(画像)TAGSTOCK1 / shutterstock
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『性産業“裏”偉人伝』第7回/ピンクコンパニオン~ノンフィクションライター・八木澤高明

私は楓という名のピンクコンパニオンに同行し、彼女の仕事について話を聞くことになっていた。


楓は、ピンクコンパニオンだけではなく、昼間は事務職を掛け持ちしているという。所属している事務所から依頼が入ったときだけ、ピンクコンパニオンとして働いているのだった。


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私が指定された場所に着くと、彼女は店の外に置かれた椅子に座ってコーヒーを飲んでいた。


黒髪にロングヘアー。この日も昼間の仕事からの帰りなのだろう、カーキ色のトレンチコートを着ていた。


ほっそりとして、タレントの佐々木希に似た美女である。彼女を取材するのは、この日で二度目だった。


以前は、ピンクコンパニオンではなく、脱ぐことのない普通のコンパニオンをしていたと語るが、手にする金額に倍以上の開きがあることを知り、ピンクコンパニオンになったのだった。


楓がこの道を選んだのには、どんな理由があったのだろうか。


「稼げるのも理由の一つですが、1分でも時間を無駄にしたくない性格で、暇な時間を作りたくないんです。でも、コロナが流行ったときにコンパニオンの仕事は一気に減っちゃったんで、昼間の事務職の他に家庭教師をやったり、深夜にコンビニのバイトを入れたりしてたんですよ。最近になって少しずつお客さんが戻ってきたんで、他のバイトはやめました。コンパニオンは、いいお客さんに当たれば、徹夜で仕事できるのが魅力なんです」


これまで多くの風俗関係で働く女性を取材してきたが、「時間を無駄にしたくない」という理由で働く女性に会うのは初めてだった。


ちなみに、楓は既婚者である。夫はとある温泉地に楓を呼んだ客で、今もピンクコンパニオンとして働いていることを知っている。夫公認の仕事なのだ。


果たして、夫はどう思っているのか。


「どうなんでしょう、あんまりいい気分じゃないでしょうね。それでも、私が常に働いていないとダメな性格を承知して結婚したので、我慢しているんじゃないでしょうか」


夫は一般企業に勤める会社員なのだが、休日、楓にコンパニオンの依頼があった際には、ドライバーとして送り届けてくれることもあるという。しかしこの日のドライバーは楓の夫ではなく、事務所の男性だった。


私と楓は、もう1人の女性と1台のワンボックスカーに乗り込み、この日の現場へと向かった。


この日、呼ばれたもう1人の女性は、20代前半。他に、キャバクラでも働いているという。派手な雰囲気の、目鼻立ちがはっきりとしている女性で、こんな2人が揃えば呼んだ客も喜ぶのではないかというほどの美女だった。

1回3万円で大人のお付き合い

都内を離れた車は、高速道路を1時間ほど突っ走り、人家もまばらな北関東の田園地帯に着いた。

この日、楓たちが呼ばれたのは、街道沿いの居酒屋だった。店の2階が宴会場になっていて、そこに男たちがいるという。


「ピンクコンパニオンといえば温泉地というイメージですけど、基本的に呼ばれたらどこにでも行くんですよ。居酒屋や別荘、公民館、暴力団の事務所に行ったこともありましたよ」


ちなみにヤクザの事務所では、クスリを勧められたりして、最悪の経験だったと楓は語る。


午後7時、彼女たちは店内へと消えた。


彼女たちの取り分は、2時間のワンセットだけで終われば、7000円のみだ。そこから延長してもらったりオプションのサービスを付けたりして、少しでも長引かせることが重要になってくる。


楓ともう1人が居酒屋から出てきたのは、なんと日付をとっくにまたいだ午前3時ごろだった。


「相手のお客さんは30代の2人組で、地元の仲間という感じでしたね。最初はセットのみって話だったんですけど、場が盛り上がって、延長してくれたのでラッキーでした」


時間にして約8時間。彼女たちは店内で何をしていたのだろうか。


帰りの車中ではぐったりとして、すぐに寝てしまった楓。なので後日、改めて話を聞いた。


「最初にどんどん飲んでもらって、気分良くなってもらうのが大事です。それから野球拳をやって、私たちもボディータッチをしたりしながら興奮してもらって、向こうがその気になってきたら〝大人の付き合い〟ですね」


事務所は、女性たちが服を脱いで客と一緒に盛り上がる場を提供していることまでしか関知していない。当然ながら、性的なサービスをうたえば摘発の対象となってしまうからだ。


実際には、女性たちと客の間に、「裏オプション」が存在するのだった。


「大人の付き合いは1回3万円なので、大きな収入源になります。居酒屋さんからラブホテルに流れて、そこでというパターンもありますね。もちろん、温泉旅館やホテルに呼ばれたら、部屋でしますよ」


楓の仕事は、まさにピンクコンパニオンという言葉がぴったりなのだった。


この仕事の利点について、楓に聞いた。


「お店でもないですし、基本的には複数の女の子で行くので、安全でもありますし、チームプレイで延長に持ち込むこともできます。セーフティーネットがしっかりあることだと思います」


SNSが発達し、個人で客とやり取りする風俗嬢が増える中、セーフティーネットがしっかりとしているというピンクコンパニオン。風俗の一形態として貴重な存在なのだった。