ロシアの「ウクライナ侵攻」、北朝鮮が発射し続ける弾道ミサイル、間近とささやかれる中国の「台湾侵攻」など、今や日本を取り巻く周辺事情は日々緊迫の度合いを高めている。
そんな日本を守るため、岸田政権は昨年末に今後5年間の防衛費を従来の1.5倍、総額43兆円にする異次元の予算を閣議決定。肝心の財源は今もって不透明なものの、これが原因で防衛産業が脚光を浴び、今後どんな兵器が調達されるかが大注目されているのだ。
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防衛省関係者が政府案の骨子をこう明かす。
「防衛省内でささやかれている大まかな配分は次の通り。まず、新型長距離ミサイル『スタンド・オフ防衛能力(=敵の射程圏外から攻撃できる能力)』分野に約5兆円、戦闘機や軍艦の維持整備に約9兆円、自衛隊施設に約4兆円、弾薬や誘導弾に約2兆円、無人機約1兆円、宇宙分野約1兆円、サイバー分野約1兆円。その他は新型兵器などの開発に充てられます」
中でも防衛省が具体化を急いでいるのが反撃能力(敵基地攻撃能力)の確保で、核となる「スタンド・オフ・ミサイル」の配備だといわれている。
「理由はこれまで我が国は敵が発射した大陸間弾道ミサイルを、海上のイージス艦とPAC3の二段構えで迎撃する方針を順守してきた。ところが、昨年2月に始まったウクライナ侵攻では、開戦初日にロシアは3500発以上のミサイルを撃ち込み、74カ所もの施設を破壊した。この攻撃は、従来の自衛隊の防衛システムでは防ぎようがなく、どう立ち向かうかが突き付けられたのです」(前同)
共同開発“戦闘機”の能力のすさまじさ
このため、政府は『三菱重工』が2012年から陸自に調達している国産ミサイル『12式地対艦誘導弾』の改良を指示。数百キロの同ミサイルの射程距離を1000キロ以上に延ばし、九州や沖縄から中国本土が狙える「スタンド・オフ・ミサイル」として、数百発を配備する方針を示しているのだ。
もっとも、この「スタンド・オフ・ミサイル」の運用は2026年度からとなる見通し。それまでの防衛策にトマホークミサイルの導入が決まり、アメリカから約400発を購入する予定だが、これには賛否両論が渦巻いているという。
「トマホークといえば1990年にイラクがクウェートに侵攻して勃発した湾岸戦争で、多国籍軍が対イラク戦で使用したミサイル。そのため『そんな古い兵器を購入しても、中国、ロシアの新型迎撃システムにかなうはずがない』との声もあるが、アメリカはその後も改良を重ねているのです」(自衛隊関係者)
日本が購入予定の『ブロックV』と呼ばれる新型トマホークミサイルは、射程距離約1600キロで地下目標も破壊可能。価格は1発3億円に上るという。
また、「スタンド・オフ・ミサイル」とともに配備が注目されているのが、次期戦闘機だ。昨年暮れに日本と英国、イタリアの3国で共同開発することが公表されたが、構想ではすさまじい能力を持つとみられているのだ。航空自衛隊関係者が言う。
「次期戦闘機はレーダーに探知されにくい高度なステルス性を持ち、超高性能のAIを搭載。例えば、緊急時にパイロットの指示がなくても、AIが操縦や超音速ミサイルを発射することも可能で、2035年の配備を目指しているのです」
日本がアメリカ以外と防衛装備品を共同開発するのは初めてのことだが、これに踏み切ったのは、「通常は数兆円かかる」(同)といわれる新型戦闘機の開発費を分担して抑えるため。機体の開発には日本の『三菱重工業』やイギリスの『BAEシステムズ』、イタリアの『レオナルド社』などが参加する見通しで、エンジンは日本の『IHI』などが開発する計画なのだ。
自爆型ドローンの導入
加えて、防衛省はこの異次元の防衛予算で最新兵器の開発も推し進めようとしているという。
「その最たるものが、防衛省が試作した重さ8トンの重厚ボディーと全長6メートルの砲身を携えた『レールガン(電磁砲)』。電磁力で秒速2000メートル(マッハ約5.8)の砲弾を発射する最新兵器なのです。今やロシアがウクライナで使用した極超音速ミサイルはマッハ5以上とされ、日本の防衛ミサイルでは対応が難しい。だがこの兵器なら迎撃可能なため、〝ミサイル防衛の切り札〟と目されているのです」(前出・防衛省関係者)
ちなみに、発射には膨大な電力が必要で「実用化は難しい」との声も多いが、配備できれば戦闘の流れを変える兵器となる可能性も高いことから、防衛省は2022年度予算に65億円を計上。すでに『日本製鋼所』などと開発を進めているのだ。
「また、ウクライナ軍が使用して一躍注目を集めることとなったドローン兵器も配備予定。すでにイスラエル製の自爆型ドローン『ハロップ』の導入を決め、5年で約1兆円を割く方針だが、その一方で防衛省はドローンを無力化する『高出力マイクロ波照射装置』の開発をも進めている。すでに22年度に72億円が投じられているのです」(前同)
巷では莫大な防衛費の財源が取り沙汰されているが、その裏ではすでに〝防衛費バブル〟が起き始めているのである。
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