ジャガー横田 (C)週刊実話Web
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“孤高の女帝”ジャガー横田インタビュー~プロレスとは「受け身の美学」私に引退はありません!~

いまだ月に5~6試合をこなすという女子プロレスラーのジャガー横田。タレントとしても多忙な日々を送る中、一体そのエネルギーはどこから来るのだろうか。リング上でのキレのある動きは、とても60歳を過ぎているとは思えない。


今年の2月12日に東京・新宿FACEで開催された興行『R45~ババアをなめるなよ!~』では、39年ぶりにダンプ松本とシングルで対戦して、大いに話題を呼んだ。ジャガー横田の生き様を探っていく。


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――ダンプさんと実際に戦ってみていかがでしたか?


ジャガー横田 あの日は楽しかったけど、大変でしたね。トーナメントだったので勝たなきゃ次に行けないし、勝ってもさらに大変という状況でした。ダンプとのシングル戦は、これで最後かもしれませんね。


――感慨もひとしおですね。


横田 年はダンプが1つ上ですがプロレスでは私が3年先輩。試合前、ダンプに「39年ぶりですよ。ずいぶん久しぶりですが、よろしくお願いします」って言われて、「本当にあっという間だな、もうそんなになるのか」と。お互い昔のようにはいかないけど、リングに上がって真剣に向かってくるダンプを見たら、彼女なりに今でもプロレスと対峙しているんだなと思わされました。でも、懐かしい気持ちを抑えて、こっちも手加減なく挑みましたよ。


R45~ババアをなめるなよ!~ (C)週刊実話Web

――見事、ジャガーさんが勝利を飾りました。


横田 場外乱闘になってダンプも大暴れしていたけれど、テンカウント内でリングに戻るのは私のほうが早くて、結局、勝たせてもらいました。どうしたって身の軽い私のほうが早い。向こうはそれを考えてなかったね(笑)。 一日5分程度のストレッチを

――あの日は、勝ち上がって3回戦まで行いましたが、ジャガーさんの相手は全部大きい選手でしたよね。特に3回戦では伊藤薫選手に膝を執拗に攻められましたが、大丈夫でしたか?


横田 私は怪我をしても後に引かないので、今はもうだいぶ痛みもなくなりました。膝も打撲なので大丈夫です。私はいまだにテーピングをしたことがないんですよ。丈夫な体に生んでくれた親に感謝ですけど、自然治癒力があるんでしょうね。あとは「怪我を怪我と思うな、痛いと思うから痛いんだ!」ですよ(笑)。


――テーピングが必要ないとは驚きです。何か秘訣があるのでしょうか?


横田 基本的なことをしっかりと、若いときにやっていたからかな。もちろん今でも練習をしていますけど、特にストレッチは毎日やりますね。体の伸ばせるところと回せるところは、全部伸ばし、回すんです。肩、首、腰、膝の裏、アキレス腱、これだけでずいぶん違うと思います。


日常生活では皆さん、あまり体を動かすことはないでしょうし、また運動が難しい方もいらっしゃると思いますが、この体を回す、伸ばすストレッチをやるといいですよ。1日1回、5分程度、ゆっくりでいいんです。血行が良くなりますし、怪我もしにくくなる。


――なるほど、これは効果がありそうですね。とはいえ、そろそろ年齢的に現役でいるのは大変ではないでしょうか?


R45~ババアをなめるなよ!~ (C)週刊実話Web

横田 若い頃に比べると確かに勢いはなくなるけど、長くやっていると、引き出しが増えていく。同じ対戦相手でも毎回、同じじゃないんです。いつも違う。それが面白さでもある。これまで自問自答しながらやってきました。


自分が培った経験値を引き出しから出していく。一つ一つがチャレンジなんです。常にチャレンジを惜しまず、やり残したことが少ないように、達成感を感じていたいという気持ちで今も試合をしています。また、考え方も変化してきます。それで今日まで続けてこられたんですね。

動けなくなったらフェードアウト

――今はアイドル系の女子プロレスラーも増えました。男女関係なく試合を組むとか、そういった流れに対してどう思われますか?

横田 昭和のレスラーからすれば、ハングリーじゃないといけない部分とかはあるけれど、さすがに今は時代が違う。若いときは全女(全日本女子プロレス)という団体だけでしたから、そこで生き残るのは大変でした。当時は自分が最高で、世界で一番強いと思っていて(笑)、本当に自分しか見えてなかったけど、今は他の人も見られるようになってきました。


極端に自分を変えることはできないけれど、いろいろな団体も増えて、女子プロレスという括りだけでも昔より幅が広がっている。時代とともに自然な流れなので、私はそれに対して悪く言う必要はないと思っています。それぞれの団体や選手にファンがいる。だから「自分とは違う」でいいと思います。


ショーと言われるのは嫌ですが、私は〝プロレスは見せ方のエンターテインメント〟だと思っています。その見せ方とは〝受けの美学〟でもある。先ほど言った経験値で、いかに相手の攻撃をうまく受けるか。そして、そこからチャンスを見つけて攻撃していく。きれいな受け身であれば、相手を映えさせることにもなるし、怪我もしにくい。そんな華麗な技の攻防を観客の皆さんにお見せしたいですね。


――ジャガーさんはいつまで現役を続けますか?


横田 私はすでに2回引退して、2回目の復帰のときに引退はしないと宣言しているんです。だから引退はしません。ただ、妥協が多くなったらやるべきではないと考えているので、動けなくなったらフェードアウトしていきます。 息子には自分の好きな道を

――長く続けているのは、やはりプロレスが楽しいからでしょうか?


横田 よく「長くプロレス界にいますね」と言われるけど、ここしかないんです。まぁ、自分でもこんなに長くやるとは思ってもみなかったけど(笑)。私は結婚もしていますが、プロレスは私の健康にもいいし、楽しいし、常にチャレンジを続けていきたい。その分、家族には負担をかけていますけどね。


うちの息子は、ジャガー横田の息子ということが誇りでもあり、嫌でもあると言っています。常に付いて回りますからね。今、息子は16歳なんですが、一人っ子で苦労知らず。何不自由なく、わがままに育ててしまいました。なので、現在は長野の学校で寮生活をさせて、他人様に育ててもらっています。


寮生活では誰にも守ってもらえないわけですから、自分でなんとかしなきゃいけない。もう2年たちますが、考え方も変わり、たくましくなってきているので成長が楽しみです。ハワイで出産したので一応アメリカ国籍も持っているので、アメリカの大学に留学し、将来はアメリカで生活するかもしれません。それは彼の選択に任せます。


――16歳では、まだまだこれからですね。


横田 息子もそうですが、今の若い子は物事の捉え方が全然違う。私が考えつかない面白い発想をするので、本当に感心します。でも私がプロレス界に入ったのは、今の息子より若い15歳のときでした。何も知らずに入団したのですが、そのとき母には「戻ってくるところはないよ」と言われて、若いときはつらかったけど辞めようとは思わなかった。だから、息子にも自分の好きな道へ進んでほしいです。


――プロレスの魅力は?


横田 先ほども言った受けの美学ですね。選手の表情も見てほしい。勝ち負けだけではない技の美しさが、女子プロレスのエンターテインメントとしての醍醐味だと思います。観客の方々に元気と頑張る勇気を与えられたらうれしいです。


――今後の予定などありましたらお知らせください。


横田 4月14日に「CRYSIS(クライシス)」興行を開催します。お時間のある方はぜひ見に来てください。また、試合を組むのは私自身ですが、7月18日には息子のプロデュースで後楽園ホール興行を開催予定です。男女MIX、ハードコア、バトルロイヤルなど盛りだくさんの内容なので、こちらもぜひ来ていただけるとうれしいです。


現役最古参の女子プロレスラーとして歩みを止めるどころか、さらなる躍進を続けるジャガー横田。これからもジャガーの動向から目が離せない。


(取材・構成/飯塚則子 撮影/原啓之)
ジャガー横田 1961年7月25日生まれ。東京都出身。77年に全日本女子プロレス入団。WWWA世界王座やUWA世界女子王座をはじめ数々のタイトルを獲得し、今なお戦い続ける現役最古参の女子プロレスラー。2004年に医学博士の木下博勝氏と結婚し、タレントとしても人気を博す。得意技はジャガー式ジャーマン・スープレックス、バックドロップ・ホールド、あびせ蹴り、ミサイルキック、卍固め、シャトルループ・バスター。

◉4月14日(金)にジャガー横田率いるユニット「CRYSIS(クライシス)」による興行が東京・新木場1st RINGで開催されます。開場17:30 試合開始18:30