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蝶野正洋『黒の履歴書』~動画配信から発展する格闘技ビジネス

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

ガーシーが参議院議員を除名され、名誉毀損などの疑いで逮捕状も出された。パスポートの返納命令も出ており、失効すれば不法滞在、強制送還という流れになるようだけど、いまだドバイに潜伏しているという。

犯罪者が海外逃亡すれば捕まらずに済むなんてことがいまだに通用するというのが問題だけど、これは一方で暴露とかのアウトロー系のネタを扱うユーチューバーの限界が来つつあるということでもあると思う。


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最初の頃のユーチューバーは自分の趣味などを発信するようなタイプが多かった。でも、それだと目立たなくなってきたので、ドッキリを仕掛けるとか、大金を使って買い物をするような過激な方向になり、さらにガーシーみたいな暴露系やトラブルをネタにするような動画が増えていった。

高校生が回転寿司店でイタズラをした動画が問題になったけど、あれもバズれば何やってもいいという最近のユーチューバーの影響も大きいと思う。とはいえ、やり過ぎれば逮捕される。それが認知されてくれば、今後はヤンチャ系の動画は少なくなっていくんじゃないかな。そういった意味でも、いま分岐点だと思うのが『ブレイキングダウン』だね。

これは朝倉未来くんが主催している格闘技大会で、アウトロー系の出場者たちをオーディションして、1ラウンド1分間で試合をするというもの。

業界全体を見回せるプロデューサー目線

試合といっても不良同士のケンカのようなものだから、目を引きつけるものがある。ただ、飽きるのも早い。視聴者たちも最初は面白がるかもしれないけど、代わり映えのしない不良たちしか出てこないなと感じたら離れていくだろうね。ただイベントとしては可能性があると思う。運営システムやルールを洗練させて、プロの選手を育成させることまで考えれば、格闘技界にも貢献できるはずだよ。

未来くんは頭がいいから、その方向性も考えているとは思うけど、本人がまだ現役の選手だから、格闘技界全体のためにという気持ちは薄いかもしれない。

ボクシングでいえば、亀田興毅くんが『3150FIGHT』という大会のプロデュースをしていて、ボクシング界の発展のために意気込んでいる。俺は興毅くんとはちょっと交流があるんだけど、昔から業界全体を見回すようなプロデューサー目線を持っていた。

プロレス界でいえば、猪木さんも一流のプロデューサーだった。馬場さんも、力道山もそう。トップどころというのは、興行師としても凄腕なんだよ。

『ブレイキングダウン』は、ネットでの動画配信がメインだけど、これは大きなポテンシャルを秘めている。すぐに世界進出できるし、PPVでカネが入ってくるから儲けも大きい。

那須川天心選手のボクシング転向戦も、武尊選手のキックボクシング復帰戦も、ネット配信で生中継されるように、格闘技中継はテレビからネットに完全に移行した。このシステムを生かして、どうやってファンを増やして、カネを集めるか。これからのプロデューサーは、そんなデジタル興行師としてのアタマが必要になってくる。

ただ過激なことを仕掛けるなら、誰でもできる。瞬間的にバズるだけでなく、どうやって継続的なビジネスに繋げていくのかが問われてくるだろうね。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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