日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web
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『アブラハヤ&ニジマス』東京都八王子市/小仏川産~日本全国☆釣り行脚

電車に乗って車窓を眺めていると、目に入る川やドブなど「気になるポイントがいっぱいある」ということを以前、この連載で書かせていただきました。今回の釣り場は、そんな〝ずっと気になっていた車窓〟のポイントです。


中央本線で東京から山梨、長野方面へ向かう際、高尾駅を出発した列車が、県境の小仏トンネルに入る直前に並走する小さな流れ。線路脇の清流を列車の中から目にするたび、「試しに竿を出してみたいものだ」と思っておりました。


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今回は〝春らんまんの里川の釣り〟ということもあり、和気あいあいと楽しむべく友人親子も誘い、早朝の高尾駅に降り立ちます。ミシュランガイドで三つ星を獲得し、年間300万人と世界一多くの登山客が訪れる高尾山。平日ながら、登山客で盛況なバスに乗り込みます。


駅前から住宅街を抜けると、程なく山里の雰囲気になり、高尾山の登山ルートとなる停留所では多くの登山客が下車。その後、小仏川沿いの細い道をしばらく走って、目的の停留所に到着です。バスを降りると目の前には、列車から幾度となく目にしていた小仏川の流れ。ついに竿を出せるこのワクワク感がたまりません。


小さな細流ゆえ、ポイントは限られそうですが所々に落ち込みや淵があり、友人親子ともども思い思いのポイントで釣り始めます。ナスオモリ3号に袖針4号という簡単な脈釣り仕掛けにエサのミミズを付けて、落ち込みに仕掛けを沈めると、グリグリッ! とすぐにアタリ。ブルブルと小気味よい手応えで釣れたのは、アブラハヤです。渓流釣りでは邪魔者扱いの外道ですが、初めての釣り場ではこんな素朴な魚も嬉しいもの。飽きずにアタリが出るのもまた楽しく、しばし3人でアブラハヤと戯れます。


日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

とはいえ、釣れ続けると欲が出るもので、「あわよくばヤマメなどの渓魚はいないものか…」などと淡い期待が湧き上がります。そこで、少しずつ移動しながら、めぼしいポイントを探っていくことにしました。

思いがけず渓魚さらなる大物も

探り歩くうちに、河原へと下りられる箇所を見つけ水際へ。さらに進むと、行く先に見えたのは、いかにもよさげな堰堤です。友人親子に目をやると、手前の淵でアブラハヤと戯れ中。「しめしめ、ここでヤマメでも釣って見せびらかしてやろう」ワタクシの小物魂に火がつきます。われながらなんとケツの穴の小さいことよ…。

ヤマメ 日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

落ち込みに近づき、魚に気配を悟られぬよう、やや離れた場所からソッと仕掛けを沈めます。すぐにグリンッ! と明確なアタリがあり、反射的に竿を煽るとググンッとアブラハヤより強めな手応え。ドキドキしながら抜き上げてみると、16センチほどのヤマメです。本当に来ちゃった…。


自慢してやろう♪ と振り返ると、先ほどの淵で竿を大きく曲げる息子さんの姿が。水面でバシャバシャと派手に暴れる魚が無事に取り込まれました。見に行くと30センチほどのニジマスです。「川沿いにマス釣り場があったので、もしかしたら脱走兵がいるんじゃないかと、ウキ仕掛けで狙ってみたんですよ~」と満面の笑み。ワタクシといえば、今さら小さなヤマメを見せるのもはばかられるもので、そっとリリースです。


日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

その後、息子さんと同じくウキ釣り仕掛けに変えて、エサを流していたお父さんにもニジマスがヒット。派手なジャンプで抵抗するニジマスのファイトは、はたから見ていても楽しそうで、手慣れたやりとりで取り込まれたのは、息子さんが釣り上げたものと同じくらいの大きさ。30センチほどの肥えたニジマスは塩焼きにちょうどよい大きさで、何とも旨そうです。 お裾分けに感謝エサ取りも美味

こうなると、ワタクシもぜひ…と柳の下のドジョウならぬニジマスを狙ってみますが、さすがにそうは問屋が卸さないということで、釣れるのはアブラハヤのみ。次こそは…と夢中で竿を振るうちに時刻は昼近くとなり、そろそろ腹も減ってきたので納竿といたします。


ニジマス 日本全国☆釣り行脚 (C)週刊実話Web

河原で道具を片付けていると「僕たち2尾ありますから、よろしければ1尾どうぞ」と、ニジマスのお裾分け。ヤマメで出し抜いて自慢してやろうなどと、もくろんでいた自分の小ささを恥じ入りつつ、有り難くいただくことにしました。


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帰宅後はアブラハヤをフライに、いただいたニジマスは塩焼きにして晩酌です。アブラハヤは渓流釣りでは定番のエサ取りとして、一般的には好まれる魚ではありませんが、食べてみればホクホクとしたフライは美味。そしてニジマス。適度に肥えた魚体はクセもなく、これまた旨い塩焼きです。


かねてより気になっていた釣り場で竿が出せ、素朴な里の川魚に加えて、小さいながら渓魚とも出会えた今回。さらにはニジマスのお土産までいただいて、何とも楽しい春の1日となりました。
三橋雅彦(みつはしまさひこ) 子供のころから釣り好きで〝釣り一筋〟の青春時代を過ごす。当然のごとく魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。