新日本プロレスの恒例のビッグイベント『新日本プロレス1.4&1.5東京ドーム大会』に解説者として参加させてもらった。今年は去年に引き続き、1月4~5日の2日開催。4日のメインは、IWGPヘビー級とインターコンチネンタルのダブルタイトルマッチで、王者・内藤哲也選手に飯伏幸太選手が挑戦した。熱戦の末、飯伏選手が新チャンピオンとなり、翌日のメインは、飯伏選手にジェイ・ホワイト選手が挑戦。48分5秒というロングマッチを制して、飯伏選手が2冠初防衛に成功した。
どちらもすごい試合で、見応えがあった。肉体と肉体が真っ向からぶつかりあうプロレスで、昔の新日本プロレスのにおいがしたよ。
新日本は運営会社が変わったころから、リング上の闘いも変化した。(アントニオ)猪木さんから俺たち闘魂三銃士が受け継いできたスタイルを捨てたんだよ。それから時代に合わせたプロレスを開拓して、新たなファン層を獲得してきた。
でも、今回のメイン2試合はストロングスタイルを受け継いでいるようだった。それを、新日本の生え抜きではない飯伏選手が体現していたのが面白い。実は外の選手のほうが「新日本らしさ」というものを、つかんでいるのかもしれない。
残念だったのはコロナ禍ということもあって、お客さんの数が絞られていたことだ。しかも、声を出せないから、どうしても会場の雰囲気が暗くなってしまう。
そんな中で、俺の隣の席で実況を担当していた大西アナウンサーは、入場時からテンション高めで、声を張り上げて実況していた。会場内が静かだから、彼の声だけが響き渡る状態だ。
盛り上げようという実況陣の気持ちには頭が下がる
最初から飛ばしすぎなんじゃねーかと思っていたんだが、あとで大西くんの先輩の田畑アナから聞いたら、あれはわざとだって言うんだよ(俺のYouTubeチャンネルでこの話を撮ってるから、よかったらのぞいてくれ)。
観客が選手に声援を送れない中、アナウンサーが声を張り上げることで、選手の気持ちを高めていい試合をしてもらう。アナウンス部の方針で、そういう実況を心がけていたらしい。
声を張ると喉を痛めるので、連続で実況することが難しくなり、ひと試合ごとに交代しているとも言っていた。制限の多い中、少しでもプロレスを盛り上げようという実況陣の気持ちには頭が下がるね。
その裏では、レジェンドレスラーも頑張っていた。1月4日の後楽園ホールでは、プロレスリング・ノアの興行があり、久しぶりに馳(浩)先生がリングに上がったんだよ。対戦相手には武藤(敬司)さんもいた。
だけど、ノアの所属選手は、レジェンドレスラーがいきなりやってきて、歓声を浴びている姿をみて悔しがってるんじゃないかな。俺もかつては新日本のリングでどんなにいい試合をしても、最後に猪木さんが「1、2、3、ダー!」で客を沸かせて、おいしい所を持っていくことがよくあった。これを覆すには、自分自身が猪木さんを喰うぐらい存在感を発揮するしかない。
だから、ノアでいま悔しい思いをしている選手は、その気持ちを忘れないでほしいね。コロナ禍で不便な生活を強いられている人たちもそう。いま我慢して頑張っていれば、やがて必ず報われるときがくるはずだ。
蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。
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