党が入ってくるが、逆に4人区なら維新の2人当選も確実。


このシナリオ通りなら、公明党は固定票によって現状維持できても、自民党は減り、立憲民主党や共産党から当選者を出すのは至難の業となる。そして驚くべきことに、その通りの結果が今回の統一地方選前半戦で出たのだ。


当然のことながら、創価学会側からは「衰退を何とか食い止めているのに、自民党大阪府連は何をやっているのだ」となる。「1人区に対抗馬さえ擁立できない現実をどう考えているのか」というわけだ。


首都圏の自民党組織では、おおよそ考えられない事態が大阪では起きた。それでも『常勝関西』の看板を掲げ続けるなら、自民党頼み(当該選挙区では自民党候補を立てずに選挙協力する)で小選挙区の公明党議員を支えるか、国政との矛盾・ねじれを顧みず、維新の軍門に下るかしか将来的な展望はなさそうだ。


常勝関西を支えてきたのは、故人となった西口良三氏(元総関西長=2015年逝去)である。実際に公明党与党参加(細川政権)→一部解党で新党結成(新進党)→民主党政権発足(公明党は下野)という流れの中、ずっと差配し、際どいかけ引きで公明党・創価学会を育て守り続けてきた。


この西口氏が身を退いたのは、民主党が大阪・兵庫の衆院6選挙区で勝ち、政権誕生(09年)を許した責任によってである。


常勝関西で維新の跳梁を許した創価学会。次の〝勝利〟は、いよいよおぼつかなくなった。


(ジャーナリスト・山田直樹)