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蝶野正洋『黒の履歴書』~令和の子供たちの将来について

蝶野正洋
蝶野正洋 (C)週刊実話Web

第一生命保険が子供たちに対して行った『大人になったらなりたいもの』というアンケート調査で、小・中・高校生の男子の1位は「会社員」だったそうだ。

このような調査はさまざまな企業が行っていて、中には「サッカー選手」とか「ユーチューバー」が1位になっているものもあるけど、最近の傾向として「公務員」や「教員」などの比較的堅実な職業が上位を占めているという。将来に対して安定思考の子供が増えているのかもしれない。


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俺が子供の頃にもサラリーマンへの憧れはあったよ。植木等さんが歌っていた「サラリーマンは、気楽な稼業ときたもんだ」(『ドント節』)の歌詞が刷り込まれていたからね(笑)。もちろんそれだけじゃなく勉強してよい大学に行って、大きい会社に入って猛烈に働くという生き方は、憧れのモデルケースだった。

ただ、バブルを経たあたりから好きなことを仕事にするとか、一発当てて儲けるみたいなほうが持て囃されるようになっていたと思う。でも、簡単に稼げるような仕事は、落ちるときもあっという間というのが、子供たちにもバレてきたんじゃないかな。

それに日本はもちろん、世界的に貧富の差が大きくなっているというのも背景にあると思う。

いま世界経済は、超富裕層の1%の人が総資産の3分の2を握っているといわれている。しかも、その差は固定されてしまっていて、ゼロから成り上がるのは本当に難しくなっている。

将来を見据え学歴重視の子供たち…

一方で、昨年の日本の子供の自殺数が過去最悪となったというデータもある。

厚労省のまとめによると、自殺の理由は「学業の不振」が最も多く、続いて「進路に関する悩み」「入試に関する悩み」となっている。

勉強に行き詰まって死を選んでしまう子供が増えているということだよ。

人生の選択肢や進路がガチガチになっていて、落ちこぼれを救い上げるようなルートがなくなってきているのかもしれない。

昔は、職人さんやトラックドライバーのような、学歴がなくても腕一本で稼げる仕事はたくさんあった。飲食関係もそうだし、芸能やエンターテインメントの世界、もちろんプロレスやボクシングといった格闘技界も落ちこぼれたちの受け皿になっていた。だけど、どこも競争が激しくて成功できるのは一握り。それを知っている子供たちは、勉強して会社員になるしか希望がないと思ってしまうのかもしれない。でも大事なのはその先なんだよ。

俺の仲間でも、最初はトラックの運転手をやってカネを作って、それから自分のやりたい仕事で起業して社長をやってるという人がいる。まずはキツい仕事で世の中を学びながら、経費計算して利益を考えたりして、実地で経営を学んでいく。それで成功したというケースはたくさんある。

単純に学歴がなくても頑張って成功して、楽しそうに生きている大人が、まわりにいなくなっているのかもしれない。どんなに景気が悪くても、子供たちに希望を与えられるような社会であってほしいね。

蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。

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